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コルシーニ邸庭園と職人展示 2023年 n.2

ARTIGIANATO e PALAZZO in Firenze

フィレンツェの中心街にて9月に開催された職人展示。前回に引き続き、コルシーニ庭園へとご案内します。


Materia e Virtuosismo 素材と名匠

トーンの落ちた照明に浮かび上がる、美しいオブジェ。職人は居ず、職人や工房、そして作品名が記してあります。

Galleria dell’Artigianato(職人ギャラリー)と呼ばれるこの空間では、卓越した技術と洗練された感性を備える、芸術性の高い作品を堪能できます。

ろくろに付着した粘土を何層にも重ね、温度を3回変えて焼き上げ、3度目のときに金箔を全体の12%加えています。

ときに森から、ときに海から、自然の造形がモデルになっている、繊細な陶器。

くじらの中から一目散に逃げ出すピノッキオとゼペットじぃさん。波に揉まれながら泳ぐ魚たちの表情も愛らしい。音が聞こえてきそうな波の表現も素晴らしい。

ちなみに、ピノッキオの生みの親カルロ・コッロディはトスカーナ出身です。

ピノッキオから打って変わり、澄み切った冬空の静まりを感じさせるような作品。ルネッサンス文化が育んだ華美なジュエリーが多いフィレンツェで、その対極にある作品を生み出すのは、フィレンツェで活躍されているYoko Takiraiさんの作品です。

木製の大きな機織り機で、ビロード生地を織り上げ、刺繍をするように金糸銀糸を操る錦織。シルクがふんだんに使われている豪華な織物はジリオ財団の作品です。

ビロードの起毛は、織った糸を小さなナイフで一筋づつ切ることで作られますが、糸の細さは約1ミリ。気の遠くなるような作業で織り上げられます。

表面に模様が施されている、ムラノガラスで作られたペンダント。炎でムラノガラスを溶かし、息を吹き込みながら形を成形していきます。色合も美しい。

伝統工芸品、高級手工芸品、という言葉からは、どこか古的な匂いを感じ、ここで展示されている作品も、同一線上にあるのかもしれませんが、古さを脱ぎ捨て、アートとして解釈し直した印象を受けます。

伝統を守り継続すること、継続するために変化し続けること。それが現代の名匠なのかもしれません。

ギャラリーの空間から外に出ると、まるで別世界へ移動したように、昼過ぎの日差しが眩しく目に飛び込んできます。

トスカーナといえば糸杉。糸杉をモチーフにしたテーブルウエア。陶器やリネンは、地元の職人に作らせたものなのでしょう。職人はモノを作るだけで手が一杯です。職人の製品を販売する先がもっと増えて欲しいものです。

染色

ジャムのような小瓶。でもシールに貼られている表示は、オレンジやイチゴではなく、Robbia?、Campeggio?、Cocciniglia?。調べてみると「茜」「ロッグウッド」「コチニール(臙脂(えんじ)虫)」。

天然素材を使った染色の実演でした。サルデーニャ島の職人です。

大地から育った木々、植物、野菜などの自然の恵みが、色として生まれ変わります。温かく穏やかな色合いは、目にも優しく、気持ちを和ませてくれます。

染色職人によるデモンストレーション。サルデーニャ島で育つダフネという植物で染めた黄色のウールを、藍に浸すことにより、緑色に染め上げます。

赤色に染め上げたあと、藍色に浸すと何色になるでしょう。紫色です。

そうすることで、原色からさまざまなカラートーンに染めることができるんですね。

床一面に広がっているものは? 何をしている作業風景でしょう。

参照:instagram

床一面に広がっているのは、玉ねぎの皮。外側の茶色の皮の部分だけを黒籠に集めている作業です。薄茶色に染色されます。

サルデーニャ島にあるお店。絵の具で塗ったような真っ青な空。薄いピンクの壁が良く映えて、さすがサルデーニャ島というこの日差しです。羊のディスプレイや、干してある色とりどりのウールが醸し出す雰囲気は、まるでおとぎの世界のよう。行ってみたいなぁ。

参照:instagram

染色したものは、商品化しています。サルデーニャ島のお店だけでなく、フィレンツェではこの展示会と、11月にフィレンツェの東地区にあるサンタクローチェ教会広場で開催される生地市に出展しています。

