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三人のイサベル 2
一行の姿が見えなくなるまで見送っていた祖母はうなだれたまま王宮の中へと引き返してゆく。お付の者たちも悄然とその後に従う。
中は薄暗くひんやりとした空気だ。がらんとした空間の果てからヒステリックな女性の声が響いてくる。
略
可哀そうに、実家に送り返されたブランカは、なんと父フアン2世によってモンカダ塔に監禁されたままだというじゃありませんか。ああ、私、その有様を思い描いただけで胸が苦しく…、ああ、苦しい!」
そこで娘イサベラは過呼吸気味になり、宙をつかむようなしぐさをしながらあえぐ。
「おお、娘よ。もう考えるのはよしましょう、ね」母イサベルは彼女の背中を優しくさすりながらなだめる。「あなたは疲れているのよ。もう寝室へ行って休みましょう」
「そうよ、夫が亡くなったのはあいつのせいだったのよ!」娘はまた気を取り直したように独白を再開する。「それが証拠に、あの結婚解消騒動のすぐ後に夫フアン二世は亡くなったじゃありませんか。たとえあのバカ息子が後何人の妃や妾と関わろうとしても、決して世継ぎが生まれることはない。それはフアン二世にもよくわかっていた。だからこそ、私はアルフォンソを跡継ぎに定めるよう何度も進言したのに、あの寵臣アルバロ・デ・ルナが邪魔をしおってからに!」
「これ、あなた…」イサベル・デ・バルセロスは不安げに娘の目を見つめ、その両肩に手をかけてゆする。
「どうしたの? また発作が…?」
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