【僕たちのディベート甲子園2018】ー地区予選で敗退し、甲子園に出場できなかったOBがジャッジとして甲子園に出場し続けて得られたもの
ディベートメディアArt&Argumentでは、多様なディベートに関する記事を取り上げていきます。今回は先日閉幕したディベート甲子園に関する寄稿をいただきましたので掲載します。なお、ジャッジとして参加されているという事もあり、匿名でのご投稿になります。運営、ジャッジとして全国の中枢で活躍されているジャッジのおひとりです。中高生が終わっても、あなた自身が望めば立場を変えてディベート甲子園は続いていく。そんなお話です。
ディベート甲子園2018が終わった時に感じたこと
先日、無事に第23回ディベート甲子園が閉幕しました。
この記事を書いている私は一ジャッジとして大会に参加しました。
日頃報道にあるような暑さに負けないほど、選手の熱い想いが詰まった試合をみさせていただき非常に満足な三日間を過ごすことができました。
参加された皆様は大変お疲れ様でした。ありがとうございました。
今回、参加した中で感じたことを、ここで記事というかたちでまとめさせていただければと思います。
1:熱いのは選手だけではない~ジャッジもジャッジとしてのプレパをしている~
論題発表がされた2月末から約半年間、選手はディベート甲子園に向けて膨大な資料に向き合い、それを限られたスピーチ時間にまとめます。たくさんの練習試合を行い、試行錯誤しながら約半年間の自分達の成果をディベート甲子園でぶつけます。
その想いを受けとめ、判断をし、講評という形のスピーチで選手の熱い想いに応えるのがジャッジです。
ジャッジの多くがディベート甲子園のOB、また英語などのなにかしらの形でディベートを自身も体験している方です。ですので、その選手の努力を理解しています。
ジャッジもその想いにこたえるために、選手からは見えにくい様々な隠れた(?)努力をしています。
例えば、選手同様に、自身のジャッジの講評判定スピーチを録音して研鑽する方、自身も選手として大会に出る方(もちろん良いジャッジになることだけが目的ではないとは思いますが)、ベテランのジャッジの講評を参考にするために聞きに行く方、その形は様々です。
そういった方々の姿勢は非常に頭が下がります。
そして、今回のディベート甲子園では、象徴的なエピソードが一つありました。
ディベート甲子園の試合が終わった夜、仲間で夕食を取った後、とある尊敬するいつも仲良くしていただいている先輩ジャッジの方とお茶をする機会がありました。
近くの某格安イタリアンに入り、そこで話をしたの自身の講評についてでした。翌日、大きな試合で主審を務めるそうで、どういったことを話せば選手の方がより納得してもらえるか検討しようと先輩ジャッジの方のさらに先輩にあたるベテランジャッジのアドバイスを元に二人で検討をしました。
片方は負けになってしまう試合で、選手に何を伝えるか。
多くの観客がいる試合でもあるなかで、どう試合、ディベートを解説するか。
もちろん、試合の内容はわかりません。しかし、その試合に挑む選手達を想像することはできます。
最後には単語レベルで「こういった言葉がいいのでは?」などという話や、実際に講評をスピーチを繰り返ししていました。
そして、気づけば約2時間も経っていました。そして試合をする翌日も30分程検討をしました。そのジャッジの方は昨日帰ってから、過去のベテランジャッジの講評をさらに聞き返したりしていたそうです。その姿勢は選手に負けないほど熱いものでしたし、またそういった姿勢こそが大きな試合をジャッジをするのに大切な姿勢と感じました。
熱い選手達、それに応えようとするジャッジがいることで素晴らしいディベート甲子園が作られています。
2:ディベート甲子園の絆
かくいう私もディベート甲子園を目指す選手の一人で、今年の論題と同じ「一院制」論題で最後のディベート甲子園の年を迎えていました。
少し昔話をさせてください。
最後のディベート甲子園の年、その前の年にディベートを初めて間もないこともあり、非常に苦労をしていました。そのなか、縁がありジャッジをしている外部のコーチの方に議論を見ていただく機会がありました。
私は第二反駁を担当しており、何を話したらいいかよくわからない状況から、非常に丁寧に指導をしていただき、徐々にコツのようなものを掴むことができました。
そして、その指導の成果は素晴らしく、昨年は地区大会で一勝できたかも定かではない状況から、全国大会に出場をかけた試合まで進むことができました。
結果は惜しくも敗れてしまい、全国大会に進むことはできませんでしたが、OBでもないにも関わらず、立論を添削していただいたり、スピーチの練習に付き合ってくださったり、そのコーチの方と過ごした約半年間は9年前の出来事ですが今でも自分の中の財産になったと感じています。
成長を感じたこともそうですが、ディベートってもっと奥が深い、まだ楽しめることがあるんじゃないかと感じました。そういった指導から、大学に入っも私はディベートに選手、スタッフ、ジャッジなどディベートに関わり続けました。
もしこの記事を読んでいる選手の方がいらっしゃいましたら、戦績に関わらず今回のディベート甲子園がどういった財産になったのか少しでも良いので振り替えてほしいと思います。半年前の自分にはないものがあるはずです。
それは自身のディベートの技術かもしれません、論題についての知識かもしれません、チームメイト、対戦相手、お世話になった方との絆や縁かもしれません。
ぜひそれを大切にして、次に挑んでほしいと思います。
またもし次のディベート甲子園に出ることができない方は、ディベート甲子園に出場する以外にも大学では色々な形でディベートに関わることができることを知ってほしいと思います。大学生になっても大学生が出場できるディベート大会はありますし、またディベート甲子園に選手ではなく、スタッフやジャッジとして関わることも可能です。
私も半年間の甲子園を経て多くのものを得ることができました。
実は、過去の私がお世話になった外部コーチの方は、今年の甲子園で講評を一緒に考えた先輩ジャッジの方です。気付けば9年間の関わりになります。
過去に議論について話し合っていた方と、9年後にはジャッジの講評について話し合う。そんな不思議な縁を感じるディベート甲子園でした。
編集後記
全国大会に出場できなくとも、大学生から真摯にディベートに取り組んで今や一目置かれるジャッジになった方の寄稿でした。9年前にはじめてディベートを教えてくれたコーチに、今度は講評についてアドバイスをしたという経験。ディベート甲子園は年齢を超えた絆を作っているのだと改めて実感しました。まるで小説のような、またはショートフィルムを見ているかのような爽やかな気持ちになる寄稿、本当にありがとうございました!今後も、AOAはディベート総合メディアとして、様々な論考を発表していく予定です!
今年のディベート甲子園の準決勝、決勝の様子は下記のURLからご覧になる事ができます。
https://freshlive.tv/dkoshien
なお、はじめてディベートを見るという方は、事前に下記の記事を読んでからご覧になると更に楽しむことができます。
ディベート観戦のススメ~試合に出ずにディベート甲子園を楽しむには~
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