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【線電荷】電磁気がわからない大学生が一瞬で理解できるようになるコツ②
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「電場の公式は覚えているけど使い方がわからない…」
「説明を聞いても何故その導き方になるのか意味不明…」
「もっと理論的に電磁気を理解したい!」
電磁気学は電気・電子を専攻する大学生・エンジニアを目指す工学生が壁にぶつかる難度の高い科目です。
筆者も2年ほど講義を受けていましたが当時は全く理解できませんでした。しかし、ベクトルの概念を学んだことで劇的に内容を理解できるようになりました。
本記事では円筒座標系のベクトル空間を利用して無限線電荷から発生する電場(電界)の求め方を解説します。
今回の記事内容を理解することでベクトルを使った線電荷による電場の求め方がマスターできます。
「ベクトルを学んだけど使いこなせていない」という人たちへの手助けになる記事構成です。
【前提】ベクトルの概念を理解しよう
今回の内容もそうですが、電磁気を理解するのにはベクトルの概念を理解することが大切です。
電磁気では加わる力・発生する電場、磁場の方向を導出する必要があるからです。
下記の記事で【電磁気で必須なベクトル空間】について解説しています。
ベクトルの前提知識を学んでいただくと、今回の内容が理解しやすくなっています。
是非参考にしてみてください。
電磁気の問題を実際に解いてみよう【線電荷の電場】
ここからは実際の問題を円筒座標系を用いて解を導出しましょう。
数学記号が多く、大変な部分もあると思いますが極力わかりやすく解説していきます。
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z軸上に沿って$${-\infty}$$から$${\infty}$$まで存在する無限長線電荷の電場(電界)を求めます。
ここでは線電荷密度$${\rho_L}$$[C/m]から半径$${\rho}$$離れた位置に発生する電界の想定です。
微小区間あたりの電界の公式は
$$
d\boldsymbol{E}=\cfrac{dQ}{4\pi\epsilon_0r^2}\boldsymbol{a_R}[V/m]
$$
$${r}$$は線電荷から点$${P}$$までの距離、$${\epsilon_0}$$は真空中の誘電率です。
微小区間の電荷量は線電荷密度に対して微小距離$${\rho_L}$$を掛けたものなので
$$
dQ=\rho_L\times{dz}
$$
単位ベクトル$${\boldsymbol{a_r}}$$を求めるには円筒座標系のベクトル成分とその大きさを抽出すれば導けます。
線電荷から点$${P}$$までのベクトルを$${\boldsymbol{R}}$$とすると
$$
\boldsymbol{R}=-z\boldsymbol{a_z}+\rho\boldsymbol{a_\rho}
\\(式から\phi成分の電界は存在しないことがわかる)
$$
$$
\boldsymbol{|R|}=\sqrt{\rho^2+z^2}
$$
$$
\therefore\boldsymbol{a_R}=\cfrac{\boldsymbol{R}}{\boldsymbol{|R|}}
=\cfrac{\rho\boldsymbol{a_\rho}-z\boldsymbol{a_z}}{\sqrt{\rho^2+z^2}}
$$
と求まります。
これらの要素を電界の公式に代入すると
$$
d\boldsymbol{E}=
\cfrac{\rho_L\times{dz}}{4\pi\epsilon_0(\sqrt{\rho^2+z^2})^2}\times
\cfrac{\rho\boldsymbol{a_\rho}-z\boldsymbol{a_z}}{\sqrt{\rho^2+z^2}}
$$
文字が多すぎて混乱すると思いますが、式を少し簡単にします。
点$${P}$$から上下に等しい距離にある$${\boldsymbol{a_z}}$$方向の電界は、その対称性から相殺しあうので点$${\boldsymbol{E_z}}$$はゼロです。
すなわち$${-z\boldsymbol{a_z}}$$は無視できます。
したがって電界の式は以下のように簡略化されます。
$$
d\boldsymbol{E}=
\cfrac{\rho_L\times{\rho}}{4\pi\epsilon_0({\rho^2+z^2})^{3/2}}
dz\boldsymbol{a_\rho}
$$
この式を$${z}$$方向で積分します。ここでは$${-\infty}$$~$${\infty}$$区間を求めることになります。
