小説・成熟までの呟き 39歳・1
題名:「39歳・1」
2029年夏、美穂は39歳になっていた。7月頃、出身地である山浜市に桃狩りをしに行った。山浜市は桃の名産地で、珍しさから毎年多くの人々が大型バスで訪れる。山浜駅からバスに乗り、北へ向かった。目的地の観光農園は峠のあたりにある。到着すると、見晴らしが良かった。受付で従業員の人に案内された。その人は、「こちらでは自然環境に配慮して育てています。できる限り農薬を使わないようにしています。」と説明した。袋掛けされている桃が多くあった。どの桃を狩るか決めて、触れてみる。横に回すと、袋の中から桃の実が出てきた。繊細な要素がある実で、近くで食べてみる。瑞々しさによる心地よさを感じた。周りが暑い中で、桃の実は涼しさを与えた。カフェでは、桃の実から作ったスムージーが販売されていた。引き込むような冷たさを感じた。美穂は、「私が生まれ育った山浜市は桃の生産が盛んで、春には花が一面に多くあるんだ。いつか自分の家族ができたら、桃狩りに連れていきたいって思っていたので今日は良かった。」と言った。康太は、「桃ってこんなに美味しかったんだ!」と嬉しそうに言った。日奈子と健も喜んでいた。そして、他の農産物とはいえ、「自分達ももっといいオリーブを育てたい!」というモチベーションにつながったのである。