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思い出のマンハッタン #01


1年前、私はこんな記事を書いた。

渡邊惺仁さん〇〇について思うことさんが主催された、真顔で文字を書いて笑わせる1グランプリ に参加した時のものだ。

不思議な縁で外部審査員(⁈)という肩書きを頂戴し、大人がnoteで真面目にふざけたかつてない企画に参加できたことは本当に楽しい経験だった。

当初は、審査員を置くような企画であるとは思っていなかったので、
「私自身は面白い記事は書けないけど、その企画は楽しそうなので読み手として積極的に参加しますね」というニュアンスで「審査員やろうかな」とノリでコメントしたのが始まりだった。

始まってみると大盛況。参加者はどんどん増え、笑い通しの毎日を過ごした。
たくさんの作品を読ませていただき、そこで交流を深め、新たな縁も広がった。

そんな中、私も読んでいるだけでなく参戦しよう!という気持ちになり、作品を一本書いてみることにした。

あえて気取ったタイトルをつけることで面白くなるのではないかと「思い出のマンハッタン」というタイトルと美しいマンハッタンのサムネ写真を選んだ。
(すでに写真に頼っていたことをここで懺悔したい)

内容は夫の実家から大量の『マンハッタン』という名前のドーナッツが送られてきたというもので、これを書いた当時はニューヨークのマンハッタンの思い出など一切なかったのである。

福岡のソウルフード(?)
マンハッタン

あれから1年。

なんと私はニューヨークのマンハッタンに立っていた

こんなことが起こるものかと、困惑にも近い不思議な感情が交錯する。
前途の記事を書いたとき、自分がマンハッタンの思い出を語ることになろうとは考えもしなかったことだ。それなのに…

⭐︎

私には10代の頃から「いつか叶うといいな」という夢があった。
それはブロードウェイでミュージカル『オペラ座の怪人』を観るというものだ。

振り返ると恐ろしく年月が経っているがちょうど30年前、高校受験を間近に控えた1月、当時札幌で劇団四季が公演していた『オペラ座の怪人』を見たのが全ての始まりだった。
『劇団四季のオペラ座の怪人は凄いらしい』そんなキャッチコピーで札幌でのロングラン公演が行われていたのである。

現在大阪で公演中
このキャッチコピーは今も


生まれて初めて見たミュージカルに、私はハートを鷲掴みにされてしまった。
受験勉強中も、勉強していない時も、購入したサントラCDをひたすら流し続け、気づけばすっかり歌詞を覚えてしまった。
正直なところ1回目に見た時はストーリーの細部はさっぱりわからなかったが、繰り返し歌詞を聞き内容と構成を知るたびにより深みにハマってしまったのだった。

脳内の95%をオペラ座の怪人に占拠されたまま高校に入学し、そこでも怪人仲間ができた。
大人になりその熱は落ち着いたが、劇場場所そして共に観劇する人は変わりながら、数回にわたりこの作品を見る機会に恵まれた。

日本では1988年の初演以来、数年ごとに場所を変えながら劇団四季が公演を行っているが、ブロードウェイでは同じく1988年から現在までずっと同じ劇場で公演され続けており、ブロードウェイ史上最長作品でもある。

35年も続くような作品であるがゆえ、これからもずっと続くのだろうと思っていたし、だからこそ「いつか見られたらいいなぁ」とふんわりと思っていたのだった。いつかアメリカに行くことがあれば・・・くらいに。

それが昨年9月「2023年2月をもってブロードウェイでのロングラン公演を終了する」ことが発表されていたのだという。
しかも当初は2月いっぱいで終了予定だったが人気のため4月まで延長されたとのことだった。

夢と言いながらも、現実的には行く前提で考える状況にはなかったため、現在もブロードウェイでロングラン公演が行われているか否かの情報を追いかけてさえいなかったというのが正直なところだった。

⭐︎

ブロードウェーのオペラ座の怪人が終わってしまうことを教えてくれたのは夫だった。たまたまネットニュースで目にしていたという。
十数年前に夫と東京公演を一緒に観に行ったものの、夫自身はミュージカルにはそれほど興味を示さず、ただ私の熱量だけを目の当たりにしていたのだった。

いざチケットを探し始めたものの、行けそうな日程はことごとく完売。
3月末にかろうじてリセールサイトで数席見つけたが、価格が高騰している上、他の予定も詰まっており日程調整も厳しい。

無理かもしれない無理ならそれも仕方ない、と言う私に、
「これは無理してでも絶対に行ったほうがいい!!!」
と、珍しく夫が強く推してくれたのだった。

確かに、ここで諦めたら一生後悔する。

家族会議を重ねた結果、タイトな日程にねじ込んだたった一泊の弾丸ニューヨーク旅を決行することとなった。

もし仮にロングラン公演が2月で終了していたら確実に行けなかっただろう。逆にこの先もずっと公演が続いていたら、私の中の「いつか」も続行したまま過ぎてしまったかもしれない。
そもそも海外へ行くなどこの先数年単位で無理だろうと思っていたし、昨年10月までは自分がアメリカで暮らすことなど想定すらしていなかったことだ。

ブロードウェイはマンハッタンの真ん中にある。
noteに記した「思い出のマンハッタン」は一年後、夢が叶う形で本当に一生忘れられない思い出の地となったのだった。

こんなことってあるんだろうか。
自分の人生の出来事ながら、にわかには信じがたいことだ。
けれどもこれは現実のこと。
心からこの不思議な巡り合わせに感謝したいと思う。

マンハッタンの
ミッドタウンにあるマジェスティクシアター


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