⑳『レーエンデ国物語』の余韻がすごい
本屋さんに行くたびに、手にとっては戻し、戻しては手にとること数回。
お正月読書用に満を持して購入、読了しました。
余韻がとにかくすごいのです・・・
怒涛の最終章を読み終えても、心はまだレーエンデの森をさまよっているよう。自分のなかの静かな高揚を感じます。
物語は骨太で、ずっと不穏な空気を纏ったまま進むのですが、目に浮かぶ森や自然の描写はとてもカラフルできれい。
大樹のなかに住むなんて、想像しただけでワクワクします。
森の民、ウル族はとても保守的で迷信的。
それは、生き死にが森とともにあるからなのではと想像しました。
恵みと破壊をもたらす大いなるもの。人知を超えた大きな枠組み。
理屈を超えた存在にふっとばされないために守り固める。
気候や風土が人々の価値観を作ることを思いながら読みました。
魅力的な登場人物たち、そのだれもが過酷な運命を生きていますが、なかでもトリスタンの幸せを願わずにいられなかった。
トリスタンの名前には「悲しみの子」の意味があるとの著者のインタビュー記事を読んだときには思わず涙目に。
トリスタン・・・!!
「振り返るな!立ち止まるな!前だけを見て走り抜け!」
困難や非情にあっても人生を自分の手で切りひらいていく。
そういう強さ、在り方にどうしようもないほど憧れます。
ずいぶん前に放送された「100de名著モモの回」。
そこで語られた臨床心理学者である河合俊雄先生の言葉は、まさに「読書は鏡」を裏付けてくれます。
何を感じたか
どのシーンが響いたか
だれに心魅かれたか
それらは全部、作品が教えてくれる「今の自分」なのですね。
構想から8年。何度も何度も書き直したというエピソードそのままのエネルギーを受け取れただろうか。
今はただ、この物語を生み出してくれた作者に感謝とリスペクトを捧げたいと思います。
続きが読みたいけれど、レーエンデから帰ってこれなくなりそうなので、もう少しこの余韻を楽しんでからにしようかな(笑)
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