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一輪挿しの苦悩

先日、一輪挿しを買った。

私は花が好きで、以前から花を眺めながら暮らしたいと思っていた。季節ごとに好きな花を飾れば、毎日テンションが上がること間違いなしである。仕事へもルンルンで行けるであろう。花のある暮らしにずっと憧れていた。

しかし、現在賃貸マンションに住んでおり庭は無く、かといって家に飾るために花束を定期的に買うのはお金が掛かりすぎる。なんとか、お金を抑えながら花を生活に入れることはできないか、悩んでいた。

そんな時に、ショッピングモールで一輪挿しを見つけた。「これだ!」と思った。このサイズであれば、花屋さんで花を一輪だけ買って楽しめる。お金もかからず、手入れも楽である。

一輪挿しというアイデアは得たものの、そこで見かけた一輪挿しは自分の好みでは無かったため、こだわりの一輪挿しを探しに行く旅が始まった。

まずは梅田のショッピングモールを探した。
大阪人は、梅田にないものは無いと思っている。

梅田にはオシャレな花瓶がたくさん売っていた。最近の流行は濃い色のガラス製の花瓶のようで、この手の花瓶が多かった。しかし私が欲しいのは、流行にそぐわず、陶器でできた「和」の一輪挿しである。梅田では見つからなかった。梅田で見つからないものがあるとは。

お店を何軒か見ているとわかったことがある。花瓶は、食器屋さんか花屋さんに売っているが、花瓶コーナーはとてつもなく小さいことである。一輪挿しは需要が無いのか、ほとんど売っていない(みんな、一輪挿し欲しくないの?)。どうやら踏み込んではいけない、果てしない旅が始まったようであった。

次に、難波へ行った。

難波には道具屋筋という、歩くところがないほど床や壁に食器が敷き詰められた、食器の密林のような場所がある。ここなら一輪挿しもたくさんあり、好みのものが見つかるだろうと思い、行ってみた。

結果、一輪挿しは一つもなかった。食器は目が眩むほどあるのに、花瓶は大きいものが少しあるだけで、一輪挿しはゼロであった。さすが天下の台所である。大阪人の食に対する執念を甘く見ていた。

そして、京都の東山へ行った。
もうヘトヘトである。

京都の東山には、茶わん坂という陶器屋さんがたくさんある通りがある。「和」の一輪挿しを探している以上、ここになければ諦める覚悟であった。

観光地のど真ん中なので、人混みが行く手を阻んできたが、私は目にも止まらぬスピードですり抜けていく。ほぼ競歩である。

そして、ついにイメージ通り「和」の一輪挿しを見つけた。さすがは京都。

「和」の一輪挿しはいくつかあったが、最終的に、グレーのものと、ベージュに淡い青色の模様のついた一輪挿しで迷った。前者は赤や薄い色の花、後者は青や紫の花が合いそうである。大いに悩んだが、好きな花がリンドウ、クレマチスのような青や紫が多かったので、後者を買った。


さて、ここで一件落着とはいかない。
買ってから気付いたが、一輪挿しは難しいのだ。

花束の場合は、様々な色の花を組み合わせて花だけでバランスを取ることができる。包装紙については大切ではあるが、貰い手は最終的に外して花瓶に活けるので、短い命である。

一方で一輪挿しの場合は、花が一種類なので、入れ物の色や形が与える影響が大きい。花と入れ物のそれぞれが素敵でも、両者が合う合わないで印象が変わってくる。一輪挿しを買うのにも散々迷ったのに、初めて挿す花を何にするか、ここでも頭を抱えた。

最終的に、色味が合いそうな紫色のアストランティアを挿した。ベージュと濃い紫がちょうど良いバランスである。ほっと一安心。私が求めていた生活はこれである。

一輪挿しに関する苦悩に翻弄された本日だったが、大満足の結果となった。


(一輪挿しの花がクルンって後ろを向いてしまうんですけど。どなたか花がずっとこっちを向いていてくれる、よい方法をご存知でしょうか。)

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