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~読むアロマ~『深呼吸の必要』長田弘

物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。
「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたものです。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。

新旧、ジャンルを問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして作った香りのご紹介です。



『深呼吸の必要』長田弘著/ハルキ文庫


わたしにとって「深呼吸」はいつのころからか、とても大切な作法となりました。
こころと身体、両方をケアする手立てとしてお守りのように感じています。

その辺のことを綴ったnoteがこちら


なので、この1冊との出会いは必然だったのでしょう
「文學アロマセラピートライアルセッション」でご紹介いただき、装画が大好きな西淑さんとなればもう間違いありません!


手元にある西淑さんのカードやメモたち


本は伝言板。言葉は一人から一人への伝言。
伝言板のうえの言葉は、一人から一人へ宛てられているが、いつでも誰でも目にふれている(中略)必要なだけの短さで誌された、一人から一人への密かな言葉だ。

『深呼吸の必要』後記より


ああ、だからなのね。
「きみ」とよびかけられる一編一編に、思い当たる風景、なつかしい記憶、なじみのある感情がふわっとひろがり、まるで自分に語りかけられているような気持ちになるのです。

「わたしが大人になったのはどの瞬間だったのかな」
「そうそう、おおきな木をみると立ち止まっちゃうよね」
「花屋さんの店先、大好き!」

いつもの景色がより鮮やかになったり、考えもしなかったことを辿ることで忘れていた思い出と再会したり。

「伝言板」で届けられた言葉がわたしのなかの解像度をあげていきます。


読むアロマ『深呼吸の必要』ブレンド


大事なのは、自分は何者なのかではなく、何者ではないかだ。
急がないこと。手をつかって仕事すること。そして、日々のたのしみを、
一本の自分の木と共にすること。

『深呼吸の必要』“贈りもの”より

焦らなくても大丈夫。
どうしても不安になったとき、心ゆらぐときは立ち止まって深呼吸をひとつ。

1ミリも残さず吐ききったあと、たっぷりと吸い込む息とともに、かぎたい香りを作ってみました。

・マンダリン
・ローレル
・サイプレス
・ネロリ
・シダーウッド


マンダリン
は、子どものころの自分を優しく包んでくれる香り。温州みかんの仲間である果実は、なつかしさとあたたかさをもたらす。

香りが葉から抽出されるローレルは別名月桂樹。爽快感と甘さをあわせ持つ歴史古き薬草。英国では名誉ある詩人を「桂冠詩人」と称えた。

ヒノキ科のサイプレスは、ほろりと苦いウッディテイスト。樹高40mにもなる大きな木はゴッホの絵にも描かれ、長きにわたり人間のそばにある存在。

ネロリは、ビターオレンジの花からとれる安らぎの香り。自らうみだした感情の霧を晴らすのを助けてくれる。

そしてシダーウッド。太い枝を水平にひろげる常緑樹は、樹齢が長く、生き物たちを見守り、育み、与えてきたもの。滞りを流す働きをもつ。

あのころ想像していたような、懐深く、どっしりかまえている大人にはほど遠いけれど(笑)

本気の深呼吸をしてみれば、肺が膨らみ、肚に力が入り、血がめぐって、少しだけわたしの輪郭がはっきりするような気がします。

立ち戻る場所、思い出す場所のような「一本の自分の木」
そんな香りになりました。


読むアロマオンライン読書会開催のお知らせ

『深呼吸の必要』について自由に感想をシェアするオンライン読書会を開催いたします。

ご紹介した『深呼吸の必要』の香りの栞を事前にご送付いたします。
本と香りのコラボレーションをどうぞお楽しみください!

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