Chips|アンティーク・コレクター3級に合格しました!
一般社団法人 西洋アンティーク鑑定検定試験協会が主催するアンティーク検定の3級に合格しました!
アンティーク検定を受けた動機
直接的な動機は、アンティーク・ジュエリーを収集している友人に誘われて、ザ・美術骨董ショー 2023に行ったことです。東京プリンスホテルにて約200店もの美術・骨董店が出店し、陶磁器やガラスから刀剣、ロレックスまで、さまざまな骨董をみることができます。物によっては実際に手に取り、お店の方にお話を聞くこともできました。
そこには美術館あるようなルネ・ラリックの作品も多数あり、ちょっと頑張れば買えるのです。何百万するのかと思いきや、中古車を買うより安いのです。
同じ作品でも、美術館で鑑賞するものとしてみるのと、骨董ブースで買えるものとしてみるのとでは、評価する点、観点が違うのだなと興味深く感じました。
また、以下の理由もあり、受験に踏み切りました。
ライターは研究者ではないので、取材ものではない記事の場合、参考書籍など出典元を記載したり、研究者の方に監修していただいたりします。
学芸員資格と美術検定2級は持っているのですが、だからといって学芸員(研究者)相応の能力がある証明にはならないのです。文章に信用性が薄いと言いますか(私の勉強不足や信用性の問題かもしれない)。
じゃあ美術検定1級取ればマシになるのではと、たまに勉強しているのですが、記述式なのと検定料が高いので一発で取りたく、まだ手が出せないでいます。
ハードルの低さで言えば、西洋美術史に関する知識はありますし、この前の卒論リベンジでガラスの歴史は総ざらいしたので、そこはスルーでも大丈夫かもしれないと思いました。
結論として、そんなことなかったですね。
西洋の食器類にウェイトが置かれていたので、日本の陶磁器、アール・ヌーヴォーのガラスやガラスの技法だけではカバーしきれませんでした。
教科書・参考書籍
アンティーク・コレクター3級は、試験時間40分、マークシート方式で60問のオンライン試験です。合格の目安は、正答率が60%です。
『西洋骨董鑑定の教科書』(パイ インターナショナル)より80%出題とのこと。
私の基本的な勉強法は、本の大事なところに付箋を付けながら通しで読んで、それから付箋部分をノートにまとめる方法です。
今回は見開き単位で読みながら、ノートをつくりました。
試験の範囲は?
アンティーク検定の出題範囲には、かなり幅広いジャンルが含まれています。
「アンティーク」は収集対象の中でも特に時代を経ているものや美術的価値の高いもの、「コレクタブル」は19世紀中頃〜20世紀と比較的新しい時代につくられた収集対象を指します。アンティークと言えば、食器や家具、置物などを想像しますが、テディベアや刺繍、キルト、根付けなども出題範囲です。
チラシを発見したのが5月末、勉強期間が1ヶ月半しか取れないため、教科書の内容に注力しました。
結果発表
不正解は5問でした。問題と回答を控えていませんが、教科書外のファッション史や宝石の知識についての出題で間違えたのだと思います。
西洋美術史は、今期の大型企画展(マティス展、ガウディ展)に行っていればわかる内容でした。
アンティーク検定でわかったこと
美術とアンティークの違い
美術作品は、美術史(歴史)に刻むに値するものを評価するので、意味(何を表現しているのか)が重視されます。アンティークは、コレクターの需要が評価基準なので、作品の出来や趣味(人気のあるモチーフやデザイン)、希少性が重要です。
どちらも作品の完成度は大事ですが、美術作品は芸術性の高さ、アンティークはしっかりした造りであることが、より要求されます。
美術史に加えてアンティークの勉強もしていけば、その両方の感覚を身に付けられそうです。
日本と西洋の眼の違い
アンティーク検定の教科書では、「(日本の磁器は)成形の質が悪い」とありました。たしかに展覧会でみていても、中国の陶磁器は形が左右対称でキッチリつくられていますが、日本は少し傾いていたり歪んでいたりします。
これは技術が劣っているのではなく、美意識の違いです(この辺は勉強中なのですが、侘び寂びや素材をそのまま活かす美意識によるものです)。
また、釉薬に細かなヒビが入ることを貫入(かんにゅう)と言い、日本や中国の陶器では見どころの一つとされています。これを教科書では「釉薬の欠陥」と説明していました。
そういった人がコントロールできない/していない現象に対する意識の違いを感じました。
様式の解像度が上がった
西洋では、建築、家具、室内を飾る絵画や彫刻などに通底するものとして「様式」があります。アンティークの各ジャンルをみていくと、たとえばロココ時代には渦を巻く葉っぱの模様や貝のモチーフによる非対称な装飾が、家具にも食器にも表れます。
これまでは、絵画とともに家具や食器などが展示されても、「当時はこういうものを使っていたのだな」程度にしか思いませんでした。しかし、絵画からも、家具や食器からも「様式」を読み取れるようになると、時代の色、当時の歴史的な出来事や思想をより理解できると思います。
そういった視野の広がりと深まりが持てました。
自分は鑑賞するより愛でたい
卒論リベンジでルネ・ラリックについて研究しましたが、実のところ、アンティーク検定の教科書で勉強したほうがしっくりきたのです。
ラリックは作品を制作するにあたり、芸術性を担保しながらも多くの人の手に渡ることを望んでいました。ラリックの作品は美術品と商品の境にあり、その中でもアール・デコのガラス作品はやや商品寄りです。
そうした位置付けは、まさに(現代からすると時代を経た)美術的価値の高い収集対象=アンティークではないか、そう思ったのです。
アンティークや工芸には、芸術として鑑賞する楽しみがありながら、使う楽しみ、生活のなかに迎え入れる楽しみがあります。社会的な価値と私的な価値との両方を持ち合わせているのです。
美しさを崇拝するだけではなく、愛着をもって愛でる接し方もあるのだと感じました。
今後の展開
2級は4日間の講座を受講すると取得できるのですが、まだちょっと迷っています。