小説・成熟までの呟き 48歳・1
題名:「48歳・1」
2038年5月10日、美穂は48歳になった。6月に、毅とひとみに待望の第一子が誕生した。毅とひとみは、美穂と康太が営む農園で出会った。4年前に同棲を始めた。その頃、2人はまとまった部分を任されるようになり、農園内では独立する状態になっていた。そして、2年前に結婚した。育ってきた環境は違った2人だったが、オリーブを育てるという目標は共通していた。美穂にとっては、自分の子ではないが「なんて可愛いんだろう。」と思い、母性本能を持った。1つ1つの動きが新鮮で、美穂の心は動いた。その頃、美穂は50歳の康太とよく夜に酒を飲む習慣があった。美穂は、「お酒って、昔は多くの人とワイワイ飲むものだった。あの頃はうるさかったなあ。私は何とかついていけたんだけど、そういうのが苦手な人もいたなあ。私はそのことに気づかなかった。この前、その人から手紙が届いたんだけど、今は自分のペースで楽しく暮らしているみたい。なんか少し安心したなあ。」と言った。すると康太は、「俺はこうやって2人で静かにお酒を飲めることが楽しみだよ。美穂は、俺にとってかけがえのない存在だから。そんな人と2人きりでいるこの時間が好きでたまらない。」と言った。美穂は少し照れたが、2人の酒は進んだ。