選手やジャッジ以外でのディベートキャリア~運営スタッフでディベート力をプロジェクトに活用~

AOAでは、選手のみならず様々な形でディベートに関わる人に光を当て、その経験で獲得できるスキルや面白さに注目していきたいと思います。

今回はディベート運営のプロ集団として様々な試みを続けているROOM(CoDA関東学生事務局)の舘内美幸さんからご寄稿いただきました。舘内さんは、選手とは違う形でディベートに関わることを選んだことで、見えてきたものがあるといいます。運営はある意味、ディベートで培った能力を活用する場所でもある。選手としては、ディベートはもういいかなと思った方でも、新しいキャリアの方向があるのでは。ぜひ、ご一読ください。

ROOMのWEBサイトは以下になります。
http://coda-room.wixsite.com/room

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1. はじめに


私は中学高校と6年間ディベート部に所属し、大学からはCoDAの大会の実行委員やNADEの大会スタッフなど、運営側で活動しています。今回は、大学生になってからのディベートへの関わり方と、ディベートに関わる中で得た学びが他の活動に生かされていると感じた点について、お話ししたいと思います。


2. 中学・高校での私の活動


本題に入る前に、私のバックグラウンドについて少し説明させてください。私は中学に入学してからすぐ、ディベート部に入部しました。ただ、私の母校は全国常連校で部員も多く、ディベート甲子園の選手になるための選抜戦があり、そこで選ばれなければ選手として出場することができませんでした。私は高校卒業まで6年間部活に所属していましたが、ディベート甲子園に選手として壇上に立つことは1度もありませんでした。

しかし、ディベート部の中では比較的大人数である母校の部活には、選手を裏でサポートしていく裏方のポジションがありました。そこでの活動ではリーダーを任されることも数回あり、いま思えばこの経験から裏で支えていくことのやり甲斐や楽しさを知ったように思います。


3. 大学に入ってからの私の活動


 大学に入ってからは、そもそもディベートに関わるかどうかという段階から迷っていたのですが、結局なんらかの形で関わりたいというところで考えが落ち着きました。そしてちょうど同じくらいの時期に、様々な大会の運営に携わっているとあるジャッジの方に「もしNADEのスタッフに興味あれば来てみないか」と声をかけていただき、そのときから「運営スタッフとしてディベートに関わっていこうかな」と思い始めました。そのジャッジの方は、当時の私が運営に興味を持つきっかけを下さっただけでなく、私が運営について何も分からない頃から現在に至るまで面倒をみていただいており、本当に感謝しています。

以下、私が大学に入ってから経験したディベートの運営側の主な活動です。
・若芽杯(大学からディベートを始めた人向けの小さな大会。2017年5月頃)
・新米杯(初心者向けセミナーと試合。2017年10月)
・CoDA主催 全日本大学ディベート選手権大会運営委員(大学1年〜3年)
・資料固定大会(2018/07〜2019年9月現在に至るまで4回開催)
※大会運営以外の活動として、大会運営を効率化するためにマニュアルを作成したり、既存のマニュアルを改善したりする取り組みもしました。ほかにも、NADE主催の関東大会/全国大会のスタッフにも、継続的に参加しています。


4. ディベート以外の活動について


ここからは、自分のディベート以外の活動・その活動にディベート運営での経験がどう生きたかについて話していきます。

私のディベート以外の活動としては、主に2点挙げられます。それぞれについて、説明していきます。


5. ディベート運営で身につけた能力の活用事例〜ゼミ運営

1点目に、大学でのゼミの活動です。私は公共政策研究のゼミに所属しています。約8か月間の準備期間を経て今年5月ごろに行ったプレゼンでは、各グループで選択した1つの市町村の地方創生プランについて発表を行いました。準備の中で、実際にその市町村でフィールドワークをしたり、現地でインタビューをしたりすることもありました。
この活動の中でも、ディベートでの自身の活動が生きているなと思ったことが多々あります。

まず、話し合いの中で根拠に基づく論理的な発言ができることが増えたという点です。あまり自覚はなかったのですが、同じグループの仲間に何度か褒められました。また、時折ゼミの先生にもお褒めの言葉をいただくことがありました。ディベートという競技を経験したことで、論理的に物事を捉え、発信することができるようになったのだと思います(そういう競技なので、当たり前といえば当たり前ですが…)。

次に、話し合いの進め方が上手くなったという点です。私は話し合いをリードしていたわけではないのですが、話し合い全体の空気感を作ることを意識して発言をしていました。例えば、まとまりがなく終わりが見えないときには自分の意見を述べながらもこれまでの内容をまとめることを意識して発言し、意見があまり出ず前に進まないときには「なんでもいいから新しいことを言おう!」と意識して発言していました。この意識がグループに具体的にどのような効果を与えたかは正直分からないですが、グループの仲間には、1つ目に話した要素と合わせて「話し合いの進め方うまいね!」とコメントをもらったので、少しは何か良い影響を与えられていたのではないかと思います。
この点を意識できるようになったのは、ディベートの運営の経験が大きいと思っています。大会自体の運営というよりは、前段階でのミーティングの経験といった方が正しいかもしれません。例えば、新しい企画をやるときには、闇雲に話し合いを始めても恐らく何も決められずに終わります。しかし、今日話し合うことは何で、どこまで決まればゴールなのかを決めれば、先が見えないながらもどういったステップを踏めばいいのかを意識することができます。今の例はゼミの話とは少し違った話にはなるかもしれませんが、このように話し合いの基礎的な部分をディベートの運営に関わりながら身をもって学び、他の活動にも違う形で生かせていたのかもしれません。

