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HIPHOPの魅力 ③アンダーグラウンドヒップホップとは
HIPHOPが生まれた環境や成功後のスタイルまでざっと説明しましたが、
最後に僕がHIPHOPが好きな一番の理由でもある
Underground HIPHOP
とその歴史や精神性について書いていきます。
これを知ることにより、フリースタイルでもよくディスの対象となる
お前のスタイルはHIPHOPじゃない
客に媚び売るセルアウトが!
俺は正真正銘リアルなMC お前はただのWACKなラッパー
上記のようなディスの意味がより深く理解できるようになるのでぜひ読んでみてください。
とは言いつも、正直に言ってラッパーやリスナーによっても「HIPHOP」や「アングラ」の定義はまちまちであり好みが別れるとこでもあります。
あくまで僕の一解釈と嗜好としてお読みください。
(僕自身この定義に関しての論争は望んでません。それぞれのHIPHOPを磨いていきましょう。笑)
そもそもなぜこんなにもアンダーグラウンドという言葉がHIPHOPにはつきものなのか?
それはHIPHOPを生み出したアフリカンアメリカンたちの暗い歴史があります。
また #BlackLivesMatter のデモの理由の根っこの部分でもあります。
アメリカには黒人達を奴隷として働かていたという暗い過去があります。
そして当然その辛い生活から逃げようとした黒人達も多くいました。
奴隷主は黒人が逃亡し見つけられなかった際、
「彼らは地下鉄道を使い逃げたに違いない」
と言っていたそうです。
この逃亡に使った地下鉄道を英語では「Underground railroad」と言います。
その為、不平等な政府や制度から自由(freedom)を勝ち取るための逃走(flight)および闘争(fight)の一連のアクションをアンダーグラウンドと呼称するようになりました。
なので奴隷にされ貧しい生活をしていた民族が創造性を駆使し、自分たちの言葉(スラング)やテクニックを武器に文化を生み出し、その彼らの日常を表現することでそこから抜け出すスタイルこそがアンダーグラウンドなのです。
日本ではヒップホップのライブがよく地下で行われることからもアンダーグラウンドと言われますが、こんな歴史があったんですね。
有名な2pacも「Underground Railroad」というアルバムを出しています。
前回の記事で書きましたが「All Eyes On Me」という2pacの映画もおすすめで、Amazon Primeで無料で見れるのでよかったらみてみてください^^
ここからは実際のアンダーグラウンドHIPHOPの実際の音楽活動をイヴォンヌ・バイノーの「ラップ・ヒップホップ文化百科事典」のアンダーグラウンドの定義を引用させて頂き、そこから掘り下げていこうと思います。
アンダーグラウンドとは、
”「主要なレコード会社と関わりを持たないラップ音楽を表す用語。または、アメリカ全土で展開しているが、通常ラジオやミュージックビデオ番組といった商業的な娯楽販路で販売促進されていない。より多様でしばしば社会意識の高いラップ音楽やヒップホップ文化を示す用語」”です。
from イヴォンヌ・バイノー / ラップ・ヒップホップ文化百科事典
まず下記の前半の部分ですが、
”主要なレコード会社と関わりを持たないラップ音楽を表す用語。または、アメリカ全土で展開しているが、通常ラジオやミュージックビデオ番組といった商業的な娯楽販路で販売促進されていない。”
簡単にいうと大手レーベルに属すか、自主レーベル、もしくは規模の小さいローカルレーベルに属すかという違いです。
今でこそyoutubeがあれば曲やMVが発信でき、楽曲が良けれなSNS上でシェアされ一気に広がるなんてこともありますが、youtubeが出てくるまで殆どの人はTVかラジオにより音楽の情報を得ていました。
なので、
「俺音楽で食って行きたいんだ!」
といって田舎からギター一本で上京するアーティスト志望と同様に、音楽で有名になりたければ大手レーベルに入ることが近道且つ王道でした。
