【日常写真日記#06】峠道
今日は仕事の合間を縫って、山奥の峠道へと足を運んだ。雨が上がったばかりの山道は、しっとりと湿気を帯びた空気が漂い、肌にまとわりつくような感覚があった。車のエンジンを切ると、周囲には人の声も車の音もなく、ただ木々の葉を揺らす風の音だけが聞こえてくる。目の前には深い緑の世界が広がり、雨に濡れた葉がキラキラと光を反射していた。
山道を歩き始めると、空気が濃厚で、肺いっぱいに自然の香りが広がっていく。雨上がりの森特有の、土の香りや草の匂いが鼻腔を刺激し、どこか懐かしい気持ちになった。この峠道は、急なカーブが多く、道幅も狭いため、車での移動には注意が必要だが、その分、自然と近づける時間が長く感じられる。雨が作り出した水たまりには、空を映した青と木々の緑が揺れ、風に吹かれて水面が波打つさまはまるで一幅の絵画のようだった。
「雨上がり 緑に染まる 峠道」
短い言葉に込められたこの情景は、自然の変化を全身で感じた私の心そのものだ。普段、忙しさに追われていると、こうした小さな変化に気づくことすら難しいが、今日はその一瞬一瞬がとても貴重に思えた。目を閉じて深呼吸をすると、雨上がりの湿った空気が肺の奥にまで届き、まるで山そのものが私に語りかけてくるような感覚に包まれた。
峠道をさらに歩き続けると、ふと見下ろした先に、曲がりくねった道が延々と続いているのが見えた。山肌に寄り添うように走るその道は、まるで自然の一部として存在しているかのようで、人工物でありながらどこか調和を感じさせる。ここから先へ進んだら、どんな景色が待っているのだろうと考えると、自然に対する好奇心がかき立てられる。
山道を歩く中で、木々の隙間から覗く青空と、雲の切れ間から差し込む陽の光が、まるで絵画の一部のように見える瞬間があった。雨上がりの空気は独特で、冷たさと湿気が混じり合い、肌にひんやりとした感触を残す。それがまた心地よくて、自然の中にいる自分を強く実感するひとときだった。
山の中に立つと、目の前に広がる風景が時間を忘れさせてくれる。都市では味わえないこの静けさは、心の奥底に染み渡り、いつの間にか日々の忙しさや喧騒を忘れさせてくれる。こんな場所で過ごす時間は、私にとっては特別であり、リフレッシュのために欠かせない瞬間だ。
普段はただの移動手段でしかない峠道も、こうしてゆっくり歩くことでその魅力に気づくことができる。雨に濡れたアスファルトから立ち上る蒸気が、まるで山全体が息をしているように見え、その中を歩く自分が自然の一部になったかのような錯覚を覚える。山の息吹に耳を澄ませると、木々のささやきや、葉が擦れる音、そして遠くで鳥が鳴く声が聞こえ、自然の持つ音楽が全身に響き渡った。
自然の中で感じる一瞬の美しさや心の安らぎ。それは、私たちが日常を生きる上で忘れがちなことを思い出させてくれる。こうした場所に身を置くことで、日々の中で溜まった疲れが洗い流され、心が浄化されるような気がする。今日は峠道に立ち寄ることで、そんな時間を少しだけ取り戻すことができたように感じる。
帰り道、再び車を走らせながら、目の前に広がる山の景色と、峠道の曲がりくねったラインを見つめた。自然が作り出す一瞬の美しさに心が満たされ、こうした風景に出会えたことに感謝しながら、また日常へと戻っていく。自然の中で過ごしたこの時間は、私にとって明日への活力となるに違いない。
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