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アートを「買う」ための本は、アートを観るのにも役に立つ
アートに関する、おすすめの本を紹介します。
今回紹介するのはこちらです!
アートコレクター入門: 銀座老舗画廊の主人と学ぶ特別教室
画廊の代表者によるアートを購入・収集するための入門書です。
「入門」とはいえ、美術品をコレクションするのってハードルが高いですよね。
それでもこの本を読んで良かったのは、アートを「買う」という視点が、アートを「観る」ときにも役立つことが分かったからです。
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一緒に考えるのが楽しい
いきなりコレクションの話をされてもピンとこない人が多いと思います。(もちろん私もそうです。)
そういう方に向けて、この本はまずアートの大枠を解説してくれます。
とはいっても画家の名前とか〇〇派とかを羅列していくのではありません。
ここで書かれているのは
そもそも美術というものをどう考えるべきか
どうして美術を学ぶべきなのか
といった、一歩踏み込んだ話です。
「そもそもアートとは何か」という問いから始まり「アート=美?、いやそうとも限らないかも」などなどと、答えのない問いを登場人物たちと一緒に考えながら読み進めていきます。
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話の内容は多岐にわたり
・大きな美術史の流れ
・現状のアートの市場規模の話
・世界の中での日本のアートの立ち位置
・日本美術と西洋美術の違い
・日本の美意識について
などなど幅広く、これを読めば何となくアートの現状を掴めるのがありがたい!
(個人的には、「日本美術では書が重要」という観点が面白かったです。)
「教養」や「知識」にとどまらない、アートの奥深さを再確認できる本です。
「コレクション」という視点
アートの本は巷にあふれていますが、「観る」ための本はあっても、「買う」ための本はあまりありませんよね。
「アートを買う」なんて遠い世界に思えてしまいますが、この本は、私のような素人でもちゃんと興味が持てるように書かれています。
そもそもどこでどうやって買うのかという初歩的なことから
アートに掛かる税金、値上がりしやすいアートの特徴まで、興味深い話ばかり!
画廊の主人ならではの貴重な話が満載です!
私自身は「美術≒美術館で見るもの」という固定観念が何となくありましたが、美術館にあるものは全体のごく一部だそう。
もともと日本では、絵のついた屏風を間仕切りにしたり、巻物を手元でめくって楽しんだり、庶民が浮世絵を手軽に買ったりして
(今でいう)美術品を身近に置いて楽しんでいたんですよね。
それを考えると、美術館でガラス越しに観るのは、ちょっと違うのかもしれません。(もちろんそれが悪いという話ではありませんが。)
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作者は「美術館を見ただけでは美術を分かったことにはならない」「アートを買うことが文化を豊かにする」と指摘していて目からウロコでした。
もちろん美術館は楽しいですし大好きです!
ですが、もっと違うアートの楽しみ方があるかもしれないことに気付かされました。
読みやすいのがありがたい
こうして見ていくと、何だか堅苦しそうな本だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
主人公はアート初心者として設定されており、対話形式で進んでいきます。
主人公が画廊主催のコレクション講座に参加し、講師や参加者と会話をしながらアートの理解を深めていくという流れです。
その過程で「そんなこと自分には関係ないのでは」「ちょっとややこしいな」など、主人公のモノグロームが挟まれていて、共感しながら読むことができます。
私のような素人にも寄り添ってくれているのがありがたいです。
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新しい視点を得ること
正直、私はまだコレクションする段階には踏み出せていません。
それでもアートに関する様々な新しい視点を得たことで、鑑賞の仕方も変わった気がしました。
今度美術館に行ったときは、もしこれが手に入るとしたらどう飾るか、どうやって使おうかという視点で見てみるのも楽しそうです。
(来月開催されるアートフェア東京にも足を運んでみたくなりました…!)
美術というと「教養」が強調されがちですが、もっと気楽に楽しみましょう!
今流行りのデジタルアート。ですが画家たちは、ハイテクな技術がなくても、対象の動きを見事に表現していました。