トルコ中銀は追加利上げに踏み切るのか

■ トルコ中銀は最新の四半期インフレレポートで、インフレ見通しを大幅に引き上げた

■ 利上げは喫緊の課題で、11月19日の会合で追加利上げを決定するかどうか注目

 本日のアジア市場で、トルコリラ(リラ)は対ドルで8.33リラ台前半まで下落、史上最安値を更新。対円では12円台半ばの史上最安値圏で推移している。足元のリラ安に拍車を掛けたのは、市場予想に反し、トルコ中銀(TCMB)が22日の金融政策決定会合で主要政策金利の1週間物レポ金利を10.25%に据え置いたため。一方、政策金利の上限とされる後期流動性窓口金利は13.25%から14.75%に引き上げ、金融政策に柔軟性をもたらすとの認識を示した。

 だが、TCMBは28日公表の四半期インフレレポートで、2020年末時点のインフレ見通しを12.1%と7月時点(8.9%)から大幅に引き上げた。ウイサル総裁は、リラ安に伴う輸入コストや食品価格の上昇などが見通し修正の主因だと説明した。9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は11.75%と6月(12.62%)からやや伸びは鈍化しているが、中銀目標(5%±2%)を大幅に上回る状況が続く。また、4-6月期の実質GDPは前期比マイナス11.0%と1998年の統計発表以来の最悪を記録した(1-3月期は同0.6%増)。

 ウイサル総裁は、「リラに特定の目標水準を設定していない」と述べたが、外貨準備は年初来で半減、為替介入による通貨下支えは限界に近づき、対ドルのリラは過去1週間で4.5%急落。年初来の下落率は40%近くに及ぶ。物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーションリスクが高まるなか、11月3日に発表される10月のCPIの伸びが加速すれば、同22日の金融政策決定会合での追加利上げは喫緊の課題といえる。TCMBがエルドアン大統領の圧力に屈せず、中銀の独立性や政策の透明性を示すことが出来るかどうか注目される。東地中海のガス田権益やアゼルバイジャンとアルメニアの民族紛争を巡る地政学的リスクが生じていることに加え、米大統領選でバイデン候補が勝利すれば、トランプ大統領よりもトルコに対し強い圧力を掛ける可能性もある。引き続き、トルコリラの下値警戒感は残ろう。

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アロAro(マーケット最新情報お届け大臣)
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