平塚市美術館「こどもたちのセレクション」エピソード13
●0歳のご家族のコメントが多かった作品
今回の調査(2015年4月~2022年1月)で、0歳さんのご家族のコメントが多かった作品をご紹介します。
(赤ちゃんが鑑賞することに意味はあるのか?という疑問も、ふと浮かびます。そのことについて先月書き終えていまして、平塚市美術館のシリーズが終わったらアップします。よかったらご覧ください)
・大森運夫『三博士の礼拝』(2009年 185.0×231.5cm 彩色・紙)
(平塚市美術館さんの「所蔵作品データベース」で画像を見ることができます)
https://jmapps.ne.jp/hiratukabi/
生誕したキリストのもとに駆けつけた三博士と、母子像が描かれています。馬小屋とわかるよう、馬の頭部も複数、首を振っているかのように描かれています。
この赤ちゃん姿のキリストは、観ている赤ちゃんと同じくらいのサイズ! 鑑賞する赤ちゃんとご家族が絵の前に立つと、絵の母子像と「こんにちは~」と交流しているように見えてしまうのは気のせいでしょうか。
0歳 7ヶ月 左側の黄色い服の人から右へ順番に目で追う。じっと見つめる(顔を)黄、茶、青、白、赤の服を順番に見る。
0歳 8ヶ月 全体的に声を出すことはなかったけれど…他に比べるとじっと見ていたかも?赤い服が良かったのかな。色々な物に興味もつといいな。
0歳10ヶ月 指を差して奇声を発した。赤いのがあったかかな? なかなか渋い絵を選んだね
お母さん方(この時は全員お母さんでした)の、子どもの気持ちをありのまま理解しようとされているコメント、未来への気持ちなど、あったかいです~!!
ちなみに3歳さんのコメントを。この年齢では、なぜ好きか理由も述べます。
3歳 9ヶ月 「赤ちゃん、お母さん」指を差し出して見つめた。「お母さんが優しそうだから好き」。赤ちゃんが気になっていた
ついこの前まで赤ちゃんだったのに、赤ちゃんが大好きな時期なんですよね。微笑ましいです。
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●1歳児は…
「母子像つながり」で、下記の作品をお隣に。
・石田徹也『コンビニエンスストアの母子像』(1996年 145.6×103.0cm アクリル・板)
買い物カゴの中に、なぜか男性が縮こまって入っています。レジ係の人が平然と、その男性の頭を持って「ピッ」とスキャンしている様子が描かれています。
石田徹也さんはバブル期の企業戦士の風潮を、悲哀もありつつユーモラスに表現された時期がある作家さんです。所蔵品展で石田徹也さんの特集があった際に、たくさんの石田作品が展示され、そのどれも子どもたちが興味津々でたくさん反応をしていたので、どれを選ぶか迷いましたが、0歳児に続いて1歳児の反響が多めだった作品をと展開してみました。
「レジ」「買い物カゴ」そこに「人が足をかがめて入っている」など、1歳さんが大好きな要素が盛り沢山。
3歳の子どもたちは不思議そうにしていました。「ねてるのかな?」なんてコメントも。
小学生はこの作品を見たらゲラゲラ笑っていました。
石田さんの作品はもう1点、辛い様子が描かれている作品を前にした時、子どもたちが思ったことについて、とても印象深かったエピソードがあります。次回はそのことを書きます。
(本稿は美術館ご担当者様に確認いただき掲載しております)