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【頼れる!おすすめ相談窓口のご紹介】2.ワンストップ総合相談窓口―芸術文化活動を行う上での経営課題、どうやって解決する? 中小企業診断士などの専門家に無料で相談できる窓口

「活動資金にはいつも困っている」、「最近SNSの反応がいいけど、活動にどう活かせるだろう」、「今の劇団を法人として継続するメリットってなんだろう」――東京芸術文化相談サポートセンター「アートノト」に、アーティストや芸術文化の担い手からこういった相談が寄せられることがあります。
もちろん、芸術文化の領域のことはなんでもアートノトへご相談いただけますが、5年後や10年後も今の活動を継続していきたいと考えるなら、この“仕事”や“ビジネス”をどのように持続可能にできるか、という視点から、経営の専門家にも相談してみるのはいかがでしょうか。
シリーズ第二回では、中小企業診断士などの資格を持つ経営の専門家が相談員を務めるワンストップ総合相談窓口(運営:公益財団法人東京都中小企業振興公社)をご紹介します。



ワンストップ総合相談窓口とは?

ワンストップ総合相談窓口を運営するのは、東京都と連携し中小企業に向けて幅広いサービスを展開する公益財団法人東京都中小企業振興公社。経営相談と法律相談を扱っていて、前者は中小企業診断士・ITコーディネータ・社会保険労務士・税理士・司法書士等が、後者は弁護士が無料で相談に乗ってくれます。経営相談では、資金繰りや事業計画、マーケティングや販路開拓、補助金・助成金の申請など、幅広い内容に対応しています(※本記事では主に経営相談について取り上げます)。

対象となるのは、「東京都内に主たる事業所を置く中小企業者や個人事業主、創業予定者」。活動場所が東京でも、主な拠点が都内にない場合は対象外となるので注意が必要です。ご自身の団体が「中小企業」に含まれるか確認したい場合は、ワンストップ総合相談窓口のホームページに記載されている「相談対象となる中小企業者等」の表をご参照ください。

相談対応の流れ

経営相談の方法は、「メール」「電話」「オンライン」「来所」から選べます。オンラインと来所は予約制(WEBから24時間予約可能)。相談対応時間は平日の9:00〜11:30/13:00〜16:30で、火曜のみ17:30〜19:00の夜間対応も行なっています。

相談員の資格やプロフィールとスケジュールはホームページに掲載されていて、指名も可。相談時間は原則として1回45分間です。1回で解決しない場合は再度予約して相談することができ、相談は何度でも無料です(法律相談は週1回まで)。

東京都中小企業振興公社では創業支援や海外展開支援、知的財産相談など100を超える支援メニューを用意していて、相談内容によってはより適した専門窓口等を紹介してもらえることもあります。

▶︎公社の支援事業をまとめた冊子「中小企業支援ガイド」はホームページからダウンロードできます。

芸術文化関連の相談事例と対応

具体的にはどんな相談に対応してもらえるのでしょうか。アートノトに寄せられた芸術文化関連の相談事例を参考に、ワンストップ総合相談窓口を担当している総合支援部総合支援課課長の大澤崇さん、統括課長代理の蒲池正経さん、主任の七分伽奈子さんに教えていただきました。


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事例① 作品販売(活動分野:美術)

Instagramで作品を販売しているが、今後どのように活動を展開するか、ビジネスについて相談したい。

総合支援課 “ワンストップ総合相談窓口が行うのは、あくまで「相談者の意思決定のための助言」です。相談員が今後の展開を0から考えて提案することはできませんが、相談者に具体的な事業計画やアイデアがある場合はそれに対する助言ができます。また、売上を伸ばすためのSNSマーケティング等のアドバイスも可能です。”

事例② 活動展開(活動分野:美術)

伝統工芸の技術に現代的なデザインを加えた制作活動をしている。活動を広げるための方法を教えてほしい。

総合支援課 “事例①と同じで、具体的な方向性が定まっているなら助言できます。SNSを使ったPRのアドバイスや、展示会や助成金などの情報提供も可能です。公社では「東京都伝統工芸品産業振興事業」「東京手仕事プロジェクト」など伝統工芸に特化した支援事業も行っており、その対象となる可能性もありますね。また、海外展開を考えている場合は、専門の相談窓口へおつなぎします。”

事例③ 広報(活動分野:美術)

