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うまうまラードのコロンナータ村

大理石の山の続編です。

大理石の山にある小さな村

カッラーラ山の採石場のすぐ傍にあるコロンナータ村。標高532メートルにあり、雪が降り積もったような白い山が目の前に迫ります。

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村人の生活に結びついた大理石山を、崇めるかのように、高台に広場があり、そこに建つ教会。外観はそんなんでもないけど、内部の装飾は、当然というべきか、すべて大理石。

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前回案内した、山から石を切りだすカヴァトーレ(Cavatore)と、彼らを加護するマリア様。

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洗礼をするヨハネ聖人も、もちろんカッラーラの大理石。砂漠でイナゴを食べていたヨハネは、痩せた姿で表現されることが多いけど、筋骨隆々のマッチョなヨハネは、コロンナータ村カヴァトーレ・バージョンなのか。

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カッラーラ街の彫刻工房が製作したアーティスティックな作品。平面の絵画から、こんなにも立体的に彫れるもんなんですねえ。

レオナルドダヴィンチの最後の晩餐では、テーブルに着く13名を3+4+3+3の4つのグループに分けています。

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お金の入った袋を握りしめている
裏切り者のユダ。

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実際に見ているのは白色なのに、色の想像をかきたてられるのは、石膏ではなく、大理石だからか。

20分もあれば歩き回れるコロンナータ村。壁の一部も、大理石。

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と、

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まどろむグレー&オフホワイトの美猫。

大理石とラード

イタリア語で泥棒をラードロ(Ladro)と呼びますが、おじさんは「ラルド(Lardo)!」と叫んで、豚を抱えた盗人を追いかけてる。

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豚の脂であるラードは、イタリア語で、ラルドと呼びます。

なぜラード?

大理石とラード。いったいどんな関係が?

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豚は、昔から貴重な食料。冬前に屠殺したら、長い冬に備えて、ハムやサラミに加工し販売することで、家計を支えたり、自分たちの保存食にします。

ハムやサラミは、お肉のなかでも美味しい部分。そして余るのが豚の脂。

いまでも、山道を登り、やっと辿り着くコロンナータ村。一般人が自家用車でどこでも行けるようになるのは、戦後のこと。それまで、いかに、孤島の村だったか。

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村の男衆は、採石場で仕事をする強者達。重労働で、賃金も上がらず、貧しい暮らしを強いられていた当時。オリーブオイルは高くて買えない。

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じゃあ、この脂をなんとかできないかと、考えた。

うーん。うーん。 。。うん? 

腕組みをして悩んだ先に見えたのが、大理石。

そうだ!

大理石で箱を作って、塩やハーブをたくさん入れて塩漬けにしてみよう。長持ちするだろうし、貴重な食料にもなるだろう。

村中で作り始めたラード。山から石を切りだすカヴァトーレ(Cavatore)達の貴重なエネルギー源でもあったことでしょう。

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ラルド・ディ・コロンナータ

これが、いまや、イタリア国内だけでなく、世界的に有名な、コロンナータ村のラード、イタリア語でラルド・ディ・コロンナータ。

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出典元:L’Italia dei Presidi by Slow Food Editore

地場消費だったコロンナータ村のラードが、一躍注目を浴びるようになったのは、スローフードが有名になりつつあった約20年前に、消滅を危惧される食品に与えられるプレシディオ食品に認定された頃から。

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イタリアのプレシディオ食品のみを集めた、
スローフード出版の本。

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ラードを食べるなんて、「うげげ!脂の塊!」と思うなかれ(笑)

2ミリほどに、うす〜く切られたラードは
大理石のように白く、美しい乳白色。

口に入れると、
柔らかい芳香とともに
甘みがゆっくりじわじわ広がり、
まろやかな食感とともに、
まったりとろけて、
しばらく、うまみが、あとをひく。

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中央がラード

熱々のパンに、ベールのように薄いラードを載せると、
ラードが熱で溶けて、半透明になり、
そこを、パクっと食いつく美味しさ。

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この恍惚感を体験するのに、コロナータ村に訪れる人多し。

どうやって作られるの?

豚の脂をハーブの塩漬けにすれば作れるので、レシピはシンプル。スローフードのプレシディオ食品に認定されたあとは、ラードがイタリア中に出回ることに。本家本元は、Lardo di Colonnata IGP と記載されています。

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出典元:L’Italia dei Presidi by Slow Food Editore

条件その1:作られるのは秋から冬にかけての、9月から翌年の3月まで。
条件その2:標高532メートルあり、周囲は大理石の山と栗の森に囲まれている、ミクロな大気条件。冷蔵庫に入れず常温でゆっくり熟成することが可能。
条件その3:大理石。ラードが箱の中でスヤスヤ眠っているときも、天然の石材は目に見えない小さな小さな穴から空気を通し、呼吸ができるようにしています。

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「コンカ」と呼ばれる大理石の箱

衛生上、アルミニウム製やプラスチック製の方が良さそうだけど、大理石の箱の内側に溝を作り、にんにくを擦り込むことで、バクテリアのカバーが作られ、悪さをする菌を寄せ付けないようにしています。

使われるカッラーラ山の大理石のなかでも、カナローニ採石場から採られた、硬く乾いてスベスベしている最高品質ものを使用。

条件その4:地元で生育する何種類ものハーブとスパイスを使うこと。添加物、保存料、甘味料など、人工的なものは一切不使用。
条件その5:何世紀にも渡り、代々受け継がれている、大理石の箱、レシピ、技法で作られていること。
条件その6:熟成期間は最低6ヶ月。2年、3年ものもあり。

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出典元:L’Italia dei Presidi by Slow Food Editore

肝心の豚は、北部や中部イタリアで飼育されたものだけを使用。ラードの形に整えたら、海塩を擦り込み、必須の材料である、黒胡椒、ローズマリー、にんにくをベースに、門外不出の秘伝のハーブやスパイスを加えていきます。

良質の脂だし、毎日食べるものじゃないし、たまには、うまうまラードを堪能してもいいよね!

ラードを持ち帰るのは(あっという間になくなり)危険なので、料理にも使えるグランチャーレ(豚のほっぺたの肉)を購入。値段にして五百円くらい。カルボナーラが、絶品中の絶品に仕上がります。

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材料は、「豚の頬、海塩、にんにく、黒胡椒、スパイス、ハーブ各種。
」以上。こういうシンプルな材料表示を見ると、シビれちゃう。

地元食材ということも、もちろんあるけど、高いお金を払わなくても、美味しい食材にありつける機会が多いイタリア。

温暖な気候と美しい風景。それに、安くて美味しい食べ物と、おしゃべりを楽しめる仲間がいる。こういう豊かさも、ありなのかもしれない。

最後まで読んでいただき、
ありがとうございます!

次回は「聖なる石」という美しい街名をもつピエトラサンタにご案内します。大理石の(勝手に)三部作の最終編です。

大理石の山の3編はこちらから。

大理石の山 1部目
カッラーラ山は、宝の山よ。

大理石の山 2部目
うまうまラードのコロンナータ村(本編です)

大理石の山 3部目
聖なる石の街に、恋する芸術家たち


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