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19arts|国宝 鳥獣戯画のすべて(東京国立博物館)

別冊太陽でのお仕事の流れで、東京国立博物館で開催中の「国宝 鳥獣戯画のすべて」展の報道内覧会にお誘いいただきました。わーい、ご褒美ご褒美!
※内覧会なので特別に撮影許可が下りています

本展の見所は、四巻の全場面が一気見できること。絵巻物は1〜2場面(手で広げられる長さくらい?)だけ公開されていることが多く、全場面展示があったのは東京国立近代美術館の横山大観《生々流転》くらいではないでしょうか。

第1章 国宝 鳥獣戯画のすべて

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まずは断簡(元となる作品から切り離された一部)やパネル、アニメーションで、甲・乙・丙・丁の特徴が紹介されています。

甲巻:動物たちが遊ぶ
乙巻:日本の動物・海外and空想の動物
丙巻:人間が対戦ゲーム&動物たちが大暴れ(紙がとてもボロボロ)
丁巻:人間たちがバカ騒ぎ(ラフな筆致)

もちろん、こうは書いていないですが、よく知られている甲巻以外も個性的な内容です。
さっそく、甲巻からみていきましょう!

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展示室には動物たちがあしらわれ、科学博物館のような雰囲気です。ワクワクしますね!
事前予約制なので人数は制限されると思いますが、空間が広くとられているのでディスタンスも取りやすいです。

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これが噂の「歩く歩道」!(手振れがひどくて申し訳ないです)
とてもゆっくり動くので、最前列でじっくり作品を鑑賞できました!待ち列は長くなりそうですが鑑賞自体は余裕を持ってできそうです。この万博スタイルの展示には、今後も出会えるのでしょうか。

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乙・丙・丁は壁3面に渡って展示されています。

これまでなら「かわいいな」「おもしろいな」で済んでいた鑑賞体験でしたが、別冊太陽で先生方のお話を聞いてからというもの、《鳥獣戯画》に対して気になるところがたくさん出てきました。

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乙巻の山羊の脚に対して地面の線がスレスレなので、後から描いたのでしょうか。甲巻、乙巻の他の場面も、動物たちと背景の描写がチグハグで違和感を感じます。

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丙巻は表に人物、裏に動物を描いたものを剥がして前後につないでいるので、紙がボロボロです。さらに元の墨線が薄いために、後の時代に濃い線で描き起こされています。こんなにも大幅に手が加えられているのは不思議です。

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丁巻は全体的にラフな筆致ですが、一人だけ顔がリアル。この箇所は、本当は上手に描けることを示した部分だと言われています。図版で散々眺めているときは、世界に対して違和感を感じる主人公との対比を示すアニメーション表現(映画クレヨンしんちゃんによくある状況ですね)のように「世の中をひとり冷めた目でみているのかな」と考えてもみました。しかし実物を前にしたらそうとも思えない気がして、謎が深まるばかりです。

第2章 鳥獣戯画の断簡と模本

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さらに《鳥獣戯画》には失われた部分が多く、順番も今とは違っていたようなのです。会場では、模本(元の作品を写したもの)や断簡を入れ込んで元の順番(推定)にした甲巻の復元図が示されていましたが、現在とはまるで違う姿。
このような証拠隠滅レベルの改変が加えられては、真実の姿に辿り着くのは難しそうです。

《鳥獣戯画》には明確なストーリーがなく、楽しくてかわいらしい作品なので、絵師が楽しむために描いたものと思われるかもしれません。
しかし、動物たちに何をさせようかと考える発想力とネタの多さ、これだけの画面の長さをキャラクターや背景で満たす構成力。相当のモチベーションと動機がなければ、ここまで描き切ることはできないでしょう。
何もわからないけれど只者ではない、それが《鳥獣戯画》なのです。

第3章 明恵上人と高山寺

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そんな鳥獣戯画を所蔵している京都・高山寺。奈良時代から続く同寺を再興した明恵(みょうえ)上人が、高山寺の文化的基礎を築きました。
彼の相貌を伝える《明恵上人坐像》のほか、彼が夢の内容を記した《夢記》(以上、高山寺)、釈迦を慕ってインドに行きたい強い想いを2度にわたって阻まれる《春日権現験記絵》(宮内庁三の丸尚蔵館)、かわいい《子犬》(高山寺)といったゆかりの寺宝から、仏教に対して熱く勤勉な明恵上人の人となり、心の豊かさや温かさを感じることができます。

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本展はビビットなメインビジュアルも目を引きますが、そのビジュアルを活かしたクリアファイルや缶バッチ、モフモフのぬいぐるみやワッペン(デカイ)、アクリルキーホルダーなど、グッズも充実!
展示内容においてもグッズにおいても、鳥獣戯画展 決定版です。

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特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」
2021年4月13日(火)〜5月30日(日)
東京国立博物館 平成館
※本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。また、国宝「鳥獣戯画 甲巻」は動く歩道でご覧いただきます。

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浅野靖菜|アートライター
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