「本と香りをめぐる対談集」Vol.6「堕落論」~文学アロマフェア~
2021/12/6(月)~12(日)文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER
BOOKSHOP TRAVELLERは、約100人のひと箱店主たちが棚を借りてつくる下北沢の本屋。そこに集う個性豊かなひと箱店主たちと、“言葉×香りのアロマセラピー「読むアロマ」”のアロマ書房のコラボレーション企画のレポートnote「本と香りをめぐる対談集」を連載していきます。第六回目は「nowhere」の玉澤香月さんです。
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ひと箱店主:nowher 玉澤香月
【プロフィール】
お花を飾るように日常に本を取り入れたら素敵だなという気持ちから、オープンした本屋です。いつもの日常を少し豊かにしてくれたり、どこにもぶつけられない気持ちに寄り添ってくれる本を中心に選書しています。nowhereという名前には「どこでもない場所=どこへでも行ける」という想いを込めました。
【選書した本】
堕落論(坂口安吾、KADOKAWA)
【作品概要】
堕ちること以外の中に、人間を救う便利な近道はない」。第二次大戦直後の混迷した社会に、かつての倫理を否定し、新たな考え方を示した『堕落論』。安吾を時代の寵児に押し上げ、時を超えて語り継がれる名作。
「本と香りをめぐる対談集」Vol.6
アロマ書房:こんにちは。今回、「大切な誰かに贈る1冊」ということで『堕落論』を選ばれましたが、選書の理由を教えてください。
nowhere 玉澤香月(以下、玉澤):社会に生きづらさを感じている同年代20代〜30代の方々へ。いろいろと息苦しい世の中だからです。特に私はSNSで強い主張を見ると、正論でも疲れてしまうときがあります。こうでなければいけないと、主語を大きくした押し付けのような主張は繊細な人にとって、余計に息苦しくなるんじゃないかなと思いました。大学時代、社会学を専攻していたのですが、入門の授業でこの本に出会った時に少し気持ちが楽になったからという理由もあります。
アロマ書房:なるほど~。選書の理由はそいう意味だったのですね。もう少しお聞かせください。「気持ちが楽になった」の「楽になった」は、安心、楽観など、どんな風に楽になったのでしょう?
玉澤:うーん、楽観ですかね。今までずっと何かに追われていたというか、こうでなければいけないという自分に縛られていたので、そこからの解放感と言ったらいいのでしょうか。生真面目な性格だったので、(今もですが)人間の本質は堕落で、堕落しろって説いている人がいることへの驚きや新鮮さもありました。そこであらためて自分を縛っていたのは自分であって、堕ちるほどに自由になっていく、解放されていくという新たな視点が追加された感じです。
安心とはまた違うんですかね、抽象的ですみません!たぶん楽観が近いかもです!!
アロマ書房:ありがとうございます!「解放」は、大切なキーワードですね。言語化するのがむずかしい質問にお答えいただいてありがとうございました。
では次に、香りを作る参考にさせていただきたいのですが、作品の世界観を色に例えるなら何色でしょうか?
玉澤:チャコールグレー
アロマ書房:作品の空気感を表すとしたらどんな言葉になるでしょう?
※ 選択方式でお答えしていただいています
玉澤:軽い、重い、シャープ、内向的
アロマ書房:最後にひと言あればお願いいたします!
玉澤:軽くもあるし、重くもあるし読む人によって意見が分かれる文学だと思います。匂いになったらどんな匂いなんだろうとわくわくです。堕落と言うと、あまりいい言葉ではないのかもしれませんが、『堕落論』は「〜でなければいけない」という自分の固定観念から解放してくれた自由の書のような存在です。香りもそんなふうに内向的だけど解放的という相反する組み合わせでカオスな感じになるのかなと勝手に想像しています。笑
アロマ書房:玉澤さんがこの作品から感じることは、今こそ、とても大事なテーマかもしれません。「カオスな香り」、私もどんな風になるか楽しみです。どうもありがとうございました!
以上のお話から、わたしが作った『堕落論』の香りがこちらです。
『堕落論』ブレンドについて
【ブレンドレシピ】
レモン ユーカリラディアタ バジル ローズオットー
ゼラニウム クラリセージ ベチバー
「思い込みを手放す」ことで、「自分自身からの解放」をテーマに香りを作りました。香りのテイストは、作品の空気感から「軽い、重い、シャープ、内向的」。
ブレンドした香りをひとつずつ解説していきます。
レモンは、気持ちを明るく、クリアに。ハートを開き自分への信頼を取りもどす。
呼吸器系をサポートし、息苦しさからの解放、スペースをひろげてくれるユーカリラディア。自由な表現をうむ。
バジル。活性化と落ち着き、覚醒した瞑想。カオスを象徴するもの。
自分のなかのバランスと調和をはかるゼラニウム。完璧主義を手放し感じる感覚をとりもどす。
明晰さ、インスピレーションを導くクラリセージ。「観る」ことを思い出す。
ローズオットーは、「許し」、自分に許可を与えることを助ける。女性のライフステージごとに支えてくれる特別な精油。
そしてベチバー。軸をまんなかにし、大地とつながる。足元をしっかりと固め、大地の息吹をいただく。
活性と鎮静、重さと軽さ。相反するものが混然と混ざり、ひとつの世界をかたどる・・・まさにカオスのような、そんなブレンドになりました。
堕落論の香りの感想
アロマ書房:完成した香りを嗅いでみていかがでしたか?
玉澤:柑橘系の香りがふわっと香ったあとに少し渋い香りが漂ってきて、これは安吾の書斎っぽいぞ!という感覚になりました。笑
他人から見たら整頓されていないかもしれないけれど、自分にとっては好きなものに囲まれている自由な空間というイメージです。
現代では削ぎ落とすことが丁寧な暮らしとか流行りのものに繋がるのかもしれませんが、安吾が説く堕落論のようにそういった観念に縛られず、自由に暮らす生活にぴったりな香りだと思います。イメージ通りでうれしいです!ありがとうございました!
アロマ書房:うわー、よかったです!物語から香りを創り、その香りからまたイメージがひろがっていることが、本当にうれしいです。ありがとうございました!
みなさまもぜひ、「安吾の書斎」の香りをお試しください。
ご来店お待ちしております!
「文学アロマフェア~大切な誰かに贈る1冊の香り~@BOOKSHOPTRAVELLER」開催詳細
開催期間:12月6日(月)~12月12日(日)
会場:BOOKSHOP TRAVELLER(〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−11北沢ビル3F)
営業時間:12時~19時
定休日:水・木
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