
2024年 Homo Faber n.5 * ベニス散策
ベニスのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島で開催された、Homo Faber(ホモ・ファーベル)の様子を4回に渡りご案内しました。ご興味のある方は下段にリンクが貼ってありますので、ご覧ください。
2024年Homo Faber(ホモ・ファーベル)の感想
世界編1回。日本編1回。で終わる予定でしたが、案の定と言いますか、やはり伸びてしまいました。特に日本編では、初めての出会いが多すぎて、わたしのキャパが溢れかえってしまいました。
世界の作品に触れ、なかには、「うーん。そうなるか。」と、個人的に首をひねる作品もありましたが、それで良いんだと思います。十人十色。それぞれの感性があるから、個々の特徴が立つ作品が生まれるのでしょう。
自分のなかにある美しさの基準を超えてしまったものには恍惚を感じ、面白いもの、不思議なもの、一瞬怯むものなど、自分にとって新しいものには大きな刺激を受けました。写真や映像でも見ることはできますが、実際に目の当たりにする、空気感に触れるということが、どれだけ大きなことなのだろうと、改めて実感できる体験でした。
それにしても、人間の「手」ってすごいですね。どんな機械にも勝る最高の道具ではないでしょうか。
イタリアの展示会では、往々にして作品の説明が少ないです。
ですので、作品の隣に印字されているQRコードを写メして、家に帰ってから作品を調べます。すると、「あーそうだったのか。」とか「あれは、そういう意味があっての展示方法だったのか。」と、後日に分かることがあります。
そのとき知らなかった自分を後悔することもありますが、反面、先入観なく、各々が自由に感じ、自由に発想することができるので、親切丁寧に説明しない、この素気なさも気に入っています。
noteを通じての出会い
今回は展示会だけでなく、もうひとつ、良いことがありました。
noteで繋がっている敬子さんから、開催時にベニスを訪れる連絡を頂いたんです。オフ会のようで嬉しい。
日時を決めましょうと連絡し合っていましたが、会場内の、人生のなかで最も華やかな「祝い」のお部屋にて、偶然にもお会いできました。
お父様とご一緒で、わたしは主人と一緒でしたので4人で談義をし、後日に夕食を共にし、少しだけ中心街を外れた地区を散策してきました。とても楽しかったです。
noteという場から、実際にお会いできるご縁を頂いて感謝です。
敬子さんのnoteを掲載しておきます。展示会の様子も投稿されていて、彼女の感想は納得のいくものばかり。書く力、表現力も素晴らしいです。ぜひご覧ください。
ベニス散策



ジェットスキーに乗った警察官。さすがはベニス。

そのあとには、ルネッサンスの衣装を纏った豪華な船が続きます。

レガータストーリカというお祭りの日だったんです。

総督(ドージェ)、カテリーナ・コルナーロ、奥にいるのは総督夫人(ドガレッサ)だと思われます。
1489年にベニスのために王位を放棄したキプロス王の妃、カテリーナ・コルナーロを迎えたときの壮麗な儀式を再現しています。

路地が狭くてグーグル地図に連れてってもらえないベニス。道に迷っているときに、路地を曲がると突然に現れるモニュメント。

通り抜けができるらしく、住人と思しき人達が足早に行き過ぎていきます。この風景を普通の生活の一部としているのが羨ましい。

こういう何気ない鉄の柵に心奪われます。曲線と直線の優雅な装飾。アドリア海の女王と言われた、ベニス共和国の文化の高さを感じます。
海の上に立つベニスは、海水が街中に浸水するアックアアルタがたびたび起こります。水浸しになった本を積み上げ装飾に使っている本屋さん。

イタリアには、人々が通り過ぎる道沿いに、しらっとした顔で石碑がありますが、実はすごい歴史を語っていることが多々あります。
この石碑。ALDUSと書いてある。錨とイルカのモチーフ。

『1495年、アルド・マヌツィオはアルディーナ印刷所を設立し、ローマン体およびイタリック体の書体に不朽の栄光をもたらした。』

先ほどの「錨とイルカのモチーフ」はアルディーナ印刷所の商標です。アルドさんの大切な宝物であった古代ローマの貨幣が元になっているようです。
上の石碑にあるような、装飾的なアルファベット(ローマン体)と、ちょっと斜めの書体のイタリック体を、アルドさんが発明したんです。考案の理由は、聖書の紙面スペースを節約し、1ページに多くの文字を詰め込んで、印刷物を小型化するためだそうです。
やがてこの書体はフランスに伝わり、「イタリック」(イタリアの)書体と呼ばれるようになり、今日まで続いているとのこと。
石碑一枚に、こんなにたくさんの情報が詰まっているんです。面白いですねー。石碑、あなどるなかれ。
栄華を誇ったベニスでは、教会の装飾も贅を極めたもの。見よ、この椅子の凝った作り。マホガニーなどの高級木材を使っているようにみえます。彫りも象嵌も素晴らしい。

サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂です。外観はシンプルなのに、堂内は豪華。この聖堂にお墓があります。
クラウディオ・モンテヴェルディ。サンマルコ寺院の楽長を歴任し、華やかな時代の一つを作った音楽家。

クレモナ出身であり、クレモナといえばヴァイオリン。まだストラティヴァリは生まれていませんが、すでにクレモナはヴァイオリンで有名な街でした。

日が落ちていき、街が蜂蜜色に染まる瞬間。


本日のレガータストーリカに参加した船と行き交います。先頭は女性。かっこいい。

車のないベニスでは、飲兵衛も多い。運河沿いのランプに集まる人々。

ベニス国際映画祭も開催中でした。

ショーウインドウも、映画祭に合わせて美しい。


人の手で塗られた壁と、自然の植物。コントラストが美しい。こんな街に住んでいたら、自然に色彩感覚が養われるでしょうね。

闇に浮かぶ風景に、ルネッサンス人が歩いていたとしても、まったく違和感がない。景観を守ってきたベニス人の想いと努力の結晶です。いつまでも美しきベニスでいてくれますように。

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普段の生活ではお目にかかれない、世界最高峰の珠玉の作品に出会う機会を与えてくれるホモ・ファーベルに心から感謝します。世界中から探し出したキューレーターの審美眼に脱帽です。
わたしの知らない世界に連れて行ってもらい、新たな知識を得て、美の世界をいざない、まるで楽園にいるようでした。禁断の実は食べてないはずなので、2年後にまた戻ってこられるといいな。
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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リンク:2024年Homo Faber(ホモ・ファーベル)展示会の様子
ほんの少しだけですが、会場の雰囲気をお伝えできるかしら。最後のオルゴール(からくり時計)は、ヴァンクリーフ&アーペル(ここから工程が見れます)の傑作です。
1回目と2回目は『世界』編です。
3回目と4回目は『日本』編です。
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