力学の基本解説 〜質点と剛体と連続体について〜
今回は理系の記事。力学と言うと難しくて堅苦しい表現になるが、物体の運動の基本である、質点と剛体と連続体について解説をしてみた。
主に大学生向けの範囲になるので、難解なところもあるかもしれないが、できる限り分かりやすく書いていこうと思う。
物体の扱い方について
ある物体が力を受けて、運動を始める。その過程について考える学問を「力学」と言う。学問的に表現するならば「物質の運動およびその運動をひきおこす力を研究するもの」である。
力学の世界では、物体の扱い方について、次の3種類に分類している。
(1)質量だけを持つ仮想的な物体 =【質点】
(2)質量と大きさ(形状)を持つ物体 =【剛体】
(3)質量が連続的に分布する物体 =【連続体】
質点は物体を最も簡単にしたもので、手計算でも十分に扱える。また、剛体も質点に物体の形状を加味しただけなので、ギリギリだが手計算で問題ない。問題は連続体で、情報量が膨大になるため、コンピューターで計算することで対応するのが一般的である。
おそらく、高校の物理で扱うのは(1)の「質点」までだろう。他のふたつは大学で学習する範囲である(自分は高専に居たので、高校のカリキュラムは把握していないのだが)。
物体の運動の見方について
運動に関しては、直線運動や回転運動などいくつかの形態があることは、何となくイメージできると思う。ここでの問題は、何を見て直線運動か回転運動かを判断するのかということ。
結論から言うと、次の3つの情報(扱う範囲)によって決まる。
(1)物体の位置の変化 =【直線】
(2)物体の姿勢の変化 =【回転】
(3)物体の形状の変化 =【変形】
上の図にあるように、質点は直線運動のみ扱うことができ、剛体は直線運動と回転運動を扱うことができる。連続体はこれらに加えて変形を扱う。
質点はその名の通り点なので、あくまで仮想的な物体と言える。イメージとしては、物体の質量を凝縮させたビー玉のような感覚である。
剛体は大きさを考慮するので、回転する円盤や振り子をイメージするとちょうど良い(厳密に言えばこれらも連続体だが、変形はほとんど無視できるので剛体とみなしている)。
連続体は至る所の変形を扱う。変形に対する理論計算の式はあるが、それらは厳密で複雑である。そのため、先程書いたように、コンピューターに計算の処理を任せる必要がある。
私の仕事(CAE:Computer Aided Engineering)の話になるが、私たちはコンピューターシミュレーションの中で現実の物体を対象とするので、基本的に問題を連続体として扱う。ただ、問題を簡略化したい場合に、質点や剛体で事象を再表現することもある。
例えば、問題を簡略化して手計算で出した答えと、シミュレーションで出した答えを比較することで、計算の妥当性を検証するような場合である。
おわりに
今回は力学の基本となる運動の捉え方について、質点と剛体と連続体を紹介しながら解説してみた。先に書いた通り、基本的に大学で習う範囲のことなので、その辺の方々に役立てられたら幸いである。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。マイペースでほぼ毎日の更新に取り組んでいます。何卒よろしくお願いいたします。
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