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2024年 Homo Faber n.3 * 日本の工芸家が創造する、美の意識。Birth to Love.

ベニスのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島で開催された、Homo Faber(ホモ・ファーベル)の様子をご案内しています。

1回目と2回目は『世界』の作品でしたが、3回目は『日本』の工芸家の作品をご案内します。

前回まではこちらです。

感嘆し見惚れる、日本の工芸家の作品が展示されており、嬉しくなります。

日本国内でしたら、アトリエやお店に訪問できるかもしれませんし、販売されている方々もいらっしゃるので、公式サイトも挙げておきます。

今回の展示では、人生の『はじめとおわり』をテーマにしています。

Birth(誕生)→Childhood(幼少期)→Celebration(祝賀)→Inheritance(継承)→ Love(愛)→ Love(結びつき)→ Journeys(旅)→ Nature(自然)→ Dreams(夢)→ Dialogues(対話)→Afterlife(死後の世界)

では日本の工芸家の作品を訪れてみましょう。テーマの説明は前回までの投稿をご覧ください。


Childhood(幼少期)

おもちゃ、ぬいぐるみ、子供用椅子、ミニカーなどが、空間いっぱいに展示されています。

部屋の入り口で出迎えてくれた
気品のあるワンちゃん。

蝶々が首元を取り囲んでいて、見た目は柔らかそうですが、実は金属でできています。銀メッキを施すことで白色にし、顔は金属を叩いて彫刻されているそうです。目は七宝です。硬質の金属とは思えない顔の柔らかさは、ぱっと見、革で作られているのかと思いました。

近づいてみると
蝶々と植物で
作られていることがわかります。

吉田泰一郎氏(東京)


ゴジラだ! 

ただのゴジラと思うなかれ。
模様が異なるミリ単位の
美しいガラスが溶接されています。

ステンドグラスみたい。ゴジラ以外にどのようなものを制作しているのか、興味を惹かれて調べてみると、万華鏡作家でした。どう発想したら、万華鏡からゴジラが生まれるんでしょう。独学で万華鏡を学ばれたそうです。

山見浩司氏(東京)

こちらはもうひとりの万華鏡作家の作品です。万華鏡を楽しむだけでなく、姿も美しい。細工の美しい美術品です。

光の反射で撮影が難しく断念しました。
ホモ・ファーベルの公式サイトより参照。

同じ作家によるものです。本体の草木模様は、着物の柄を染める古い型紙を使用しているそうです。

こちらも
ホモ・ファーベルの公式サイトより参照。

中里保子氏(千葉県)

Celebration(祝賀)

誕生日、入学、入社、結婚、出産など、人生のなかで訪れる、さまざまな「おめでたい」シーン。大きなテーブルには、祝賀を表現する美しい器が並べられています。

年月を経て飴色になったのではと錯覚するような、鈍い光を放つ漆器は輪島塗りです。どのような技術をして、この美しい佇まいが生み出されるのでしょう。


茶色がかった半透明の漆の下から
縦に落ちる筋と輝くような光沢が
滑らかに光っています。

銀箔を貼り職人の手によって禾目(のぎめ)に銀箔をかき落すことで表現している『伽羅塗』と呼ばれるものらしい。

「そうすることで独特な世界観が生まれ、漆と銀の剥がれ模様が調和した美しい漆器となりました。」と説明は結んであります。

輪島は2024年元旦に震災に見舞われた町。1年後の現在の状況を説明されていました。公式サイトより参照させて頂きます。

【重要】新年のご挨拶とご注文やご修理の一部再開
新年あけましておめでとうございます。地震が起きて一年が経ちました。本当に大変な一年でしたが、皆様のお力添えのお陰で復興が進んでいます。輪島の町はまだまだこれからです。ただ、私たちはご寄付やクラウドファンディング、また注文を停止と書かせていただいていたのですが、その中でもいくつかのご注文をいただき少しずつですが、注文にお応えすることができるようになり、復旧、復興が進んでおります。本当にこれを見られているかたのおかげだと感謝しております。
今はまだ、働く環境づくりに苦心しております。私たちの職場も整っているわけではありません。様々な物資も十分ではありません。一緒に仕事をしている蒔絵師の方や、木地職人の方などの同様です。でも、本当に少しずつですが上向いております。
今回はどうしても1月1日に再開を伝えたいと思いこちらを書いております。
時間がかかるものもあります、修理もどうようです。すぐに対応できるものもあります。完璧な状態で伝えようと思っていましたが、難しかったので一部再開という形でお伝えさせていただきます。
ご注文ございましたらお問い合わせください。対応できるもの、できないもの、お時間かかるものがあります。それでも大丈夫でしたらお問い合わせいただければとおもいます。
また、営業自体は2025年1月6日からです。お返事はそちらからとなりますが、まずはご連絡とさせていただきました。
どうぞ、本年もよろしくお願い申し上げます。

輪島塗 ぬり工房 楽より

引持 力雄氏と引持 和頼氏(石川県)

