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63arts|青森 現代アートに出会う旅 番外編 三内丸山遺跡 さんまるミュージアム

青森県立美術館から小走りして、特別史跡「三内丸山遺跡」(さんないまるやまいせき)にやってきました! (時間の都合、遺跡は諦めてミュージアムだけ行きました)


三内丸山遺跡とは?

1992(平成4)年から発掘調査が始まり、縄文時代前期~中期(紀元前約3,900~2,200年)の大規模な集落跡が発見されたことから、2000(平成12)年に国の特別史跡に指定。2021(令和3)年には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」のひとつとして、世界文化遺産に登録されました。

遺跡エリアには、直径約2m、深さ約2mの木製の柱が6本使われた大型掘立柱建物跡をはじめ、発見された痕跡の上に建物が復元されています。遺跡に建造物を復元することには賛否ありそうですが(城址に天守閣を建てちゃうとか)、写真どころか絵や文章ですら伝えられていない時代の建築物のスケールを体感するには、良い方法だと思います。

ゴミ捨て場や貯蔵穴、道路跡も含め、縄文時代の暮らしの痕跡が丸々残されている、貴重な遺跡です。

施設概要

外観

三内丸山遺跡の敷地内は、屋内施設の縄文時遊館、屋外施設の縄文のムラとピクニック広場があります。
縄文時遊館は、総合案内、レストランと青森のアンテナショップ、有料エリアとして企画・常設展示室とシアター、ミュージアムショップがあり、この有料エリアから遺跡に入ります。

建物内から遠目で遺跡がみえるかなと期待していたのですが、そんなことなかったですね。そりゃあね。
それほど時間がなかったので、広大そうな遺跡は諦めて、常設展示室にある実物の柱や縄文ポシェットなどを拝見することにしました。

さんまるミュージアム(常設展示室)

大勢の縄文人がお出迎え

さんまるミュージアム(常設展示室)に入ると、少年と犬が出迎えてくれました。

このミュージアムの特色は、人形の多さ! 当時の暮らしの様子を再現するのに人形を使うことはよくありますが、ここでは、おそらく10数人はいました。来館者より多いのではないでしょうか。
映画『ナイト ミュージアム』だったら大変ですよ、等身大で武器も持ってるし。のんびりして全然言うこと聞いてくれなさそう。

この人は寝転んでいるだけ

主な展示物

ここでは重要文化財約500点を含む、約1,700点もの土器や石器といった出土品が展示されています。

重要文化財「大型板状土偶」縄文時代中期

「大型板状土偶(おおがたばんじょうどぐう)」は、長さ32.4cm。その名の通り、平たい形状で、顔や乳房(?)、おへそには少し盛り上がったパーツが取り付けられています。体には縄目模様が走り、下半身は海水パンツを履いたような造形です。
写真で見ると手のひらサイズのイメージなので、30cm近い実物を前にすると大きさに驚きます。

時代・地域における縄文土器・土偶の作風の違いについては詳しくないのですが、隣接する地域では形が似ていたり、一方で地域によって模様が違っていたり。さまざまな地方の博物館や考古館に行くと、その違いがわかって面白いんです。
この遺跡(集落)の土偶や土器は、縄目をグルグルと巡らせるだけでなく、線で描くように装飾するのが特徴のようです。

大型板状土偶のクッキーは青森土産にもなっています。土偶のクッキーはかわいい上に、捏ねて造形して焼く工程が土偶の制作工程にも似て、素敵な旅のお土産になりますね。

重要文化財「編籠(縄文ポシェット)」縄文時代前期

教科書にも掲載されている「編籠(縄文ポシェット)」は、高さ16cm、ヒノキ科の針葉樹の樹皮を編んでつくられています。
布や紙のような植物性の素材は残りにくいものですが、袋の形状や網目がしっかりと確認できます。このように完全に近い形での出土は唯一だそう。

出土例が少ないと、一部の地域だけのものと思いがちですが、残っていないだけで他の地域でも使われていたかもしれない。ですが、痕跡がない限りは想像でしかありません。

考古学研究では、確固たる証拠や論考を重ねた上で発表しなければなりませんが、未知の部分が多い分、あらゆる可能性を考慮する想像力も必要になる。それが考古学の難しいところでもあり、何より魅力であると思います。

巨大集落

三内丸山遺跡には、約1,700年間にわたる定住生活の痕跡が広範囲に残っています。そのため、出土品の多さもさることながら、時代による変遷も窺い知ることができます。

これは各地層ごとに出土品を並べたもの。同じ土器でも、形状が横に広いものから縦長になり、縄目の模様も時代が下るにつれて少なくなっていくことがわかります。

縄文時代に栄えていた地域はいくつかありますが、ここが東北地方における中心地のひとつであったと示す地図がこちらです。

石斧に使われる青虎石、さまざまな道具の材料になる黒曜石、ヒスイやコハクなどが、三内丸山に集められたことを示しています。
北は北海道から南は長野まで、今ならば新幹線や飛行機を使って移動する距離を、丸木舟(巨木をくり抜いてつくられた舟)を使って人力で運んでいました。

はるか昔から海上交易が行われ、人やモノが行き来していたのですね。

一般収蔵庫

地下階は公開収蔵庫になっており、端から端まで土器で埋め尽くされた棚は壮観です。本当にとてつもない量の出土品があったのですね。

こちらに大型掘立柱建物跡から出土した柱があります。柱といっても全体は残っておらず、土に埋まっていた底の部分のみです。クリの柱は直径約1m、地下水が豊富なことと木柱の周囲と底を焦がしていたため、腐らないで残っていたとのこと。
当時から、木は焦がすと湿気に強くなるとわかっていたのですね。

細かく縦に入っている溝が、石斧の痕跡でしょうか。硬いクリの木に何度も打ち付けたであろう跡をみると、想像だけで手にマメができそうです。

整理作業室

整理作業室もガラス越しに見ることができます。ここでは発掘調査の工程がパネルで説明され、ガラスの近くには修復された土器が並べられています。部分的に欠損のあるものも、類例を参考に石膏で埋めて復元します。
白い部分が多いと、こんなに補填していいのか不安にならないのだろうか。

遺跡の発掘や土器の修復、もちろん責任もあり難しそうですが、ワクワクしますよね! 

★おまけ情報

訪問日は世界遺産登録3周年記念イベントを開催中で、ポテトチップスをいただきました!(入場料も無料でした)
貝出汁の旨みを感じるものの、非常にあっさりとした「和食のポテトチップス」といったお味でした。とても美味しかったので、今度見つけたら買おうと思います。

青森 現代アートを巡る旅(+番外編)はこれで最後です。
ツアーは一泊二日で5館(+1館)を周るギリギリの日程。長距離移動の手間は省けたものの、常に時間を気にしてしまう忙しなさもありました。

青森は再訪しなければ、国宝の合掌土偶(八戸市・是川縄文館蔵)にも会えてないし!


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浅野靖菜|アートライター
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