子どもいっき なつやすみ編!
いつのまにか夏休み。
あやかちゃんはラジオ体操の帰り道、
あっくんと最近の過ごし方について話しています。
「コロナのせいで毎日家にいるの。
プールも、キャンプも、田舎のおじいちゃんおばあちゃんに会いに行くのも今年は諦めた。
もう二度とない、私の8歳の夏はこうして、
ときめきもドキドキもなーんにもなく
終わってしまうのよ」
「うちもそう!
どこにも出かけないから家族でボードゲームしたり、
ヨガしたり、
もう100回はしたよ。
僕の8歳の夏は初めて家族と長い時間を過ごすことができたな。
最初はずっと一緒ってなんだか恥ずかしかったけど、
慣れたらいいもんだな、って思ったよ」
「うちはパパとママが、また喧嘩を始めたわ。
パパは、コロナなんて密を避ければいいんだからキャンプへ行こう、田舎へ行こうって言うけど、
ママは、移動するのに密が避けられないじゃない、
ダメよ~ダメダメお家が一番、キャンプと田舎は二番よ、
コロナが怖い、人混みが怖い。
アベノマスクはまだかしら?
って譲らないの。
この繰り返し」
「うっう~ん……」
あっくんはなんとか、あやかちゃんの悩みを解決してあげたい様子。
「そうだ、またうちに来ちゃいなよ!
ジロチョウもあやかちゃんに会いたがっていたし。
パパとママもあやかちゃんとお絵描きしたいって言ってたよ」
次の日から、
あやかちゃんはあっくんの家にしばらくお邪魔することになりました。
困ったのはあやかちゃんのパパとママです。
あやかちゃんの部屋の机の上にあった誓約書を見つけてしまいました。
そこには
「わたしはパパとママの喧嘩がいやなので、あっくん家にいそうろうさせてもらうことにしました。
わたしのことは、もう一人立ちしたんだと思って、どうか探さないでください」
あやかちゃん、犬のジロチョウと思う存分遊んだ後は、
あっくん家族とゲームしたり、ヨガしたり、楽しい時間を過ごしました。
夕方あっくんの家に段ボールを持ったあやかちゃんのパパとママが訪れました。
「はは~ん、早速私を連れ戻しに来たな」
あやかちゃんはそっと、物陰からうかがっていました。
仕方ない、帰ってあげようかな、と思っていたら、
あやかちゃんのパパとママ、ペコペコ頭を下げ、段ボ-ルを置いてそそくさと帰ってしまいました。
「えええぇぇ~!何よ。帰っちゃうってどういうこと~?」
段ボールにはあやかちゃんの服や写真、ランドセル、母子手帳、へその緒、
などあやかちゃんの全てが詰まっていました。
同封の手紙にはこう書いてありました。
「あやかへ
あやかの気持ち、よく分かった。
今まで分かってやれなくてごめんね。
パパとママはいつもあやかのことを一番に考えて、その結果喧嘩していました。
でも、あやかが一人立ちしたのならもう大丈夫だよね。
パパとママは夫婦二人の人生を歩みます。
これからはあっくんの家に居候して己の人生を力強く生きてください。
一人立ちしたあやかなら大丈夫。
頑張れあやか、行け行けあやか!
遠くから応援してるぞ!」
あやかちゃん、無言で床に突っ伏してしまいました。
8歳の夏、涙って海水よりもしょっぱいな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。