また、スケジュール管理という点でも、ディベートでの運営経験が生きたと感じています。ゼミの活動の中では、フィールドワークやインタビューなどの課外活動や、最終プレゼンの前段階として中間プレゼンなど様々な活動がありました。その際には、大会運営の際と同様に、やらなければならないこととその締め切りを意識して動くことができたように思います。


6. ディベート選手で身につけた活用事例〜アルバイト


2点目に、アルバイトです。私は、アパレル関係のアルバイトをしています。このアルバイトをしてる人は、ディベートに携わる人の中では比較的珍しい気がしたので、ディベートでの学びを活かせた部分について書きたいと思います。

ショップ店員として働く上での基本的な仕事は接客であると思いますが、この時にもディベートでの学びが生きているなと実感しています。お店には様々な方が来店され、質問内容も多岐に渡ります。例えば、メインの客層である30-40代の女性の方であれば、個人的な体感としてはお手入れ方法について聞かれる方が最も多いです。その際にも理由に基づきできるだけ手短に説明することを意識できるのは、ディベートで培った力が多少なりともいかせているからではないかと思っています。

例えば、以下のような形です。

お客様「このニットって家で洗っても大丈夫?」
自分「そうですね!タグのお洗濯表示にはこのように記載されていますので(実際に見せながら)、お洒落着洗いや手洗いでしたら家でお手入れができますよ!」
お客様「すぐよれてしまったりするのかしら…」
自分「使用されている素材が主にポリエステルになるので、比較的型崩れはしづらいと思いますよ!」

個人的に感じることとして、ショップ店員は「お洋服の専門家」と認識されていることが多いような気がしています。自分はあくまでアルバイトではありますが、その役割を達成するためにも最低限必要な知識を取り入れ、聞かれたことにうまく理由づけをして伝えられるようにするだけでも、お客様の信頼感は違ってくるのかなと思い、実践しています。

ここまで書いてなんとなくわかるかと思いますが、他人を相手にする活動(いわば大半の活動)では、基本的にディベートでの学びが生かせるのではないかと感じています。


7. ディベートの運営活動の面白さ(他の活動と比較して)

ここまで、自分のディベートの運営活動内容およびそれが生かされた事例に関してお話してきましたが、ここで少し、「運営のどの点が面白いと思うか」について話していきたいと思います。

ディベートの大会運営が大学時代における他の活動と最も違う点は、「多種多様なバックグラウンドをもつ社会人の方々と一緒に活動できる」点であると私は思います。そして、それが面白い点であると思っています。

大会運営に関わる大人(というかディベートに関わる大人)にはいろんな人がいます。辿ってきたキャリアや年齢など、本当に様々です。個人的には、そのようなコミュニティはレアだと思います。そして、学生時代からそのような方々と関われる場があることは、貴重であると感じています。

学生同士の活動では気づけなかったことに気づけたり、社会人の視点という自分にはないところから意見をもらえたりするので、自分の考え方・視野を広げられてすごく楽しいです。また、単純に自分の知らないことをたくさん教えてくれるので面白いというのもあります。時々話についていけない時もありますが、そういうときに「分かりません!」と言っても快く受け入れ、教えてくださる雰囲気があるのも非常に居心地が良いです。

大会運営の活動自体にも、もちろん様々な魅力があります。例えば、「やりたい!」と言えば自分のやりたいことをやることができる(しかも応援してもらえる)ところ、正解がわからない状態で進んでいくワクワク感があるところ、社会に出てから生かせそうなスキルが沢山身につけられるところなどです。

しかしそれ以上に、上記で述べたような「人との繋がり・関わり」という点が、ディベートの大会運営の面白さなのではないかな、と思っています。人の感じ方はそれぞれなので、あくまでも個人の意見として捉えていただければと思います。


8.  まとめ


以上、私がディベートとどのように関わってきたか、そしてそれが他の活動にどのように生きているかについて述べました。

この内容を通して私が伝えたいメッセージとしては、2点あります。
1点目として、冒頭でも書いた通り「ディベートの活動は他の活動にも生かすことができる」という点です。これは様々な方が発信されているようにも思いますが、私の具体的な体験から感じたことを伝えることで、よりリアルに伝われば良いなと思っています。
2点目として、「ディベートに関わりたいならば、いつからでもどのような形でもディベートに関わってほしい」という点です。私があえて自分の中高時代の話を入れた理由は、このメッセージを伝えたかったからです。オンシーズンに選手として出られず、オフシーズンもあまり目立った成績を残せなかった私個人のディベーターとしての経歴は輝かしいものではないかもしれません。それでも、大会運営という形で関わり続けることを選択し、たくさんの人と出会い、学びを得ることができました。だからタイミングとか過去とか気にせずに、「やりたい!」と思うなら積極的にディベートに関わってほしいなと個人的には思います。

大学生のわたしが書けることはこのくらいですが、社会人になってからの方が、ディベート(特に運営)の活動が役に立ったと感じている方が多くいる気がするので、もし興味ある方は周りの大人にも色々聞いてみてください!

自由気ままに書いた文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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舘内さん、本当にありがとうございました。実はディベート大会を運営している社会人の方って、よくよく聞くと名のある会社で働いていたり、弁護士、医者、主婦、学者、起業家などなど、いろんな経験の人たちがいます。そんな人たちから、様々な事を教えてもらい、一緒にプロジェクトを回す経験ができるなんて、お金を払っても買える環境ではないので、すごい訓練ですね!

ディベートは選手やジャッジだけではなく、多様なかかわり方があり、それは選手やジャッジと同じくらい、もしくはそれ以上に価値あることだと分かりました。皆さんも、ディベートで培った論理的思考力をプロジェクトに活かしてみてください!


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