【羽咋ルーツ旅日記#3】 家族に乾杯
時刻は午前11時10分羽咋駅到着。
豪華な観光列車『花嫁のれん号』から下車したのは私一人だけ。
不思議な縁に導かれ、ついにこの時がやってきました。
10月末とは思えないほど暖かく穏やかな青空の元、いよいよチーム長浜の集合です。
ここから本格的に私たちのルーツ旅が始まるのです。
はじめまして!
既にレンタカーで旅を始めているYさん・Kさんが電車の到着に合わせ駅でピックアップしてしてくださることになっています。
駅前のロータリーに一台の車が止まり中から紳士的なおじさま二人が登場。
そういえばまだお顔を存じ上げませんでしたが、間違いなくナガハマズ!!
感激の初対面です。
何やらここに到着するまで既に珍道中であった様子で、笑い話から始まり、車内は最初から打ち解けた雰囲気となりました。
続いて図書館にいる見典さんをピックアップします。
見典さん(仮名)は金沢で前泊、朝イチの電車で羽咋入りし、駅近くの市立図書館で資料を探しているとのこと。
駅から車で3分ほどのところにある市立図書館は、1階が図書館、2階が宇宙科学博物館であるコスモアイル羽咋となっており、聳え立つサタンVロケットが目印です。
図書館の入り口に立っているのはまさしく見典さん。
「見典さーん!」
車から降り駆け寄ると、見典さんも大きく手を振り駆け寄ってくださいました。
およそ1年ほどの交流を経てついにお会いすることとなり、感動もひとしおです。
見典さんはご自身のブログ内に写真を掲載していることもあり、なんとなくイメージができていましたが、想像していたよりもずっと小柄な方でした。
一方で、想像していた通りにとても気さくでエネルギッシュな楽しい方でした。
図書館で何か収穫があったか尋ねると、
「特に新しい情報は得られませんでした・・・」とのこと。
目指す滝谷は羽咋市であるけれど、どちらかというと滝谷の文化圏は更に北の七尾などに像するとの事。
確かに現在の行政区分がそのまま過去の文化的な区切りと同一なわけがありません。
なるほど、そういうことがわかっただけでも面白い発見でした。
早速車内は活気に満ち溢れ、ここからいよいよ私たちの旅が始まります。
ドライバーはYさん、助手席にKさん、後部座席に見典さんと私です。
ついにやって来ました
目指す滝谷集落は羽咋の中心部から北へおよそ15分ほどの所にあります。
カーナビの目的地を滝谷集落の中心である妙成寺にセットし、しばらく車を走らせると車窓左手に海が見えました。長く続く砂浜の海岸線。
地図で見ていたよりもずっと海が近い。
そう感じました。
青年期まで滝谷で過ごしたKさんは、子供の頃はよく海で遊んでいたとのこと。
この話から、滝谷集落から浜辺までは子供の足でも行くことができる場所であるということがよくわかりました。
ここを訪れるまで、自分たちの先祖がどのような暮らしをしていたのか、さまざまな考察を重ねてきたわけですが『漁』を生業にしていたわけではないにしろ、少なからず海がとても身近であったということがKさんの話から容易に想像されました。
羽咋には千里浜という、砂浜を車で走行できる場所があります。
千里と名がつくのだから、長く美しい浜は羽咋にとって重要な場所なのでしょう。
見典さんは「長浜」姓の由来を考察する中で、歴史的な観点からたくさんの可能性を提示してくれましたが、この美しく長い浜を見て、
「長浜」はロングビーチの長浜と考えるのが自然かもねぇ〜
とポツリ言いました。
確かに。
なんの根拠も確信もありませんが、現地を訪れたからこそ感じる生きた直感です。
それこそが現地を訪れる醍醐味でしょう。
そうこうするうちに、右前方こんもりとした緑の中に小さく妙成寺の五重塔が見えてきました。
かなり離れた場所からもその姿を確認できるのです。
