オンラインでアクティブラーニングを実践する方法

コロナウイルスの影響で、ディベート教育の実践はオンライン化が急速に進められています。ディベートはいわゆるアクティブラーニングという形式になりますが、オンラインとリアルではアクティブラーニングの実践にも違いが出てきそうです。

そこで、AOAとしては、オンライン授業でのディベート実践報告をお届けします。AOAの管理人の1人である、私こと全日本ディベート連盟専務理事の久保健治による授業実践です。

なお、本記事は個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

====

はじめに

コロナウィルスの影響で、大学における授業のほとんどがオンライン化されています。私は大学の講義でディベートを教えていますが、その経験からアクティブラーニングの授業を実践する場合には、今までとは異なる工夫が必要だと思いました。過去にオンラインセミナーの講師などで実践経験はありますが、有料セミナーと大学の講義では参加者の属性が大きく違いますし、セミナーに比べれば長期間となります。

そういった事から、中にはオンラインではディベートは教えられないとして、今回は授業の開講を見送ったという先生もいるかもしれません。ですが結論から言えば、ディベートはオンラインアクティブラーニングの中では一番向いているんじゃないかとすら思っています。ぜひ、恐れることなくオンラインでディベートの実践をしてもらいたいと思っています。

そこで今回は少しでもオンラインでディベートを教えるための手助けになればと思い、オンラインでディベートをしているための方法ということについて私の見解を述べたいという風に思います。まず、はじめに前提条件となるアクティブラーニング全般についての見解を述べたいと思います

オンラインでアクティブラーニングを行う難しさ

オンラインでアクティブラーニングの授業を実践してみて、リアルとは異なるオンライン特有の難しさを感じました。その中でも特徴的なものとして、下記3点があります。
**
・反応がない**
いくつかの大学では、データ容量の問題から双方向性の授業は控えてくれと言われているのではないでしょうか。ただ、アクティブラーニングの場合には双方向性となるでしょう。ただ、実施するにしてもプライバシーの問題とも含めて顔を出さない形で授業を行ったり、学生も発言をしない時は当然ながら音声をミュートにします。教員側からすると、何を話しても反応がないのは、結構きついものだと思っています(ミュートにするなというわけではないです。念のため、ミュートにしないで色々とヤバイことが起きている事例はWEB上で多数報告されてますよね笑)。

実際の授業では、反応がなかったとしても、ペンの動きや表情、また全体の雰囲気などから、案外情報を拾えていたんだなと今回実感しました。表情も見えなければ声もない息遣いさえ聞こえないという中で授業するのはヒントがないので、大変です。

・グループワークを俯瞰できない
リアルの授業では、四つや五つのグループに分けて話し合いなどをしてもらう際には、全体を俯瞰するだけでも、あのグループはあまり話していない、このグループは積極的に話している。などと判断することができます。それを基にして、活発ではないグループには助け舟を出しに行ったり、盛り上がっているグループはそのままにしたりなど、適切な行動が取りやすいわけです。ただ、オンラインでは、いくつかのグループに分けてしまうと同時に音声を聞くことができません。そのため、前述のような優先判断というのができません。これも実践をする上では、なかなかわかりにくいところです。

・オンラインコミュニケーションは空気を読みにくい
オンラインでのコミュニケーションはリアルに比べて非常に空気を読みにくいということだと思います。これは教員だけではなく、学生たちも同じ状況だというふうに考えられます。従って、オンラインのアクティブラーニングはリアル以上に、より具体的な形での指示が必要ではないかという風に個人的には思っていますその事については後で詳細を話せればと思います

オンラインならではのメリットもある

一方でオンライン授業ならではのメリットもあるという風に思います。個人的に、これはリアルになっても継続してほしいなと思うくらい良かったのは以下の2点です。

・リアルタイムで集計などができる
これは特に大人数の授業の時に効果を発揮しますが、 Google フォームなどを活用するとリアルタイムで、学生たちの意見などを集めることができます。これはリアル授業において紙で書いたものに比べたら圧倒的に楽で、便利です。別にリアルでもやればいいではないかという声もあるかと思いますが、オンライン上で行った方が Web ツールは使いやすく、学生たちもやりやすいでしょう。オンラインの方が、Web ツールを使う前提が完全に整っているというのは非常にやりやすい部分があります。とはいえ、ほとんどの学生がスマホは持っているはずなので、リアルになってもスマホと連動させていくのはありかなと思っています。

・リアルよりも質問しやすい
またズームなどの双方向性システムの場合にはチャット機能があります。もしくは Hands Up などの質問するためのWEBツールをうまく活用するとリアルの授業よりも質問がしやすいようです。実際に私の授業ではリアルの時よりも学生たちから質問が出てくるようになっています。ただ、Hands UpはZOOMを開きながら、別のブラウザで操作もしないといけないので、慣れないと学生たちも使いにくいようです。また、最近の学生の特徴として全体の前に質問をするということをに抵抗を感じる人が多いのですが、私個人としては全体の前で質問することを推奨しているので、チャット機能を選択しています。

オンラインは一方通行になりがちーオンライン上で双方向性を作る方法

メリットとデメリットについて、簡単に説明しましたが、ここからはより具体的なオンライン授業の方法について考えてみたいと思います。先ほども話したように、オンライン授業では教員が話している間、学生たちは音声をミュートにしていたり、画面に顔を出していなかったりします。そのため、教員としてはリアルの授業よりも気をつけないと、一方通行になりがちです。アクティブラーニングという状業形態ですので、可能ならここも双方向でやりたいところです。また、オンラインですので学生たちもサボろうと思えば、サボれてしまう部分もあります。

