5movies|THE FIRST SLAM DUNK
バスケマンガの金字塔『SLAM DUNK』の井上雄彦が原作・脚本・監督を務めた『THE FIRST SLAM DUNK』を鑑賞しました!
私も小学生の頃にテレビアニメで観ていました。
主題歌のBAAD「君が好きだと叫びたい」、大黒摩季「あなただけ見つめてる」は記憶に残っていますし(「マイ フレンド」はZARDの曲というイメージ)、花道の悪ガキぶり、流川のクールさ、春子さんの可憐さ、安西先生のタプタプもよく覚えています。ミッチー派でした。
CGアニメーションの利点
往年のテレビアニメでは、太い輪郭線とバキッとした色がベタッと塗ってある絵でしたが、PVでは細く繊細な線とマットでくすんだ色合いで、「井上雄彦の絵が動いている!」という印象を受けるのかなと思っていました。
実際に観てみると、人物が背景から浮き上がって、ぐるりとカメラが自在に回り、手前に飛び出してくる感じが「CGだな〜」という。
けれど、3Dモデルを使って実際の試合(を再現したもの)を自由な視点で観られる技術もあるので、このCG感もいずれ不自然に感じなくなるのかも。
試合のシーンでは、ドリブルで走ったりシュートを打ったりという大きな動きだけでなく、細かい動きも表現されています。
例えば、ボールを持っているプレーヤー以外も攻防を繰り広げているし、息が上がって肩が上下したり、なんとなくゆらゆら体が動いていたり、プレーしている時は常に体が動いているもの。
そうした軽微な動きにまで注意が払われていました。
デジタルになったことで色彩の自由度が上がり、実際のスポーツの試合を観戦しているような動きを表現できているのだと思います。
背景の美しさ
キャラクターは原作の(おそらく当時の絵というよりは近年の)絵柄を軸に洗練されている印象でしたが、背景美術は井上雄彦そのもの。
沖縄の石垣や波打ち際の泡立ち、家の天井を見上げた時の照明など、本人が手で描いたものをそのまま使っているかのようでした。キャラクターがいなくても背景だけで十分鑑賞できてしまう。
目頭の窪みや影の斜線、汗が特徴的な絵柄なので、もっと汗が目立ってもよかった感じがします。
それと、男性キャラクターは変わりないのですが、女性キャラクターは少し顔立ちが変わっていたかもですね。
音響効果の素晴らしさ
バスケットボールが床に当たる時の重めの打音、ゴールネットに触れた時のパシュッと小気味いい音。そういった効果音が気持ちいい!
試合中の音楽はロック調。エレキと重低音がヒリヒリとした緊張感を伝えて、観ている方も息が詰まる思いがしました。試合の最後の数秒間は、本当に息を吸っても肺にあんまり入ってこないくらい(危険)。
ただ、鑑賞後に少年が「頭がクラクラする」と漏らしていたので、小さいお子さんは注意が必要かも。
重低音は体に響くので、体に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。確かに、私も体にかかる圧を感じました。
「SLAM DUNK」の再解釈
映画全体としては、各キャラクターのエピソードを散りばめながら、インターハイの湘北 対 山王工業 戦を一瞬で駆け抜けるようでした。
キャラクターが物語る映画というよりは、バスケットボールを主題とした群像劇に近い映画という印象です。
なので、「花道」「ゴリ」といったキャラクターのパーソナリティは今回の映画の中で完結しておいて、「SLAM DUNK」を再解釈したものと捉えた方がいいかもしれません。
ドラで言うと、「STAND BY ME ドラえもん」とか、川村元気脚本の「宝島」「新恐竜」とかが、その類でしょう。
ドラ友は「宝島」について「ゲストキャラの話がメインだし、これドラえもんじゃなくてもいいじゃん」と言っていたのですが、私は好きな作品ですよ。
バスケに救われたひとりの少年の物語
いつもは公式HPをのぞいて、予告を観てから鑑賞するのですが、今回は予習なしで劇場に行ったんですね。
劇場で入場特典を渡されて、「お前は誰だ」と思ったら、幼少期の宮城リョータ(反対側は高校時代のリョータ)だったんです。最近のマンガやアニメのイベントでは、入場者特典のキャラクターが曜日で違うことがあるので、「金曜日はリョータなのかな?」と思ったんです。
しかし、オープニング幼少期のリョータのエピソードが入って、「おっ、曜日ごとにオープニングも違うのかな?すごいな」と思ったんです。
でも、他のキャラクターよりリョータのエピソードの方が多いので、「えっ、曜日ごとに映像の組み方を変えたバーションを流すなんて、えげつないことをしているの?」と思ったんです。
家路に着いてからも、半信半疑だったんです。
そう、本作の主人公は、花道ではなくリョータなんです。公式HPのあらすじを見て、やっと信じたんです。ちょっとひどいですよね、自分でも思います。
だって、私の記憶にないだけかもしれませんが、特に名言があったり、主要なエピソードがあったりするわけでもないじゃないですか。
今回の映画では、父や兄の死、やさぐれていた時のこと、リョータママの想い。
それらが山王戦の進行とともに、少しずつ語られます。
命の火が、時に周囲を照らすように明るく、時に闇に飲み込まれてしまいそうに暗く、不安定に揺らぐものであり、突然フッと消えてしまうものである。
リョータはバスケットボールに縋ることで、なんとかその火を、明るさを保とうとした。
感染症や戦禍で、学校や会社だけでなくインターネット上でも居場所を確保するのに必死で、生きる希望を見出しにくい時代に、「命の火」について伝えたい。
そのためのエピソードを入れやすかったのが、リョータだったのかなと思います。