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【開催記録】 第29回 アート対話カフェ 2022/9/17(土)

今回のワークショップは「対話型"観察"によってアート作品を観る」というテーマで開催され、計14名の参加者同士で対話が行われました。

今回の目的

  • アート作品を分析的に観察し・考える

  • 全体像・ストーリーが「分かった!」という感動を体験してもらう

というのが今回のワークショップの目的の一つです。
また、このワークショップでは"VTSの2つの質問"に重点が置かれます。

  1. What's going on (何が起きている?)

  2. What do you see that makes you say that?(そう言う理由は何だと思う?)

この2つを常にファシリテーターが 参加者の皆さんに繰り返し問いかけることで、考え方の癖が自然と身に付きます。

VTSの優れている点はここにあります。

1枚目の絵

1枚目の絵では、ポーランド人作家  Igor Morskiの作品を使用しました。
(作者名や作品名などは、参加者に明かしていません。)

Igor Morski「家族のゆくえ」

皆さんから出た意見を一部記載します。

  • 男性と女性が一つの船に乗って、同じ杖を持っている。夫婦関係を表している絵ではないか。

  • この絵に描かれているのは夫婦。反対方向を向いており、女性のさっぱりした表情と、男性の険しい表情から、2人がうまく行っていないので?と思った。

  • 3人の家族の関係を表しているのでは?父親は出張?現場にはいないが、お父さんが下から支えていることを伝えているのではないか。

  • 女性はオールを漕ぐと左に進むが、男性は反対に進む。力が反発して硬直し、船は進まない。女性的/男性的な考えが拮抗して、うまく行っていないのではないか。

  • 子供の不安げな顔をしている。お母さんが助け出して、家に帰っているのではないか。お父さんは家で待っていることを表している気がする。

  • 2人の夫婦が離婚して、今から違う船で出発するところではないか。

  • 女の子に注目してみると、こちらを向いている。両親が離婚するのを不本意に思い、こちらに訴えているのではないか。


1枚目の反転

次に、1枚目の絵を反対にして、改めて参加者の皆さんに意見を発言してもらいます。

Igor Morski「家族のゆくえ」を反転させたもの


  • 男性は、筋肉精いっぱい使って漕いでいるが、女性はそんなに力が入っていない。男性からは強い決意を感じる。

  • それぞれの正面に強い光を感じるが、当たっている方向が違う。未来が違うことを暗示しているのでは。

  • 主役が反転したことで、女性の方は諦めて男性に任せている印象。

  • ボートのヘリが反転して空飛ぶ絨毯に見えてきた。男性の目線が斜め上側を向いているように見え、夢を追うために頑張っていることを伝えているのではないか。

一枚目と一枚目を反転させたを比較すると、みなさんの着目する部分を違い、意見や考え方が変わった方もいたようでした。


2枚目

2枚目の絵は、「朝を描いた絵」という情報を事前に参加者の皆さんに伝え、そこから対話をおこなっていきます。

ウィリアム ホガース 「当世風結婚」

こちらも絵に描かれた事実(根拠)から、それぞれ意見を展開して発言していただきました。

  • 夜通しやった劇ではないか。右の2人が演技をした人達で、右側がマネージャー。奥の部屋はも散らかっているので、ここは舞台の上かもしれない。

  • 音楽界のパーティではないか。左の方にバイオリンと指揮棒が落ちている。

  • 女性が仮面を持っている?歌ったり踊ったり、仮面舞踏会のようなものが開かれたのではないか。

  • 女性が今も踊っている様に見えた。(夜通し踊った後に)吹っ切れて踊っているのではないか。


以上、2枚目の絵をモチーフに、皆さんの様々な視点から意見交換がされました。
最後には、ファシリテーターから評論家などの評論分を一部紹介されました。
自然と皆さんが出した意見と同じようなことが書かれていることがわかりました。

作者名や作品名を覚える必要はありません。とく作品を観察することで、皆さんも評論家と同じように自分の意見を伝えることができます。

最後に

誰でも子供の頃に、アリの行列をじっくり見たことがあるかと思います。
その時「どうしてぶつからないの?」「どこに向かっているの?」と様々な好奇心を持っていたのではないでしょうか。その好奇心から「観察」が生まれます。

アートに関する知識や情報は不要です。
皆さんもアート対話カフェで、「観察する力」と「考える力」を育ててはみませんか。
参加者の皆さん、またのご参加お待ちしております。