美術鑑賞から日常を見る新しい目
前回、美術館での絵の見方についてお話ししました。今回は、その観察力をどのように日常生活に活かせるか、特にビジネスシーンや人間関係においてどう応用できるかについて、詳しくお伝えしたいと思います。
こちらの記事は、Podcast番組「アート秘話〜名画に隠された世界〜」で放送した内容をもとに作成しています。こちらの放送もぜひよろしくお願いします!
FBI流の観察力の鍛え方
アメリカのFBI捜査官たちが実践している、興味深い手法があります。彼らは、1枚の絵や数点の美術品をじっくりと観察し、見えるもの全てを書き出すよう指導します。これは単なる美術鑑賞ではなく、観察力を鍛える訓練なのです。
例えば、静物画を見て次のような質問を投げかけます:
なぜ作者は机の上にリンゴとみかんを置いたのか?
バナナではダメだったのか?
リンゴ2つではなく1つなのはなぜか?
その投げかけに対して、思考を巡らせて回答し続けます。
この手法を日常生活に応用すると、驚くほど人間観察の力が磨かれます。
ビジネスシーンでの活用法
新しい取引先との初対面。あなたは何を見ますか?
契約を取ることだけが目的ではありません。相手がどういう人物なのか、視覚情報から理解しようとすることが重要です。
次のような点に注目してみましょう:
なぜ黒いスーツを着ているのか?
青いネクタイを選んだ理由は?
靴が磨かれていない理由は?
名刺を左側から出した意図は?
眉毛がつながっているのはなぜ?
これらの観察を通じて、相手の性格や好み、状況などを推測できるようになります。例えば、青いネクタイを好む人には、次回の商談で青系の小物を身につけて行くといいかもしれません。
小さな気遣いが、大きな信頼関係につながることもあるのです。
日常のコミュニケーションに活かす
この観察力は、ビジネスだけでなく、日常のコミュニケーションにも役立ちます。友人や家族との会話でも、相手の様子をよく観察することで、より深い理解と共感が生まれます。
例えば:
友人が普段と違う服装をしている理由は?
家族の表情や仕草に変化はないか?
カフェで隣の席の人が選んだメニューは何か?なぜそれを選んだのか?
こういった観察を習慣づけることで、周囲の人々への理解が深まり、より豊かな人間関係を築くことができるでしょう。
想像力の重要性と限界
ただし、ここで一つ重要な注意点があります。これらの観察や推測は、必ずしも正解にたどり着くとは限りません。人間の行動や選択は、時として理屈では説明できないものもあります。
美術の世界でも同じです。ある作家に聞いたところ、「何も考えずに描いていたら偶然できた」という作品も少なくないそうです。
つまり、全てを論理的に説明しようとするのではなく、時には直感や感性を大切にすることも重要なのです。
まとめ :観察力が開く新しい世界
美術鑑賞で培った観察力を日常に持ち込むことで、世界の見え方が変わります。人々の行動や選択の背景にある理由を想像することで、より深い理解と共感が生まれるのです。
ただし、これは相手を判断するためのものではありません。あくまでも、相手をより理解し、よりよいコミュニケーションを取るための手段です。
次に美術館に行ったら、絵を見るだけでなく、その観察力を磨く機会だと思って楽しんでみてください。そして、美術館を出た後も、日常の中でその観察力を活かしてみてください。きっと、今まで気づかなかった新しい発見があるはずです。
最後に、美術館に行ったあとは、図録を買ってマッハで帰ってみてください(笑)。家に着いたら、ゆっくりと図録を開いて、美術館での体験を振り返りながら、新しい発見を楽しんでみてください。
それでは、また次回お会いしましょう!
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