目的を果たす機能性があれば実用品として十分です。そこに類希な技を用い美しく仕上げる道具は、無用の長物かもしれません。

なのに、手のぬくもりを感じる優しく美しい道具に心惹かれて、一本我が家にも。と心が動きます。

金網からこれほど優美な姿を作ってしまう、
人の創造力もすごい。

手編みの技術を活かし、ブレスレッドや指輪などの装飾品も製作しています。去年日本へ帰国した際に京都へ訪問してたのに。そのとき知っていれば立ち寄ったのに。知らないって、後悔です。

辻徹氏(京都府)

こちらの記事も素敵です。

無地の無骨で黒い食器。光沢があり瀬戸のようです。展示会で見た時もそう思っていました。

活動を拝読して初めて知った事実。食品廃棄物を炭素化し器として焼き上げ、漆を施しています。

調理されることなく、廃棄物として捨てられてしまった食品が漆でお化粧され、生まれ変わった作品名は「アニマ」。

アニマには、魂、心、生命という意味を含みます。器を体現化したようなネーミングに、作家の気持ちが感じ取れます。

荒木宏介氏(東京)

自然の優しさをそのまま映し取ったようなガラスの器。撮影が良くないので、本来の美しさをお見せできないのが残念です。

ということで、今回もHFの公式サイトより参照します。

参照:Home Faberより

じっと観察すると、凹凸があります。宙吹きガラスに彫りを施し、その上に色をのせているそうです。

透明なガラスに自然が舞い降りたような繊細で優美な作品。雪が舞い降りたような白色だけで装飾された器を公式サイトで見つけ、恋に落ちました。

西山雪氏(北海道)

気品と色っぽさを合わせ持ち、スっと立つ姿。失礼ですが、ぱっと見、日本の方の作品とは思えませんでした。ステレオタイプになっていた自分に反省です。

左側の作品もすべて
同じ作家によるものです。

色合い、グラデーション、脚に施されている有機的なオブジェ、それらがひとつになり独特の存在感を発しています。

ロスアンジェルスをベースにしている作家です。ロスアンジェルスでは25年1月中旬の時点で、火事が猛威を奮っており鎮火する様子はありません。心配で勝手にアトリエの住所からグーグルで調べてみましたが、火事の被害はないようです。

瀧澤カズキ氏(ロスアンジェルス)


撮影できなかったもう1点。いろいろな表情の魚が顔を向け、何匹かは後ろ姿で壁の中に泳ぎに行っているユニークなオブジェ。

参照:Home Faberより

でも魚の表情は悲しんでたり苦しんでいたり。漁網のメタファーとして表現しており、タイトルも「Ghosts From The Sea」海からきた幽霊。

プラスチックによる海洋汚染や底引き網漁法による海洋生物への環境被害は止まること知らず。生息地を破壊された魚や不必要に捕獲された魚の復讐心を表しています。

岩本幾久子氏(ロンドン)

Inheritance(継承)

親から子へと受け継がれていく伝統、技能、道具。そして作り手の魂。

3代目の作品。

4代目の作品。

人形師親子の作品が展示されていました。同じ土で、同じ顔料で、同じ製作方法でも、モチーフが変われば完成した姿も異なります。とても楽しく拝見しました。

まるで生きているような表情。見目も麗しい。この表情を表現できるまでに、どのような修練を積んできたのでしょう。繊細な動きや彼らの表情に、心が洗われるような作品でした。

『もしも江戸時代の腕の良い人形師が現代にタイムスリップしてきたら』。3代目とはまったく異なるアプローチです。

細部まで丁寧に製作されています。結構大きなサイズで、前からみたら、後ろに回り込んだりと、見ていて楽しい。

中村信喬氏と中村弘峰氏(福岡県)


2024年 Homo Faber n.1 で、ちょっとだけ案内した作品。盆栽用に製作された機能と美が融合したじょうろ。

細い注ぎ口からは、雨降るように水が注がれることでしょう。端正に手入れされた盆栽の隣に、何気なくこのじょうろが置かれているのを想像するだけで、まるで一枚の絵を見ているようです。

根岸 洋一氏(東京)

Love(愛)

愛をテーマに、愛を伝える花々が部屋に咲いています。

子供のときは遊んでいる傍らに、大人になってからは散歩中に見かける野菊。イタリアにも生息しています。銀の雫が茎を伝っているので、本物の野菊を金属加工したものかと、思い違いしてました。

糸のような花びらも、おしべめしべも、葉っぱも、茎も、すべて金属です。金属という硬質な素材で、ここまで自然に近づくことができるなんて、驚異さえ感じます。

咲いたばかりの元気の良い花ではなく、枯れゆく散り際の美の表現は、カラヴァッジョを連想します。

鈴木祥太氏(京都府)


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あー、だめでした。

日本編はこの回だけで終わるはずだったのに、公式サイトやインスタグラムを覗き見したら、時間が経つもの忘れてうっとりし、さらにはネット上に挙げられているインタビューなどを検索していたら深みにはまり、抜け出せなくなりました。

イタリアをはじめ欧州の職人作家の作品に出会う機会は多い方だと思いますが、日本の方々の作品にここまで多く出会ったのは初めてで、胸が高鳴ります。

日本の素晴らしい作品を、この投稿を通して知るきっかになれば、本望です。

最後まで読んでくださって
ありがとうございます。

第4回目につづきます。

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イタリアのモノづくり | ようこ
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