アートケアだより7月号 : パリとロンドンのいくつかの美術館・博物館へ行ってきました
6月。「えいや!」と、パリの美術館のいくつかの乳幼児向け鑑賞会とイギリスの美術館・博物館を訪問してきました。
イギリスに留学中の息子から「来れば?」と言われまして(珍しく!!)。「我が子の留学先に出かける母」なんて恥ずかしくてできない~と思っていたのですが、何度か誘われるうち、そういえば…と、昨年、研究員さんからご連絡をいただいたオルセー美術館で何か子ども向けの会があるか調べましたら、ちょうど鑑賞会がある! そしてその前日には、フォンダシオン・ルイヴィトンというこれまた素敵な美術館で、年に1度2日間だけの「ファミリー・フェスティバル」が開催されている! これは行くしかない!!と自分を鼓舞。日本人のおばちゃん一人旅と相成りました。
各所、催されている日時が決まっているところへ行くので、飛行機、電車、バス、どれか1つでも遅延したら見学できない!というスリリングな行程。パリでの鑑賞会の日と息子指定のイギリスで会える日との兼ね合いで、パリ→ロンドンは夜行バスに乗らざるを得ない!(夜中で何も見えなかったですがドーバー海峡をフェリーで渡るのは嬉しかったです)。いやはや無事に帰ることが大きな目標の旅でした。
案の定、到着から旅行中ずっと、スマホに自分の位置情報が出ないという状況(泣)。自分のスマホ能力に疑念を持っているので、もちろん地図はプリントして持参しており「ここに行きたいんですけど!」と人に尋ねて進みましたよ。
皆さん、とても親切!!
そして一人旅だと、その国の人だけでなく観光で訪れている世界中の人と気軽にお話しできて(カタコトですけど!)楽しかった!!
結果無事に、イギリスで9館、パリで5館、うち鑑賞会は3館で見学しました。
ロンドンのナショナル・ギャラリーでは学校単位の対話型鑑賞の様子を見ることができました。
オルセー美術館の研究員さんともお会いすることができました。連絡をいただいた時には、こんな小さな活動をしている私にオルセーの研究員さんが連絡してくるだろうか?詐欺では?!と半信半疑でしたが、正真正銘の研究員さんでした。メールでのやり取りそのままに、あたたかいお人柄の方でした。
パリの鑑賞会のルポはあらためて書くとして、「アートケアだより」今月号では「あの子にこのこと伝えたい」「この子にこれを知らせたい」と、子どもたちの顔が浮かびながら巡った、イギリスの博物館について書きたいと思います。
●ロンドン自然史博物館
集めたくなる気持ち、この世界の仕組みを知りたい気持ち
イギリスの国立の博物館・美術館は、入場無料のところが多く、なんとありがたいことか!という状況です。どこも規模が大きく、コレクションは大充実。
「わ~!」と思わず感嘆の声や、独り言が出てしまいます。何日も館内に泊まって見たいところばかり。
絶対外せない!と訪れたロンドン自然史博物館。
子どもたちに人気の恐竜はもちろん、昆虫、爬虫類、哺乳類、鳥類、海の生き物、鉱物、植物、地球の成り立ち etc.「ザ・博物館」系統網羅された展示です。
地震についてのコーナーには阪神淡路大震災の時の神戸の店舗が再現されています。「ダーウィン・センター」には標本がたくさんありました。
生き物は、実物大で空を飛んでいるように展示したものがたくさんありました。広い博物館の空間をめいっぱい使って、「生き生きと、できるだけ多くの資料を見せよう」という気概を感じたのは気のせいでしょうか。
アートケアひろばの美術ワークで「イッカク」を描いていた子がいます。イッカクは子どもたちの心を惹きつけるようで、アートケアでは恐竜やクジラに次いで描く子が多いです。
自然史博物館では、イッカクのコーナーに、1つの角のいわゆるイッカクと、もう1体、2つの角を持つ標本も展示されていました。イッカクなのに角が2つ?!
角をよく見てみると、どちらもスクリュー状に巻いた形で成長していることがわかりました。
これらのことを私は初めて知りました!
帰国後、イッカク好きな子に写真を見せて伝えたところ、「そうだよ、2つ角があるイッカクもいるんだよ」と、さらっと。角がスクリュー状に巻いていることも知っていました。さすが子ども博士。好きなものへの探究心!
さらにマナティの写真を見せたところ、同じ「海牛類」であるジュゴンについて発言。
「今は、生きているジュゴンはオーストラリアと鳥羽の水族館でしか見られないんだよ。だから夏休みに、鳥羽に行くんだ!」と目がキラキラ~
そうなの、それは行かないと!だね。
行きたい時に行きたいところへ行けるのは、とてもラッキーなことだと思います。
私の今回の旅もそう。今なら子育てが一段落し、介護で家を離れることができないという状況でもない。だから行くことができました。
出かけたくても出かけられない人のためでもあるのでしょうね、今は博物館のサイトで、バーチャル見学ができたり、資料映像を見ることができるようになっています。
「人類の叡智はみんなのもの」を体現されてますよね〜
Natural History Museum in London(at South Kensington)
https://www.nhm.ac.uk/
●小さい博物館も白眉
ロンドン自然史博物館は巨大でしたが、小さな博物館も素敵です。
バーミンガムにある「ラップワース地質博物館」。私としては掘り出し物!な博物館でした。
博物館は共通した分類系統のもと構成されているので、小さな博物館も大きな博物館と同じ。むしろ小さいからじっくり見たり、全体を俯瞰しやすいという良さがあるとあらためて感じました。
入口すぐには恐竜の骨格標本が宙を浮いています。360度、近くで見られる!
地質博物館と銘打っているだけに鉱物のコレクションが素晴らしかった。息子はバックヤードツアーに行けて、その時「ぐにゃりと曲がる鉱物」に触らせてもらったそうです。そんな体験ができたら、地球の不思議を一層、実感できますよね。
この博物館もサイトが充実しています。
ラップワース地質博物館 The Lapworth Museum of Geology
https://www.birmingham.ac.uk/facilities/lapworth-museum
●人がいっぱいだから子どもの声が気にならなくて、みんな気楽な大英博物館
大英博物館。The British Museum
https://www.britishmuseum.org/
巨大さ世界一級。見学する人も多い。小学生の見学が多くて、みんなワァワァ、探検家みたいに回っていました。人が多いと館内が騒々しいので、子どもの声を気にする人はいない様子です。すごい展示物ばかりなのですが、みんな気楽で過ごしやすい感じ。
大英博物館での赤ちゃん向けの活動。ダ・ビンチについての企画展で、赤ちゃん連れの人だけが入室できる「リトル・フィート」という設定日時がありました。
その時間は一般の人は入室できない。ベビーカーがずらりと並んでいました。
国によって、あるいは館によって、乳幼児とその家族への働きかけ受け入れ方は様々。「すべての人に開かれた」という言葉も良く耳にします。
できることできないこと様々な事情の中、世界中で工夫されていること、それ自体がまた人類の進化・歴史の1つになっていくんでしょうね。