
連載小説 「幸せになりたいの」第6話
前回までのあらすじ。
スピリチュアル業界のカリスマである「ピーラブ」ちゃんの、押し寄せの法則で恋もお金も思いのままになるという、ピーラブ・メソッドのセミナーを受講したマドカ。88万円の価値を手にすべく、気合いを入れている。そして、いよいよセミナーが始まる。憧れのピーラブちゃんを至近距離で目にするマドカであった…
#6 セミナー当日 その2
セミナー開始時間になり、司会者が挨拶する。
「このたびは、ピーラブメセッド・セミナーへお越しくださいまして、誠にありがとうございます」
それから、ピーラブちゃんの経歴を語り、入り口で物販している書籍やグッズのことを説明して、
「それでは、大きな拍手でお迎えください!」
といい、ついにピーラブちゃんが目の前に登場した。
マドカは3列目。最前列は謎の紹介枠により座れなかったとはいえ、かなり至近距離でピーラブちゃんを見ることができた。今日のためにコンタクトレンズも“度”の強いものして来たのだ。
正直、驚いた。そして、心の中の第一声はこうだった。
(盛って…、いたんですね…)
ピーラブちゃんのインスタやブログでいつも見る若々しい姿よりも、生の至近距離で見る実物は、思ったよりも【年相応】に見えた。
小じわやシミなどがたくさんあったし、インスタで見るほど色白ではなかった。もちろん化粧もしているが、近くで見ればその辺はわかる。
今の時代、女性は多少、写真を加工して「盛る」のは当たり前だが、あれだけ『自分に嘘はついちゃダメだよ!』と言うピーラブちゃん。このレベルのビューティー加工の『盛り』は、良いのだろうか…?。周りのみんなは、どう思っているんだろ?
マドカはそう思って、周りの反応を見回すが、みんなはピーラブちゃん登場と共に、目を輝かせ、中にはまるでアイドルタレントにでも会ったかのように黄色い声をあげて、ピーラブちゃんに釘付け。スマホを一斉に向けて、シャッター音がセミナールームに鳴り響いた。
しかし、確かにそんな細かいところを除けば、金髪と、派手な服装、細くしなやかなスタイルは健在。そして声や動きなども、若々しくエネルギッシュだ。
ピーラブちゃんの登場のおかげでさっきまでの緊張に包まれた雰囲気が一瞬で変わった。空気が変わるってこういう事だ。
(そうよ!写真をビューティー加工で盛るくらいなによ!私だってもっと盛ればいいのよ!)
マドカはそう思うと、むしろ彼女のその姿勢に心打たれた。
「みんな~、これから3ヶ月で、ラブ・ビューティフルな人生になるからねぇ!」
至近距離でのラブ・ビューティフルを受けて、セミナーがスタートした。
どんな話が飛び出るのかと思っていたが、初めは普段ブログで書いてること。書籍に書いてある事が中心だった。
(ん?この前の講演会でも同じこと言ってたな…)
と、マドカも時々ひねくれたツッコミを入れたくなるが、周りの熱心な受講者の空気に飲まれ、夢中でメモを取った。
ぴーらぶちゃんが言うセミナーの心得は、
『私の“波動”を感じることが大事だよ!波動は伝染するの!私の幸せオーラで、あなたも同じ幸せオーラになっちゃうのよ!』
とのことだったので、こうして目の前にいて、生の話を聞けるという事に価値がある!マドカはそう言い聞かせた。
午前の部が終わり、お昼休みになった。
「近くの人と仲良くなって、一緒にランチとかしてね~。同じ世界を生きる仲間と気持ちをシェアすることが大事だよ~」
と、ぴーらぶちゃんに言われたが、11時開始で、13時に休憩。一言も話していない隣近所の人に話しかける勇気はマドカになかったし、周りを見てても、みんな余所余所しく、とても友好的な雰囲気ではなかった。なのでマドカは1人で会場を出て昼食を取りに行った。と言っても、失業する上に、セミナーにお金を払ったので、あまり豪勢なランチはできないのだが…。
マドカの一番の目的は、結婚して、素敵な旦那さんと、素敵な人生を歩みたいこと。それこそ、私の運命のツインソウルに出会いたい。しかし、経済的にも自立はしたいと思っている。自分の使命を見つけ、使命に乗っ取った仕事もしたい。
だからお金との付き合い方も大事だ。ピーラブメソッドでは、お金は使えばやってくる、なので『節約は悪魔のささやき』とさえ言っている。
『お金は使えば入る。使えば入る。その循環よ!』
しかし今の所、マドカは悪魔のささやきに打ち勝てない…。
ここから先は
¥ 150
サポートという「応援」。共感したり、感動したり、気づきを得たりした気持ちを、ぜひ応援へ!このサポートで、ケンスケの新たな活動へと繋げてまいります。よろしくお願いします。