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女性社員の産育休取得をきっかけに全社員が自身のライフイベントについて真剣に考えたベンチャー企業の取組/中小企業ワークスタイル研究会のこれまで⑤

2014年8月6日(水)、中小企業ワークスタイル研究会が開催されました。(役職・内容は2014年掲載当時)
そのときの研究会タイトルは、【『ベンチャー=仕事一筋‼︎』はもう古い⁈〜女性社員の産育休取得をきっかけに全社員が自身のライフイベントについて真剣に考えたベンチャー企業の取組】です。
開催のきっかけやイベントの内容などを振り返ってみたいと思います。



1. 今回の場をつくった背景

ベンチャー企業の多くは、これから世に新しい価値観やサービス・産業をつくっていく気概に溢れていて、だからこそ「仕事一筋」「仕事に忠実」という社員や組織の空気が求められます。ベンチャー企業として働く社員には仕事一筋を求めたいゆえに、社員のプライベートやライフイベントを考えることは一見相反するように見えがちです。
しかし、社員個々人の暮らしやライフイベントなど、働くこと以外の場があることを大切にする選択が組織になければ、個人のエンゲージメントはあがらず、組織と一丸になって一緒に戦っていくことはできないのではないでしょうか。

そんな取組みにチャレンジしている株式会社ベアーズは女性社員の妊娠・出産によって大きく組織が変わってきました。
ベンチャー企業が社員のライフイベントを真剣に考えること- チャレンジしている企業の取組を中心にお話をお聞きしました。

2.スピーカーについて:株式会社ベアーズ・高橋ゆき氏

「家事代行」という日本には今までなかったサービスを”産業”として日本に浸透させたいという強い想いをもった株式会社ベアーズから高橋ゆきさんにお越しいただき、トークセッションをおこないました。


株式会社ベアーズ・高橋ゆき氏

<プロフィール>高橋ゆき氏
株式会社ベアーズ専務取締役/日本の暮らし方研究家/家事研究家
家事代行サービスを手がける株式会社ベアーズ専務取締役としてマーケティング、広報戦略、人財育成を担当。結婚後、慣れない海外生活、初めての子育て、仕事も任されているという余裕のない状況の中、香港では習慣のメイドサービスを利用したことで、妻として、母として、働く女性として自分らしさをなくさずにいることができた。日本へ帰国後、第二子を出産。香港と同様の手軽に使えるメイドサービスを探すが、当時の日本にはなく、家事に育児に奮闘する姿を見て夫からの一言。「お前、ブスになったな。」
女性の社会進出がますます増える日本で、女性の活力、女性の笑顔を創出したいという想いから夫と共に起業。家事をアウトソーシングするという『新しい暮らしへの提案』と『日本の新しい雇用の創造』を通して、現在愛する「チーム・ベアーズ」と共に邁進中!

3.ベアーズの取組みについて

はじめにベアーズという会社はそもそもどんなミッションをもって日々活動をしているか、どのような事業をおこなっているかをご紹介いただきました。ベアーズは社内で働く社員を「社員」という言い方をしておらず「チーム・ベアーズ」という名前をつけて呼び合っています。それほど「組織と社員」という垣根を超えて1つのチームなのであるという意識を、経営層も社員も共通認識にしたいということが理解できます。

今回のトークセッションの鍵は2つの視点をもって進みました。

  • 女性の産育休取得以前と以後で組織がどのように変わりましたか?

  • 組織が個人のライフイベントを考えることでどのような変化が起こってきましたか?

高橋さんにお話をお聞きする中でさまざまなキーワードが出てきました。

ーベアーズではキャリアプランではなくライフプランを書かせています。何年後に仕事でどういうプロジェクトやっていたい、何年後に課長になっていたい、ではなく、何年後にどのようなライフイベントを迎えているイメージがあるのか、そんなライフプランについて男女違わず取り組んでもらいます

ー”時間=命”だと思っています。会社で仕事している時間も命を使っているという感覚です。社内で長時間仕事をするということに意味があるとは思いません。それは仕事をちゃんとやらないということではなく、誰にも等しく大切な時間があるということだと思います。

ーあなたの”ナンバー2”は誰なのか?それを意識して本人に伝えることで、人が育っていくのではないかと思います。皆、誰かの”ナンバー2”となって働いているのではないでしょうか。

ー経営者が変わらないと変革はないということをよく聞きますが、経営者が変わるきっかけをその近くに居る人がどう創れるか、も重要だと感じます。私も代表へ諦めずに伝え続けていますから。

ー私たち会社も今変革期で、女性の産育休取得が少しずつ増え始めていて、今後それがどう組織内に変化をもたらしていくかを見つめていく段階です。

イベント内での高橋ゆきさんの言葉

高橋さんの言葉から会社に対して、そしてそこで働く人に対しての熱意と愛情を感じます。

4.参加者との対話で理解を深める

質問①ライフプランを社員にヒアリングするにおいて、男性が女性にヒアリングしてもいいのでしょうか?

