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悪い土地という名の絶景 | バッドランズナショナルパーク 【サウスダコタ州】
グレートプレーンズと呼ばれる大平原を走ること15時間あまり。
サウスダコタ州までやってきた。
途中雨雲の下を通過し、雨と雷に肝を冷やしたが、その雲を過ぎると再び青空が広がっていた。
サウスダコタ州はアメリカ50州の中でも人口密度が最も低い州の一つだそうだ。
州の面積は北海道の約2.4倍、人口は約92 万人(長崎県くらい)。
ちなみに北海道は約530万人。
計算なんかしなくても、確かに人口密度の低さが納得できる。
アメリカ全体の人口は3億3500万人、最も人口が多い都市ニューヨークは約840万人というから、人口の偏りは甚だしい。
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屏風のように岩壁が近づいてくる。
これまでずっと滑らかな大地を走ってきたのに、ついにこの地の果てまで来たかと思わせるような光景が広がる。
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目的地バッドランズナショナルパークに到着したのは午後5時。
ほぼ走り通しの一日、ギリギリビジターセンターがクローズする前にたどり着くことができた。
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バッドランズは尖塔状の岩や急峻な崖が続き、鮮やかな赤い縞模様が印象的。
この地形は、数千万年のかけて堆積物とその風化・侵食により形成されたという。
地層からはそれぞれの時代に生息していた哺乳類の化石も発見される。
地層の一部に触れてみると、ボロボロと簡単に崩壊する。
非常に乾燥した泥のような部分だった。
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ここは昔から先住民スー族(ラコタ族)が利用してきた土地。
「バッドランズ」という名前はその名の通り、悪い土地、荒地、通行が難しい土地に由来する。
乾燥した急峻な深い谷は先住民にとっても非常に厳しい場所だったため、スー族の人々も、彼らの言葉でこの地を「Mako Sica 悪い土地」と呼んでいた。
この険しい土地ではあるが彼らにとっては神聖な場所であり、儀式や狩猟の場とされてきた。
彼らは自然と共に生きていた。
しかし19世紀後半、西武開拓を進める政府が先住民が暮らす土地を次々と略奪。
スー族も抗戦を続けたが、女性子供を含む多くの人々が虐殺されたという(1890年ウーンデッド・ニーの虐殺)
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ビジターセンター内で情報を入手し、パークの絶景ポイントへ車で移動する。
平らな大地状の土地には背の低い草が茂り、大地の裂け目のような荒々しい岩面とのコントラストが際立つ。
どこまでも続く水平ラインが不思議な光景を作り出し、光の当たる角度によって赤が強く強調される。
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360度ぐるり一周美しい光景が広がる。
振り返ると空にはくっきりと虹が出ていた。
まるで物語の中にいるような光景だ。
旅先で虹を見ると歓迎されているような気持ちになり、とても嬉しくなる。
ほんの5分ほどで消えてしまったが、絶景をより希少なものにアップデートしてくれた。
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日没が遅いとはいえ、午後6時を過ぎると太陽が傾き始める。
吹き抜ける風が心地よい。
こんなにのどかで美しく見える風景も、生きるための土地としては厳しい場所であった。
今はこうして道路も整備され、簡単にこの景色を目にすることができるけれども、ほんの100年前はとても限られた人しか出会うことがない風景だったのだと思うと、感慨深いものがある。
100年後の世界の人はこの景色をどんなふうに見るのだろうか。
どんなにテクノロジーが進化しても、絶景と対峙する体験はアナログのまま残して欲しい。
そんなことを感じたバッドランズでのひと時だった。