参照:instagram

外の空気を吸い、再び建物の中に。

近代的な鉄骨の建物の中で、無機質なブースに区切られている展示会場と異なり、ここでは建物それ自体が自然と溶け合い、居るだけで心地良い。

ミクロモザイク

前回もモザイクをいろいろ紹介しましたが、こちらはミクロモザイク。

ヴェネツィアムラノ製の平たく細いガラス棒をミリ単位で切り、少しづつ作品に仕上げていきます。名前の通り「ミクロ」の世界です。

絵でもない、ビーズでもない、ガラス棒で作られた作品は、独特の質感と色合いでモチーフが表現されており、味のある作品に仕上がっています。アンティックな雰囲気の枠組みも良く合います。

修復

積み重ねられた時間は作品に塵を蓄積させ、本来の色も褪せていきます。そこで修復という技術が必要になります。

わたしの修復のイメージは、牛の歩みのように、少しづつ、そおっと、腫れ物に触るように作業を進めていくのかと思っていました。ですが、実際には意外にも大胆に筆を動かしています。

絵画のあるところ、額縁もあり。この工房では額縁の修復も行っています。

突然のモノクロ写真。1966年11月4日のフィレンツェの風景です。

参照:Wikipedia

イタリアでは11月は雨季に当たり、毎年11月は雨の日が続きます。突然の豪雨により被害が起きるゲリラ雨とは異なり、1966年は10月から雨が降り続け、ついにアルノ川が氾濫します。

サンタクローチェ教会(Santa Croce) においては、約5メートル(4.83m)も水位が上がる大惨事に見舞われます。

参照:Corriere

イタリア最古の全国紙コリエレ(Corriere)社。アルノ川氾濫の状況を写真を交え詳細に紹介しています。

泥土にまみれた芸術作品は数多く、順々に修復が行われます。

これは、氾濫から40年後の2006年から10年間に渡りこの工房が修復した作品です。サンタクローチェ教会のメディチ家小礼拝堂に飾られていたもので、1555年の作品です。

こういうものを目の当たりにすると、なんて人生というのは短いものかと、肌で感じてしまいます。

修復工房の作業風景を見学することで、彼らの仕事を知る事ができ、さまざまな感情を感じることができます。そのような貴重な体験を得られる展示会に、本当に感謝します。

Scuderia 馬小屋

もと馬小屋の会場へと移動します。円柱が均等に立ち並び、教会のような室内。貴族の馬ともなると、このような美しい馬小屋を与えられるのですね。

ミシンでお財布を縫い合わせているところ。2人の姉妹がフィレンツェ中心街でお店を経営しており、お店の奥に工房があります。

お店では、店頭に並べられた商品だけでなく、革の素材や色を選んで、自分だけのオリジナルの鞄も作ってもらえます。お店と同フロアにある工房で一から作るので、注文にもかなりの融通が効き、お客様が悩んでいると、あれやこれやと相談にのってくれる、頼もしいアドバイザー姉妹でもあります。

去年インタビューを快く受け入れてくれた、機織り職人シモーネ。右側では、デモンストレーション用の小さな機織りを持ち込んで、織りを実演していました。

去年の同展示で『もっとも美しくディスプレイした出展者』に選ばれ、今年は無料で出展しています。広く設けられた空間は、まさにOzioの世界。

仮にごちゃごちゃした空間で展示していたとしても、シモーネの展示は、すぐに分かるし見つけられると思います。それほど、Ozioの個性が表れています。

シモーネのインタビューはこちらです。3回に分けて案内しています。

糸杉に響く、とんからり。若き機織り職人の物語 - n.2

糸杉に響く、とんからり。若き機織り職人の物語 - n.3

躍進を続けるシモーネ。来年のワクワクするような計画も教えてくれました。いつか、みなさまともシェアできると思います。わたしも楽しみです。

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次回は3回目、最終回です。

最後までお読みくださり
ありがとうございます!

次回もコルシーニ庭園で
お会いしましょう!

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☘️ n.1 はこちらです。

☘️ 2021年の職人展示はこちらです。

☘️ 2022年の職人展示はこちらです。


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イタリアのモノづくり | ようこ
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