余白と対話がもたらすものに気付かせてくれた場所
所属していた学生団体の活動が2月末に終わり、大学の長期休暇でもある3月の1か月間が丸ごと余白となった。
その期間「おてつたび」という制度を利用して、瀬戸内海に浮かぶ「倉橋島」で旅をしながら働くという体験をすることになった。
仕事内容は、「ゲストハウスで何かを考え・提案し・実行する女将」というものであり、私は主にSNSを使ってこの島やゲストハウスの魅力を多くの人に発信し続けた。
今回は仕事のことではなく、ここで1か月滞在して得た自分の考えと感覚に焦点を当てて綴っていこうと思う。
余白を作るということ
私は普段、日常でも旅先でも忙しない日々を送っている。予定がなければ何かしら予定を詰め込む。
その理由は、どうしようもないくらいの不安症だから。何かしていないと常に不安になる。将来のこと、自分自身のこと、周囲からの目線など。自分でも何に不安を感じているのかわからないけれども、とりあえずその不安を払拭するために動く。ここに来たのも、そんな不安を生む余白を作らず動き続けていたかったからであった。
ただ、ここに来て最初にオーナーのあっちゃんに言われたのは、「まずはこの島で楽しく遊んで、余白を作っていてほしい」だった。
正直無理だと思った。不安を生まないようにここに来たのに、もっと不安が生まれてしまうんじゃないかと。
一方で、予定を詰め込みすぎて疲れてしまっている自分もいたので、なぜかこれは神様があっちゃんを介して私に余白を作るように伝えてくれたように感じたので素直に実践してみることにした。
余白の実践
瀬戸内ライフ2日目
意識的に“何もしない”時間を作ってみた。
ぼーっと瀬戸内の海沿いを歩いたり、コタツでぬくぬくとみかんを食べたり。
でもやっぱり最初は不安が強かった。
このままでいいのか、自分は何をしているんだ、という感情が押し寄せてきた。
でも、それでよかった。
いや、それがよかったのだった。
それに気づいたのは1週間以上過ぎてからだったと思う。
余白によってゆとりが生まれる。そのゆとりが新たな発想を生み出してくれるのを確かに感じた。
対話が生み出すもの
人と話すことに関しても、昔から苦手意識がある。
会話が繋がらなくてだいぶ悩んでいた。話し方教室に通おうと思っていたほどに。そのコンプレックスから人と関わるのが苦手だった。
東京の大学生をしていると、たくさんの人と話さざるを得ない状況になり、辛かった。だからあまりそんなことを気にせず過ごせそうな瀬戸内海の島に来てみた。
だけど、滞在先のゲストハウスは対話がコンセプトだった。
さらに、島では住民同士の関わりがとても強いみたいだ。町まるごとが「ダイアログビレッジ(対話 村)」に設定されているだけあって、近所のお好み焼き屋さんでも道端でも、住民のおばちゃん達との対話が始まってしまう。
「私、人とあんまりうまく話せないんだけどな~」と不安になりながら夕食の時間になった。対話は食卓を囲みながら自然と始まっていった。自己紹介から広がる趣味や学んでいること、将来のことなどを共有した。
対話っておもしろい
対話、全然苦じゃなかった。むしろすごく楽しいし、たくさんの学びが得られる。
ゲストさんもスタッフもここに集まってくる近隣住民も、みんな私にとっては人生の先輩で、私が今持っている悩みを乗り越えてきている方々ばかりだった。なぜかここにいる人たちになら、安心して私の悩みを共有できた。
毎日の対話を通じて自分という存在の輪郭が溶けては固まるのを繰り返し、今まで自分も知らなかった自分が他者から引き出される感覚を覚えた。
そしていろんなアドバイスをもらって生きる知恵を得た。
1人旅だけど孤独じゃない
対話とは悩み相談だけではない。
その日に行った場所や出来事を聞いて実際次の日に連れて行ってもらったり、体験しに行ったりして、島という限られた範囲の中でもいろんな楽しみを発見できた。実際にその経験が私の最終成果として作った2泊3日モデルプランにも活かされている。(https://www.instagram.com/setouchilife0214?igsh=MXN6OW93NmxiZnZsNQ%3D%3D&utm_source=qr ⇦瀬戸内ライフのインスタグラムアカウント)
1人旅が寂しくなったら、誰かと誘いあって一緒に旅をすることもできるし、1人の時間が欲しくなったら1人で過ごしたり旅したりもできる。
そうやって旅に彩りを与えてくれるのが、ホテルなどの宿泊施設とは違った「ゲストハウス」の魅力であり、それに対話が加わった「瀬戸内ライフ」は私の人生にまでも彩りを与えてくれる場所だった。
瀬戸内ライフありがとう
ここでの時間の流れはおかしい。早すぎる。
あっという間に一日が終わり、一週間が終わり、一か月が終わった。それほど、毎日学びが大きく充実していたということだ。
ワクワクと不安を持ちながらここに来たのが昨日のことのように感じられる。
素敵なゲストさんや仲間との出会いと別れを何度も繰り返した。
そして私もこのゲストハウスと仲間に別れを告げる時がとうとうやってきてしまった。
一か月という自分史上最も長い旅、初めての島暮らし。はじめは不安でいっぱいだったけれど、素敵な人との出会いや対話に恵まれて、たくさん救われた。
不安要素であり苦手意識を持っていた余白と対話という二つのことが、実は新たな発想を得られるものであることを学んだ。
それに気づかせてくれたのは、このゲストハウスが情緒あふれる島の古民家の中にあり、人との関わりが生まれ、対話が自然に発生するという環境に創られているからであると思う。
この少し特殊な環境にいると、対話や余白に限らず誰もがそれぞれに違った発見が得られると思う。
瀬戸内を旅したいと思っている人はもちろんだが、自分の人生を見つめ直したいと考えていたり、いろんな生き方をしている人と会って対話してみたいという人にはぜひここを訪れてほしい。
一か月滞在して大切なことに気付かせてくれた「瀬戸内ライフ」にとっても感謝しています!ここはもう、私の第二の故郷です。
また帰ってきます!