~読むアロマ~『ピエタ』大島真寿美
物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。
「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたものです。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。
新旧、ジャンルを問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして作った香りのご紹介です。
この作品との出会いは5、6年前、なんの予備知識もなく図書館で目があったのがきっかけ。
装丁の雰囲気と「女性たちの交流と絆」という紹介文に魅かれたのだと思います。
結果、大正解!
ヴェネツィアの街に自分自身も紛れ込んだかのような、音色と風景に包まれた幸せな読書時間を過ごせました。
音楽の存在
18世紀ヴェネツィア、『四季』の作曲家ヴィヴァルディ。彼が音楽を教えた孤児院「ピエタ慈善院」が舞台。
一流の音楽家からうまれる音楽が、捨て子だった彼女たちの母であり神であり、愛や喜びのすべてを与えたという。
その音色を聞けば演奏家や作曲家の心がうつし鏡のように分かるというのは、香りも色もみな同じだなあと思いました。
そして思い出したのが、脳より先に身体が知っているというお話。
「緊張してる、と認識する前に筋肉がこわばっている」
「興味がある、と意識する前に身体が前のめりになる」
脳がすべての司令塔と思われがちですが、実は身体を通して集めれらた情報を脳が分析し、意識として認識する。「実は脳より身体が先なのです」と脳科学者の方が話していました。
だから、心地いいものに囲まれてると、おのずと幸せ感度がグンとあがるというわけなんですね。
好きなインテリア(視覚)、手触りのいい服(触覚)、お気に入りの香り(嗅覚)、上がる曲(聴覚)etc
身体が「ああ、好きだなあ、いいな~」と感じてる情報が脳に伝わり「わたしOK!」となると。
最高の音楽に包まれたピエタは、「捨て子を育む音楽の揺りかご」
そこで育った子供たちは「自分を活かす」というテーマを与えられます。
自分を活かすということ
自分を活かすということ。
与えられた才能に磨きをかけ、役割を自覚し、世に還元するということ。
ピエタには様々な境遇の女性たちが登場しますが、この「自分を活かす」という点で人生が大きくかわっている気がしました。
捨て子でも、音楽や薬草にたいする知識の才で自分の人生を作った人。
貴族でも、自分を活かす場が見いだせず胸の底に苦しみを抱えてる人。
時代や社会、その大きな仕組みのなかでみんなそれぞれの人生を精一杯生きている。
よりよく生きるとは、自分を活かすということ。
自分を活かすことは与えること。
『愛するということ』(エーリッヒ・フロム著)とともに、自分の人生の羅針盤になる言葉との出会いがありました。
読むアロマ『ピエタ』ブレンド
作品中には「ヴィバルディ先生のハーブウォーター」や、「アントニオの弾くバイオリンの景色が見えた」というクラウディアとアントニオ(ヴィヴァルディ)の出会いのシーンなど香りにしてみたい描写がたくさん!
そのなかで、エミーリア、ヴェロニカ、クラウディア、3人の女性たちが絆を深めた“特別な夜”を香りで表現してみました。
・ベルガモット
・ジュニパーベリー
・ゼラニウム
・バジルスイート
・ローズオットー
・シダーウッド
・ベンゾイン
ベルガモットはイタリア原産の果実。太陽の陽を集めた光のぬくもり。キーワードは解放。
お酒のジンの香りづけとして有名なジュニパーベリーは、古くからハーブ療法に使われた植物。心身の浄化を助ける。アントニオのハーブウォーターのレシピにも入っていたかも・・・??3人をつなげた彼の気配をそっとしのばせて。
ゼラニウムはバランスとハーモニーの精油。調和から生まれる安らぎと美しさをもたらす。
感覚を研ぎ澄まし、リラックスしながら集中を促すのはバジルスイート。この特別な夜を作るもの。
クラウディアの部屋にかすかに香るローズオットー。女性性と高貴さのシンボル。
シダーウッドは古く長い歴史と樹齢1000年をこえる時間を持つ針葉樹。虫よけに本の保存や本棚にも使われ、クラウディアの書斎のような、秘密めいた雰囲気を彷彿とさせるもの。
そしてベンゾイン。別名安息香(あんそくこう)は、バニラに似た風邪シロップのような甘く重い香り。子供のころに感じた安心感と深い呼吸で緊張をほぐす。
奇跡のめぐりあわせで生まれた濃密な時間。その香りは、3人の女性たちのように複雑さと凛とした佇まいを思わせる、そんな香りになりました。
#読むアロマ #アロマ書房 #読書感想 #大島真寿美 #ピエタ #本と香り
#言葉と香り