旅へ(VOYAGE)
透明な一枚布のキャンバスへ
この1年半、オーダー・アート制作の
没頭と共に、ずっと試作し続けていた
ファブリック・アートで表現する透明な世界
昨年の秋頃より制作場と都心を
往来しながら試行錯誤していました
2015年以来、当作のストールは
私が監修し(時折は原画を描き起こし)
日本の伝統工芸技法と文様を組み合わせ
職人技で染め上げる作風が主流でした
2020年ドバイ国際博覧会での
国家元首への日本政府が寄贈する
ストールを考える時に
贈答国への文化や歴史
宗教的な配慮を鑑みました
唯一無二を求め、ドバイの国鳥
「 隼 」と日本の小惑星探査機
「 はやぶさ 」を融合させた作品制作
ドローイングで筆を取らせていただいた事が
転機に繋がり私自身も
10代の頃ぶり、アート制作を再開します
これまでの工芸の仕事とアート新境地の
融点を生み出せないか、思い巡らせる中
ブランドを設立した時の初心に立ち返り
着物の染色技巧の源流でインドの民族衣裳
サンスクリット語で「 SAREE 」
サリーの装いを再び、向き合います
~ 身に着ける人の個性を引き出したり
時に隠したりする力を持っている美の布 ~
一枚布の可能性をみつめ直しです
商品価値を考える
自作で描くアート作品であると同時に
ストール、すなわち衣類品である以上
品質を維持しなければなりません
色落ちがしないか(堅牢度検査)を
優先してしまうと
どうしても作品が凡庸な仕上がりに
収まってしまいます
独創性や、見栄えを優先すると
耐久性が弱く衣類品としての機能が
果たせなくなる
今まで10年間、様々な日本の
伝統工芸と触れながら学んできた
「 レシピ 」を模するに留まらず
更に改善したい
美しい職人仕事は
細部まで美が行き届いていました
ストールの日本最高峰を
生み出し続けてきた
自負があるので「衣類」の視点での
妥協は許されませんでした
天然画材の風合いを生かしつつ
ファッションとしての汎用性や
使い心地を兼ね備えた
アート・ストールが、ようやく完成です
一般的に販売されているストールの
長さは170CM~180CMと言われますが
220CMで着物のようにも
ドレスのようにも遊べる作品
最後の決め手は福島県・川俣の地場産業
絹織物の中でも水羽衣(羽二重)との出会い
丁寧な制作工程が織元が言われた通り
色彩や風合いを豊かにしてくれました
羽衣と旅する
作品名「 窓 」を制作
金の窓枠から眺める世界の景色
青海波文様や鳥の羽根、朝日
「 青海波 」と聞くと縁起を担ぐ
和柄の波柄文様を思い浮かべますが
その昔、古代ペルシア
(現在の新疆ウイグル自治区カシュガル)
このあたりの地域で海の話を聞いた
人達が想像し、文様で描いたことが
始まりと言い伝えられています
南下してインドに伝来、
後に飛鳥から平安時代、
日本にも知れ渡り現代の和柄に発展したとか
創造の世界の先に衣類品としても納得いく
アート・ストールが仕上がりました
ブランドのシグニチャー・モチーフが
透明な絹織物の世界の上に
全てドローイングで施されています
今春は「 VOYAGE(旅)」をテーマに
私も国内外、旅を愛しているので
実際に旅先で活用しやすい作風を意図し
透明な一枚布のキャンバスへ施しました
全て1点作品
どなたの人生の旅を彩るか、楽しみです