ヨーガスートラ第1章(三昧)ノート その16
◇アビヤーサ(修習)
では、ヨーガ実践の主軸となる”二つの実践”を具体的にみていきましょう。
<Ⅰ-12>
アビヤーサヴァイラーギャーヴィヤーン タンニローダハ
「修習(アビヤーサ)と離欲(ヴァイラーギャ)によって、それら(チッタの働き)は止滅される」
<Ⅰ-13>
タトラ スティタウ ヤトノービヤーサハ
「アビヤーサとは、チッタの働きの静止をもたらそうとする努力である」
<Ⅰ-14>
サ トゥ ディーガカーラ ナイランタリヤ サトカーラ アーダラーアーセーヴィトー ドリダブーミヒ
「それは長期にわたり、不断の努力によって行なわれるならば、しっかりと根付いたものとなる」
<Ⅰ-15>
ドリシュターヌシュラヴィカ ヴィサヤヴィトリシュナシャ ヴァシカーラサムニャー ヴァイラーギャム
「ヴァイラーギャとは、見たり、聞いたりした対象のすべてに対して無欲になった人が抱く、欲望を克服した意識のことである」
1つめのキーワードは”アビヤーサ”
英語では”プラクティス”ですが、日本語では”練習”よりも”修習”という言葉がぴったりきます。
これは同じ”しぐさ”をなんべんも繰り返してそれに”慣れる”ことの意味。
どんな物事でもちゃんと身につけるためには”時間”と”繰り返し”が大切です。
3日坊主って言葉。
「飽きっぽい」とか「努力を持続できない」って意味だけど、この3という数字。結構意味があります。
例えば石の上にも3年。
あと。3年目の浮気とか。
3日とか3週間とか3ヶ月とか3年。
これって努力によって何かを定着させるための単位なのです。
だからね。
3の数字まではがんばって乗り越えたほうがいい。
もし2年と11ヶ月で彼に浮気させちゃったら、この先もずっと浮気し続けることでしょう。
ちなみにハタヨーガの伝統では、師匠の下で他の全てを投げ打ってでも修行に没頭するための期間。
これは12年だそうです。
3の倍数ですね。
何かを自分自身に根付かせるためには”アビヤーサ”。。長期に渡って不断の努力をする必要があります。そしてこの言葉をヨーガスートラの文脈で用いた場合、意味合いがぐっと限定されます。
”アビヤーサ”とは「チッタの働きの静止をもたらそうとする努力」。
浮気をさせないための努力とか、満足を得るための努力とか、安定した生活を得るための努力ではなく”チッタの働きの静止をもたらそうとする努力”。
これだけが、スートラ上での”アビヤーサ”となります。
<Ⅰ-15>
ドリシュターヌシュラヴィカ ヴィサヤヴィトリシュナシャ ヴァシカーラサムニャー ヴァイラーギャム
「ヴァイラーギャとは、見たり、聞いたりした対象のすべてに対して無欲になった人が抱く、欲望を克服した意識のことである」
2つめのキーワードは”ヴァイラーギャ”です。
英語では”デタッチメント”日本語では”離欲”となります。
あんまりなじみのない言葉ですね。
僕らがよく知ってる似たような言葉に”禁欲”があります。
でも”離欲”と”禁欲”。
実は意味が大きく違います。
禁欲は根性の世界。
とにかくガマン。
歯を食いしばって頑張っちゃう。
でも欲望を抑圧すれば鬱屈したエネルギーが生まれます。
これはストレスとして心身に悪さをするため、僕らは無意識に安全弁を探してガス抜きさせます。
どこかへ捌け口を見つけるんですね。
我慢強い人ほど過激になる傾向があるみたいです。
ちなみにヒットラーってすごい禁欲主義者だったらしい。
中世のキリスト教も性的なことをすごく抑圧していました。
その裏側で何がフィーバーしていたかというと男色に異端審問。魔女裁判。
禁欲をすると当然抑圧のエネルギーが強まるから、マイナスに働いた場合には回りの皆様に迷惑をかけまくるのですね。
もしも奥さんのダイエット宣言を聞いたなら、賢い旦那さんは残業を増やします。
無理やりにでも出張を入れます。
「ただいまーっ ご飯何ー?」って定時に家に戻ってくる旦那さんは、危機管理能力に欠けてるから出世できないタイプ。
またはあえてガス抜きのイケニエを志願してくれる聖者のような人かもしれません。
良い人みつけましたね。
この抑圧のエネルギーはココロに印象を留め続ける力もあります。
カロリーはダメよ。カロリーはダメよ。カロリーはダメよ。
セックスはいかん。セックスはいかん。せっくすはイカン。
ガマンしている間、ずーっとそのイメージがココロに浮かんでいる。
潜在意識のレベルにまで抑圧した対象が深〜く刻まれてしまう場合もある。
すると、それはあらゆる決断の基準にまで影響を及ぼします。
それが一生のテーマにもなったりします。
精神分析の大天才フロイトさん。最終的な結論は全部ダンコンに持っていきました。抑圧したものほど人生を左右する大モンダイになっちゃうのです。
”禁欲”は失敗しやすいし、一見成功したように見えても”チッタ”にいびつな傾向を形成してしまう可能性が大きいのです。
チャップリン、ピカソ、カサルスなど偉大な芸術家には精力が強い人が目立ちます。これはエネルギーを抑圧せずに昇華できたというとっても羨ましい例。
じゃあ”離欲”って”禁欲”とどう違うんだろう?
が次回のテーマです。
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