数百年変わらず同じ風景を作り、この土地のランドマークとして鎮座し続けて来たのでしょう。
間違いなく、明治期にこの土地で暮らした私たちの先祖もまた、この風景とともに生き、これを背に北海道へ旅立ったはずです。
それほど変わらぬ風景が今も残されていることはとても奇跡的なことであり、
多くの方々の努力によりこの風景が守られているのでしょう。
まもなくしてカーナビは右折を指示。
海沿いの道路から内陸側へ折れ、少し走ると、目的の滝谷集落がありました。
私たちナガハマズの先祖が130年前に暮らしていた場所こそ、この滝谷集落。
「ついにやってきましたねぇ・・・」
温かいおもてなし、その1
この日の午後には妙成寺を訪問する旨アポをとっていますが、それまでまだ少し時間があります。
妙成寺山門のすぐ向かい側に、今回同行してくださったKさんの実家があり、現在はKさんの長兄が家を継いでいるとのこと。
まずはKさんの実家に訪問を伝えることにしました。
こここそが代々万屋号右衛門の家であり、
万右衛門をルーツとする見典さん、Yさん、Kさんの先祖が数百年にわたり暮らした場所ということです。
家から出てきたのは80代前半くらいの小さく可愛らしいお婆さま。
北陸のイントネーションで温かく私たちの訪問を迎えてくださいました。
Kさんの義理のお姉様ということになります。
ちょうどお昼の時間だったこともあり、妙成寺駐車場にある休憩所で一緒に食事をとることになりました。
店内には先客が一人、その後は代わる代わる数名の方がやってきました。
この日は平日だったこともあり観光客はおらず、地元の方々の交流の場となっていました。
Kさんにとっては、ここはまさに故郷であり、数年ぶりの実家帰省。
懐かしい方とのおしゃべりにも話が弾んでいるようでした。
そして我々がどうしてここへやって来たのかなどを楽しくおしゃべりしながら注文したお蕎麦を待ちました。
出てきたのは温かい天ぷらそば。
おだしがよく効いた薄い色の関西風のおつゆです。
いつも濃いお醤油色の蕎麦つゆに慣れている私にとっては、蕎麦つゆの色でここ北陸は関西の文化圏なのだなぁということを実感したのでした。
そして食後のデザートにはお団子が一人2本ずつ出てきました。
すでにお腹はいっぱいだったので、一度は遠慮を申し出たものの、一口食べるとこれまた絶品で、もう一つ、もう一つと口に運んでしまいます。
ほんのり炙られたお団子と、さらりとかかっている甘たれが絶妙のバランスなのです。
空腹だったら止まらなくなりそうな逸品でした。
お腹がいっぱいになり、そろそろ席を立とうかと思っていた頃、近所の方が採れたばかりのアケビを持って来てくださいました。
木通と書いて、あけび。見た目はちょっとグロテスク。
北海道では見られないこともあり「珍しいでしょう?」と沢山持って来てくださったのです。
もうお腹はパンパンでしたが、ここで遠慮は禁物です。
ご厚意に甘え、頂いてみましょう。
生のアケビは初挑戦。
真ん中の白いところをスプーンで掬って口に入れると、ネットリとした食感にほんのり優しい甘さが広がります。
中に小さなつぶつぶの種があるので、口の中で選別しペッと出します。
初めて食べたけれどどこか懐かしい味がしました。
生まれも育ちも北海道のYさんもまたあけびは初挑戦とのこと。
食べ方を知らずにつぶつぶを噛んでしまったようで、苦い苦いと言っていました。
どうぞもっと沢山持っていってと袋いっぱいのアケビを頂いた私たち。
さながら鶴瓶の家族に乾杯のワンシーンのような、大変嬉しい歓迎を頂戴しました。
こんなに満腹になって大丈夫だろうかと思うほど、お腹は満ち満ちていますが、午後は今回の旅の肝である妙成寺訪問し、この集落の歴史などについてお話を伺うことになっています。
心身を引き締め、いざ妙成寺へ向かいましょう!!
続く・・・