大雑把に説明をすれば、もし大手レーベルに属せばアーティストは作詞作曲以外のことはほとんど大手レーベルに任せることができます。(もちろんアーティストとの相談の上でですが)
すなわち、
レコーディング
ミックス/マスタリング
CDのプレス
CD/レコードの流通/販売
CD/レコードの発売やライブの告知
ライブの日程、場所、移動の調整
等々をサポートしてもらえます。
これをやってもらうからといって絶対に売れるわけではありませんが、このサポートなしで音楽的に成功することは非常に困難であり、たくさんのお金がかかります。
しかし上記のようなサポートを受けず、作詞・作曲に加え音楽活動の諸々を行うことこそが一つ目のアンダーグラウンドの定義なのです。
そして自分たちでそういった活動をする手法を
日曜大工手法(Do-It-Yourself = DIY)
と言います。
次にアンダーグラウンドの2つ目の定義ですが、大手と自主レーベルどちらでやっていくかという外側の部分から、その上で何を表現するかという内側の部分に焦点が当てられていきます。
”より多様でしばしば社会意識の高いラップ音楽やヒップホップ文化を示す用語”
大手レーベルに入ることで当然制限されることは多くあります。
それは例えば
・TVやラジオに流れるからこそ、暴力的な表現やその時代の黒人生活に深く根付いていた人種差別、貧困、ドラッグなどのリアルなトピックをリリックとして扱えない
・どのくらいの期間でアルバムを出さないといけないというような時間的制約をレーベルから受ける
・自分の意志や表現に則さないドラマ等のタイアップ曲を無理やりにでも書かないといけない
・サポート分として売り上げの大きな手数料を持っていかれる
などです。
これが時にレコ社の飼い犬なんてディスられることもあります。
しかし、組織に属しサポートしてもらい定期的にお金をもらっている以上逃れられない現実でもあります。
また表現したい内容がTVやラジオで表現可能な枠にあるアーティストに関してはあまりしがらみにならない場合もあります。
アンダーグラウンド/DIY制作の魅力はまさしく上記4つとは真逆のスタイルです。
彼らの日常のリアル(現実、真実)を自分たちのペースで信念を曲げずに作り、その対価をしっかりと獲得(=make money)することにあります。
またテレビやラジオなどのメインメディアに中々露出できないからこそ、小さなライブを繰り返し、作品や言葉の力を信じて口伝て(word of mouth)で広げていくスタイルこそがアンダーグラウンドのかっこいい良さであり美学なのです。
しかし当然これを行い成功するには
・押韻(ライミング)
・フローとリズム
・詩的表現(リリシズム)
・コールアンドレスポンス(リスナーとやりとりするマイクパフォーマンス)
等のスキルが必要になります。
この4つの技術を身につけ言葉を巧みに扱うラッパーこそがエンターテイナーの枠を越え、
MC(=アーティスト、芸術家)
となることができるのです。
ちなみにこのMCとは、
Master of Ceremony (司会)
Move the crowd (群衆を動かす)
Mic Control
の頭文字の略称と使われています。
長くなってしまいましたがこの違いがディスの対象となってくるのです。
なので、「お前はリアルなMCじゃない」というディスには
「お前は路上の真実を歌わずに享楽主義の無知なリスナーに向け売れ線のリリックばかり書いてるHiphopの精神を忘れてしまったただのエンターテイナーだ!」
という意味が含まれているわけです。
ここまで言っちゃうと過大解釈となってしまうかも知れませんが,,,笑
いかがだったでしょうか。
歴史的背景や彼らの類稀なる努力の上に発展してきたHIPHOP文化の魅力が少しでもみなさんに伝わってくれていれば嬉しいです。
最後に今日の内容を総括できるようなHIPHOPの曲を1曲ご紹介して終わりにします。
Changes / 2pac
HIPHOPのフリースタイルや楽曲の魅力、各アーティストの紹介など今後もたくさん書いていきますので引き続きよろしくお願いします。
ではまた、お時間がある時にでもよろしくお願いします^^