これらの課題を解決するために、私は授業の中でいくつかの項目を話した後には、必ず参加者に対して、質問をしたり、もしくは感想を聞くことを、リアルの時以上に回数多く、こまめにやるようにしています。アンケートを取ったところ、学生達からはみんなで授業をしているような感じがして、よかったという好意的な評価をもらっています。コロナの影響もあるので、学生たちも他人と話すという機会が減っているので、普段以上にこうしたコミュニケーションがプラスになっているんじゃないのかなという感じがしています。

グーグルフォームを使おう~お便りコーナーを授業内でつくる

先ほどオンラインのメリットとして挙げたリアルタイムでの集計というのを最大限に活かすやり方として、私は授業中に Google フォームを活用してその場で課題をやってもらったり、感想を聞くと言ったのも実践しています。その中で多くの人が引っかかっているようなポイント、もしくは授業をする上で非常に有益な質問などそういったものを拾い上げましてその場で解説するような形をとっています。これはラジオのパーソナリティがお便りコーナーをやっているのを参考にしているような感じです。 時間はかかりますがこれをこまめにやるようにしていると今までリアルではなかなか気づかなかったような引っかかるポイントや面白い意見なども拾い上げることができていて非常に有益だなあというふうに思っています。(なお、私は中学時代からラジオリスナーですので、この辺はパーソナリティー気分を味わえてて、実はそれなりに楽しいです。音楽コーナーはやりませんが)

チャット機能を活用して質問を受け付ける

Google フォームは、準備にそれなりに時間もかかります。なので、ちょっとしたことなどを聞きたい時には、チャット機能を活用するのが良いです。チャット機能もなかなか有利でして、リアルでは100人の声を同時に聞くというの無理なのですが、チャット機能であれば100人が一斉に書き込んでもらうことで、全体の雰囲気が見えます。この点はリアルよりもオンラインの方が優れているなという風に思います。また、チャット機能はちゃんと聞いているかどうかというのをチェックするのにも仕えます。「〇〇についてチャットに書き込んでください」と話した後の反応や動きなどを見ることも可能ですし、仮にサボっていた学生がいたとしても全員が一斉にチャットに書き込んでいるの見れば、何かが起きたということで、再度こちらにも関心を向けてくれるようになります。そういった意味でチャット機能も色々と使いようがあります。

オンラインで学生達が議論をするために必要な事

オンラインでアクティブラーニングをやる際には、アクティブラーニングの実践環境をリアルよりも気をつけなくてはいけない部分があると思っています。その中でも、私が重要だと思う点を下記に3点にまとめてみます。

自由に話せるような環境準備
学生が自由に話せるような環境を教員が整えてあげるということについては、リアルの時以上に重視するのが大切だと思います。学生たちにとっても、オンラインでのコミュニケーションは慣れている人もいれば、慣れていない人もいます。また、前述のように空気が読みにくいとなると、この人はどんな人なのかな、という様子見が多くなります。そのため、なんとなく発現が抑制されてしまうところがあります。この授業では自由に何でも話していいんだよ、話すべきなんだよということを教員側が強く強調し、共通価値観にすることで、そういった抑制効果を抑えることができるのではないかと思います。

何を話すのかを明確にする
雰囲気を読むことが難しいので、リアルよりも空気の読み合いは高度なものになってしまいます。何を話すのかと言ったことを、リアルの時以上に明確にしておく必要があります。授業という形態ですので、何を話すべきなのかということをきちっと設定すれば、学生たちはそれに向けて努力をしてくれます。そういった意味では、空気の読み合いといったような非言語コミュニケーションを磨くのには、オンラインは難しいかなと思います。一方で、教員側もいつも以上に論理的にどう話すのかとか、何について話すのかとかそういったことが明確化するきっかけにもなります。オンラインでは、曖昧な課題について話し合うのは、リアル以上に効果が見込めないのではないかと思います。

ちゃんと覗く
オンラインの場合には、いくつかの小部屋を作るなどして、学生たちをコミュニケーションさせることが多いかと思います。リアルの場合には教員が目の前にいると言う状況がありますが、オンラインの小部屋になってしまうと目の前に教員がいなくなります。そうなると学生しかいない状態での話し合いとなってしまいますので、課題へのやる気などの違いから、あまりちゃんとした話し合いにならない可能性もあります。時々小部屋の中に教員も入っていき、ちゃんと教員がいるんだ。という存在感を見せることや、話し合いの様子を短時間でもいいので聞いておくことは大切だと思います。

ディベートはオンラインに向いている

今までオンラインにおけるアクティブラーニングについて考えてみましたが、これらを総合すると個人的にはディベートはかなりオンラインに向いている形式だと思うようになりました。まず、空気の読み合いをしませんし、テーマに対しても賛成、反対といった立場ですので明確です。(テーマ(論題)の作り方については、専門的知見いりますが)。また、話す順番や時間がキッチリ決められているというのも、オンラインに向いています。詳しい実践については、また稿を改めてみようと思います。

最後に

オンライン形式におけるアクティブラーニングの実践について、私の実践について少し書いてみました。ただ、各学校や授業方針の違いなどから、様々な実践があると思います。私の方法が少しでもお役に立てれば良いと思います。ぜひ、皆さんの実践についても様々共有いただけると嬉しいです。教員側もここまでオンライン授業になるのは初めての方も多いと思います。ある意味で、学生たちと共同で新しい授業を創り上げるといった実践の場にもなりそうです。様々に工夫して、よりよい学びの場を提供できるよう、皆で知恵を出し合えればと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?