このとき、対称性を利用することで積分範囲は$${0}$$~$${\infty}$$にできるので少し簡単に置き換えられます。
$$
\boldsymbol{E}=
\int_{-\infty}^{\infty}{\cfrac{\rho_L\times{\rho}}{4\pi\epsilon_0({\rho^2+z^2})^{3/2}}}dz\boldsymbol{a_\rho}
\\=2\times\cfrac{{\rho_L{\rho}}}{4\pi\epsilon_0}\int_{0}^{\infty}{\cfrac{1}{({\rho^2+z^2})^{3/2}}}dz\boldsymbol{a_\rho}
\\=\cfrac{{\rho_L{\rho}}}{2\pi\epsilon_0}\int_{0}^{\infty}{\cfrac{1}{({\rho^2+z^2})^{3/2}}}dz\boldsymbol{a_\rho}
$$
ここで$${3/2}$$乗という難しい積分をしないといけないので今回は$${z=\rho\tan\theta}$$で置換した積分で解きます。
(みなさんのやりやすい方法で構いません)
式が長くなってしまうのでまとめ後に置換積分の手順を載せておきます。
積分を解くと$${\cfrac{1}{\rho^2}}$$が出てくるので
$$
\boldsymbol{E}=
\cfrac{{\rho_L{\rho}}}{2\pi\epsilon_0}\times\cfrac{1}{\rho^2}\boldsymbol{a_\rho}
\\=\cfrac{{\rho_L}}{2\pi\epsilon_0\rho}\boldsymbol{a_\rho}[V/m]
$$
このように教科書である無限線電荷の電界が導かれます。
難しい積分はありましたがベクトルを入れることで発生する方向まで指示することができていますよね。
$${\boldsymbol{a_\rho}}$$方向のみに電界が生じることがわかり、z方向のキョリに依存していないのが式から理解できます。
まとめ|ベクトルを使って理解しやすくする
本記事では円筒座標系を用いた無限線電荷から生じる電場(電界)を導出しました。
今回の式展開を自力で導けると電磁気の理解度、解くスピードが格段に上がっていきます。
記事の内容がイマイチ理解しきれなかった方々は下記の記事を読んで、ベクトル空間を照らし合わせながら解くとよいです。
さらに別の記事では無限大面電荷による電場(電界)の導出もしているので参考にしてみてください。
おまけ|置換積分の手順
$$
z=\rho\tan\thetaとおく
\\\cfrac{dz}{d\theta}=\cfrac{\rho}{\cos^2\theta}→dz=\cfrac{\rho}{\cos^2\theta}d\theta
\\積分範囲はz:0~\infty→\theta:0~\cfrac{\pi}{2}
\\(\tan^{-1}\thetaは大きくなるほど\cfrac{\pi}{2}に近づくから)
$$
積分する範囲のみを取り出すと
$$
(与式)=\int_{0}^{\infty}{\cfrac{1}{({\rho^2+z^2})^{3/2}}}dz
\\=\int_{0}^{\pi/2}{\cfrac{1}{({\rho^2+\rho^2\tan^2\theta})^{3/2}}}\times
\cfrac{\rho}{\cos^2\theta}d\theta
\\=\int_{0}^{\pi/2}{\cfrac{\rho}{\rho^3({1+\tan^2\theta})^{3/2}}}\times
\cfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta
$$
三角比の相互関係より$${1+\tan^2\theta=\cfrac{1}{\cos^2\theta}}$$なので
$$
(与式)=
\int_{0}^{\pi/2}{\cfrac{1}{\rho^2({\cfrac{1}{\cos^2\theta}})^{3/2}}}\times
\cfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta
\\=\int_{0}^{\pi/2}{\cfrac{\cos^3\theta}{\rho^2}}\times
\cfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta
\\={\cfrac{1}{\rho^2}}[\sin\theta]_{0}^{\pi/2}=\cfrac{1}{\rho^2}
$$