小説・成熟までの呟き 38歳・1
題名:「38歳・1」
2028年春、美穂達の農園に、美穂が明能大学農学部農業経済学科の学生だった頃に所属していた国際農業研究室の人々が、調査実習で訪れた。恩師の石岡先生は美穂が学生だった頃は40代だったが、もう50代後半になっていた。美穂が石岡先生と会うのは大学を卒業して以来なので、15年ぶりであった。しかしなぜ海外の農業に関しての研究を行う所が大尾島で調査を行うのかというと、世界経済はつながっていて小さな島にも少なからず影響があるためだという。更に島のオリーブは海外でも知名度が高いことにも興味を持ったという。もちろん、卒業生が農園を営んでいるというのも理由である。オリーブは花が咲く時季で、学生達は興味を持って見ていた。美穂と康太は、自分たちの営みについてなんとか精一杯説明した。学生達は真剣に聞いていた。かつてはオリーブ栽培が実験的に行われたが、量産に成功したのは大尾島くらいなためか、貴重な存在になっていることも関係しているのかもしれない。農園を出た後は、大尾島を周った。地中海式気候ということもあり、それを連想するような風車がある。調査に訪れた学生は「大尾島はオリーブという珍しくなっている農産物を第一次産業の特産品として売り出している。そしてオリーブオイルやオリーブの煮ものという第二次産業、オリーブの主要な産地ならではの風景にしているという第三次産業がしっかりと噛み合ってる。」というようにまとめた。美穂自身も、自分の取り組みを他人に説明することは自身を振り返る機会になった。