小説・成熟までの呟き 26歳・1

題名:「26歳・1」
 2016年春に、人生での転機が訪れる。美穂は学生の頃に興味を持っていた「生産の現場に携わりたい」という思いが強くなっていた。都心で3年間OLをしていたが、「今後の人生を考えると、ずっと自力で生産を続けていけるような取り組みをしたい」と考えるようになったのである。そんなとき、農業に関する研修制度を知る。取り扱う作物がそれまで馴染みの無かった、希少性の高いオリーブに携われることと、人生上無かった島暮らしに興味を持ったのである。3月で、形食を退職。これを機に、それまでおとなしくてどちらかといえばコンサバ系の見た目だったのだが、活発な性格に見せたくて、肩まであった髪を顎あたりまでバッサリと切る。髪は横に流れてセンター分けでショートボブのような髪型となる。「もう女の子というように思われたくない」という気持ちもあったのだろう。「髪が長いと鬱陶しい」という思いもあった。髪を切ると、気持ちが軽くなり一層前向きになった。そして、自由な生き方を求めていくようになる。割とサバサバとした性格が、活かされるようになった。そして、4月に大尾島へ移住した。美穂の出身地である山浜市とは対岸に位置するが、山浜市とは違う県である。大尾島醤油株式会社の下で、研修に入る。オリーブには触れたことはなかったが、春から秋にかけては収穫に向けての生育、冬には開拓や苗植えに取り組むようになっていった。5月10日、美穂は26歳になった。これからの人生にワクワクしていた時期である。

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