展覧会を効果的にPRするために広報活動を始める時期や方法について相談したい。

総合支援課 “対応可能です。相談員が展覧会の内容やスケジュールを聞き取り、それに合わせて広報活動をアドバイスさせていただきます。”

事例④ 販路拡大(活動分野:メディア芸術)

アバターモデル(Vチューバ―)の作成やアートディレクション、企業の企画立案コンサルをしている。業務提携や業務委託の仕事をくれる企業の探し方を知りたい。

総合支援課 “企業の紹介は行なっておりませんが、企業の探し方に関する一般的なアドバイスは可能です。また、公社の販路・海外展開支援課や取引振興課での支援メニューをご利用いただける可能性があります。官民の調達情報を集約した受発注取引マッチングサイト「ビジネスチャンス・ナビ」などもお役に立てるかもしれません。”

事例⑤ 税務(活動分野:音楽)

法人税の申告に際して、支出の仕分けや税金がどれくらいになるのかを相談したい。また、このまま法人を継続するメリットはあるのかも聞きたい。

総合支援課 “対応可能です。税理士や会計士が状況を伺い、回答いたします。”

事例⑥ 新規事業開始(活動分野:芸術文化全般)

アーティスト・イン・レジデンス事業を始めたいが、どうすればよいかアドバイスがほしい。 

総合支援課 “事例①と同じで、具体的な計画やアイデアがある場合はそれに対する助言ができます。資金繰りについて相談したければ中小企業診断士、活動を行う際の組織形態について相談したければ司法書士等を相談員として推薦します。”

事例⑦ 企画書作成(活動分野:芸術文化全般)

作品の企画書やフェスティバルに出展するための推薦状の書き方に関するアドバイスがほしい。

総合支援課 “助成金・補助金の申請書を作成する上でのポイントなどについては助言できますが、作品の企画書やフェスティバルの推薦状となると、経営相談の枠組みからは外れてくるかと思います。”

事例⑧ 組織の設立(活動分野:芸術文化全般)

芸術祭等を開催する実行委員会の設立の仕方を知りたい。

総合支援課 “こちらも、創業ということであれば創業支援課でさまざまな支援を行なっていますが、芸術祭実行委員会の設立となると経営相談の枠組みからは外れてしまうかと思います。”

事例⑨ 会計資料作成(活動分野:芸術文化全般)

助成金申請のための収支予算書や会計資料の作成方法を相談したい。

総合支援課 “こうしたご相談は非常によく受けます。税理士や中小企業診断士等にて対応可能です。”

事例⑩ 活動資金(活動分野:芸術文化全般)

商店街で企画するイベントのための助成金の探し方を教えてほしい。

総合支援課 “助成金などの公的支援をまとめたデータベースがあるので、そちらをもとに情報提供できると思います。公社では商店街を対象とした支援事業も行っているので、該当するようでしたら相談員からご案内いたします。”


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事例は以上です。相談を充実したものにするためには、ご自身のアイデアやプラン、取組を事前に具体的にしておくことが、大切なことがわかりました。最後に、アーティストや芸術文化の担い手に向けて、総合支援課のみなさんからメッセージをいただきました。

総合支援課 “相談員は相談者の方の活動をしっかり聞き取り、わからない点があれば確認しながら回答しますので、芸術文化関連の方も安心してお問い合わせください。
公社では多様な支援メニューを用意して、東京都の中小企業者や個人事業主、創業予定者をサポートしています。「この相談も対象なの?」と迷うような内容でも、お気軽にご相談いただければと思います。みなさんの活動を広げるために、ぜひワンストップ総合相談窓口をご活用いただけると幸いです。”

アーティストや芸術文化の担い手の方々も、ご自身の活動がビジネスであるという視点を持てば、ワンストップ総合相談窓口を利用できるシーンは意外と多いのではないでしょうか。もし、「経営の専門家にどのように相談したらいいかわからない」と不安に思われる場合は、まずはアートノトにご連絡ください。悩みを整理し、相談内容を明確にするお手伝いをさせていただきます。

(※ワンストップ総合相談窓口への取材は2024年11月14日に行いました)

(取材・執筆:飛田恵美子)


ワンストップ総合相談窓口
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〇WEB予約サイト:https://onestop-sougousoudan.revn.jp/?_fsi=LdN7wPtw
〇電話:03-3251-7881(受付時間9:00- 11:30/13:00-16:30 土日祝日を除く)

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