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“わたし”という神話 第6話「広がる恐れ」

第1話   天地創造
第2話   人間の誕生
第3話   闇の誕生

第4話   堕天使降臨
第5話   悪の誕生
第6話   広がる恐れ
第7話   光と闇
第8話   偽りの光
第9話   宗教の誕生
第10話  古代の叡智の破壊
第11話  神になる堕天使

  6 広がる恐れ


 地球での人々の心の様子を、“わたし”は観察していた。

 人々は“わたし”との繋がりを忘れてしまったようだが、“わたし”はわたしの子供たちがどんな行為をし、何を思おうとも、それでも“わたし”の子供のであり、わたし自身であることにはかわらなかった。

 地球に生まれた、“わたし”との強い絆を持つある者は、その様子を「放蕩息子」と例えを使って、人々に語っていた。

 そう、闇に心を操られても、彼らは“わたし”の大切な子供たち。いつも、どんな時でも、わたしは彼らを許し、受け入れている。


 堕天使によって世界に撒き散らかされた「恐怖」を抱えた人々は、自らが生きるために捕食し、自然環境から身を守るために生きる一方で、悪を恐れ、悪から逃れ、悪から身を守り、悪と戦わねばならなかった。

 地球の環境は確かに過酷だった。自然災害は常にあった。しかし、その中で自然と共存する叡智はあったが、恐れがその叡智を上回って行った。

 恐れから、人々は食糧を保存し、溜め込むことを考えた。効率の良い方法で、自衛することも考えた。段々と人々は密集するようになった。人々はどんどん群れて生活するようになった。

 対比はどんどん強くなった。

 善悪、美醜、優劣……。それはまるで闇が初めて神に対して感じた「差」から生じたものだったが、人間の中に、闇の持つその意識が入り込み、それはどんどん成長していったのだ。

 自らの善と、相手の善が対立することがある。話し合うことよりも、そこで正しさを照明する戦いに発展する。なぜなら自らは正しく、自分の正しさに従わない相手は悪だからだ。そのように、暴力がこの世界での影響力を増していく。

 当時の地球にも様々な種類の種族がいて、その中には性格の温厚な者や、知能の高い者、空を羽ばたける者、力の強い者、言語を使わずに意志を伝えられる者、異星の者と交流する者など、様々なタイプがいたのだが、結果として、力は弱く、体は小さく、知能もさほど高くない種族が、他の種族を次々と滅ぼしていった。

 どうしてそんなことが可能だったかというと、彼らは他の種族よりも恐れの感情が強い種族で、そのために大人数で暮らすことにより、争いごとが起きるとたくさんの人数を動員することができた。個々は弱くても、圧倒する人数で他の種族を制圧した。彼らは自分達より何らかの優位性を持つ他の種族を恐れたのだ。

 しかし、それでも恐れを抱えた人間たちに幸福は訪れない。なぜなら、堕天使の与えた分離は、常に心の中に存在しているからだ。

 食料や安全を確保しても、次は「喪失への恐れ」が生まれ、それが人間と人間の交流の中に疑いを生み、人々同士の繋がりはどんどん希薄になった。


 人間は本来常に「満たされていた」存在だった。すべては完璧に調和し、満ち足りていた。

 しかし、あらゆるところに対極する分離という相対性を作ったせいで、人々は常に自らの「不足感」を感じるようになってしまったのだ。この不足感はとても心地悪いものだった。

 だから人々の行動は常に不足感を補うことへ集中した。不足を満たした時だけ、かりそめの満足感を得ることができた。

 堕天使は人々が分離し、破滅させるように導いた。それは悪であり、闇の存在の唯一の存在意義であり、神との差を埋めようとするための行為だった。

 その手法は巧妙であった。それは堕天使が人間をよく知り抜いているからこそできることであった。人間が何に弱く、何を恐れ、何を欲しているのかを、長い時間をかけて学んだ。

 すべてを創造した“わたし”はそれらを喜びも悲しみもせず、ただ眺めている。人間はわたしを、神を、人間にとって「善」だと思い、「正義」だと思うが、神には善も悪もなかった。なぜなら悪ですら神の創造物なのだから。

 わたしは知っている。すべてが一つになると。そして今でも、あらゆるものはわたしの創造物であり、すべてが“わたし自身”だと。

 だから“わたし”は、待つことにした。

 神は、見守り、待つことにした。

 闇に落ちた意識から、再び神とのつながりを思い出し、やがて光と影は一つになり、再びここに戻る。そしてまたたった一つのすべてになる。そうなることを知っているので、神はただ宇宙をめぐらしながら、それらすべてを、人間を通して、我が子たちを通して体験し続けた。

つづく

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