ベアーズでは、上司が男性で部下の女性に対してもライフプランをヒアリングしているそうです。
「普段から社員一人一人とコミュニケーションを取っておくことが大事。パワハラ・セクハラなどハラスメントにあたりそうだと考えてしまうこともありますが、そう思われてしまう程度のコミュニケーションしか取れてないことに問題があるという考え方もできます。普段からダイレクトなコミュニケーションを取っておくことが大事ではないでしょうか」とお話されている高橋さん。
ベアーズの組織内でのコミュニケーションが密に取り交わされていることで、互いの信頼度が高いからこそ、伝える言葉・受け取る言葉が他社とは違うことがわかります。

質問②女性の幹部登用について。女性が幹部になることへ積極的ではないということが取り上げられることもあるが、高橋さんはどう思われていますか?

「女性は最後の最後に自信が持てない方も一定いると思います。女性に自信を持ってもらう為には、褒めるのではなく、小さくてもいいからプロジェクトを任せることがポイントだと感じます。今の時代にはまず任せてみることが大事なのだと思います」
女性特有の心情を踏まえての後押しが必要という高橋さんのご意見が参考になりました。

5. ワークショップ:働き方デザイン本より

ワークショップの内容は、「あなたの在りたい働き方はどんな働き方ですか?」と「その働き方を認めてもらうために組織にどのようなことが貢献できますか?」というQuestionで、ArrowArrowが創りました「働き方デザイン本」を基にワークショップをスタートしました。

各グループから出たご意見をいくつかシェアします。

「産休を取る社員の立場を考えて今日のワークを考えてみたら、全然考えることができなかった。働くことだけでなく、子どもを産み・育てることとはどういうことなのかを考えるきっかけになった。グループで出た意見としては、子どもを産み・育てることがキャリアダウンではなく、これからの仕事にも活きてくるのではないかという意見があった」

「全員子どもがいるグループだったので、どうやったら子どもを育てながら成果を出し続けることができるのかというテーマがメインになった。ミーティングなどの時間を上手く調整して時間を作る、No.2を見つける、人を育てる中で生産性を上げていくことが大事なのではという意見も。また、ライフイベントを迎えてからではなく、これからライフイベントを迎える社員に向けて、今から考えていくことが必要なのではと感じた」

「専業主婦で子どもが2歳の時、いろいろ考えることがあり、今のうちから何かできることはないかと市民団体を立ち上げた。その活動を通じて、子育て中の女性の力を使えないかと起業準備中。どんな働き方、生き方をしたいかということについては、子どもの送迎に自分が立ち会う、在宅勤務や子連れもOKの働き方を実現していきたいと考えている」

各グループで出た意見がまた他グループにもうなずきを与え、それぞれの意見や経験が他の人にもつながっていく様が見られました。
中小企業ワークスタイル研究会は「個々人のライフイベントと組織で働き続けることが並走できるにはどうしたらいいか、それができている組織はどう変化しているのか、どんな影響が出ているのか」に注目し、それを阻む固定観念を打破していく場をつくり続けたいという旨を伝え会を終了しました。

この度のゲストスピーカーとしてお越しくださった株式会社ベアーズ:高橋ゆき様、会場場所をご提供くださったサイボウズ株式会社:渡辺清美様、
そして8月猛暑の平日夜にお集りいただきました参加者皆さん、本当にありがとうございました。

6. 2024年の今、ふりかえって

2024年の今、ベンチャー企業とカテゴライズされる企業の働き方は、変わってきているでしょうか?
ArrowArrowと関わりやコンタクトがあった企業の中でも、様々なベンチャー企業の方々がおられました。そしてベンチャー企業だからこそ「仕事一筋」を求められてライフイベントによって転職を考えている…という個人の方々がいたことは事実です。
しかし、あるIT業界のベンチャー企業人事部の方とお話していて印象的なことがありました。コンタクトがあった当時は7-8年前でまだ「男性育休」という言葉も全く浸透していなかった当時でしたが、その企業では男性管理職も育休を取得していたという様子をお聞きしました。
「この業界(IT業界)だからこそできるのかもしれません」
IT技術の発展・進歩によって働き方を変えることができるという実例をお聞きし、このような働き方を変えるという分野もまだ発展途上なのだということを痛感しました。

これからはどのような業界であってもなにかしらITの技術やDX化は避けられない部分があるかと思います。事業の発展だけではなく「働き方」の分野でその発展が一層高まっていくことを推進できていけたらと感じました。

7. ベンチャー企業も共に!小さな組織の働き方を学び合うこと。

サービス・事業のスタート時期の企業において、皆同じ目線で走っていきたいからこそ、働き方を多様にすることは難しいことかもしれません。
しかし、むしろその逆をチャレンジしている企業があることも事実です。事業のスタートにいてくれた人たちだからこそ、一緒に走り続けるための仕組みや働き方の多様さをつくる。
この「小さな組織の働き方を学び合うコミュニティ」という場を通して、皆さんと共に、ベンチャー企業であっても組織の多様な働き方を、その挑戦や模索や継続を学び合える場所を創っていきたいと思います。

小さな組織の働き方を学び合うコミュニティ CAMPFIREコミュニティ (camp-fire.jp)

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