「2002年ソウルスタイル」を見て
これはある実験的試みだ。国立民俗学博物館がソウルのある一家にある全てのモノを調査し分析、そして展示するという生活そのもの自体を研究対象とするものだ。格別、その一家に大統領がいるとか、W杯の選手がいるとかでもなく、至って普通の生活をしている一家だ。そこにある毎日使うモノから、捨ててもいいゴミ屑まで一つ一つ調査していくと、例えばどこにでもあるような1本の鉛筆だったとしてもその人にとっては誕生日に友達から貰った鉛筆だとか、冷蔵庫ひとつとっても中のもを調べてみるとキムチが13パックも入っていたりだとか、日本と韓国とではこんなにも中のモノは違うのかなどと驚きの発見が沢山ある。
次の試みとして一家の家のモノ全てを博物館に寄贈、そして展示することになった。一家は毎日使うモノから思い出の品、家具、家電、服、下着までを全てを手放すことになる。その結果、今まであのモノがあったからこそ自分たらしめていたモノを通しての自分自信のアイデンティティ、そして心地のよさが失われ、家族関係までもが崩れるといった結果となった。
この結果からも分かる通り、現代人はモノを通して自分自身、或いは他者を理解する。逆にモノがなくなると全てのモノがなくなったという自己喪失に陥る傾向にある。これはモノに溢れる消費社会に生きる我々の特徴なのではないかと思う。
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