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『テンシンシエン!』第31話

◆「アンモクノルール?」

 帰宅してすぐにPCを立上げ、トマト運輸、明治電工、後田建設、山崎重工からの質問に対して、返信メールを作成した。いずれの回答も、現在の年収(前職の年収)は1,900万円、希望年収は800万円、これ以下なら入社しないという最低年収は720万円として、支援VIPの”中舘博”宛てに返信した。改めて見てみるとずいぶんと希望を下げたものだ・・・この判断が正しいのかどうかは分からないが、迷ったときに相談できる人がいるのは、とにもかくにもありがたいと感じた。山泉さんには本当に感謝だ。

 夕食の支度でもしようかと、PCから目を離し少しボーッとしていたら、見知らぬアドレスからのメールを2件受信していた。

「ん?・・・おっ!」
 件名で分かる。2件ともスカウトメール。1件は、”エリートコネクション”というスカウト会社の黒澤健司という人からか・・・。スカウト希望の会社は・・・”NEKST”・・・か・・・。
 この会社は比較的よく知っている会社だが、求人の内容が私のイメージとは少し違う。以前はシステムエンジニアを企業に派遣し、インサイドでシステム開発を請け負う、いわゆるSESだったはずだが、今回の案件は、新事業創造部門のハイスキルITエンジニア募集とある。想定年収は1,000万円以上とまぁまぁだが、仕事の内容が全くもって不明確である。まぁこれは面接の際に確認したら良いだろう。すぐにでもカジュアル面談に応じるとある。さっそく面談希望のメールを返信した。

 もう1件は・・・人材派遣でとても有名な”パーソナ”という会社、ここの人材紹介事業本部という部署の中田小介という人からだ。スカウト企業もパーソナのグループ企業で”パーソナプロセス&テクノロジー”という会社だ。求人内容はメディカル領域のDXサービスソリューションコンサル・・・??具体的には何だ?まぁ年収は1,400万円以上と悪くないから、これも一度話を聞いてみるか・・・とりあえず面談希望のメールを送った。

 経歴書とキャリアシートを少し修正しただけで、これほどの効果があるとは・・・正直なところまだ驚いている。実際、書いてある内容は修正前後で、さほど差はなく、向け先に合わせて記載する順番を変えたり、内容に少しメリハリをつけただけなのだが・・・こんな些細な工夫によって、書類選考の通過率がこれほど変わるとは思わなかった。


 ほどなくして先ほどの2社から、メールの返信が来た。双方ともに面談の候補日時がいくつか提案されている。まぁさして何か用事がある訳でもないので、いつでも良いのだが、Davisの面談を避けて、それぞれできるだけ早い日時を希望した。結果、NEKSTのカジュアル面談は、エリートコネクション黒澤さん、NEKST採用担当とのウェブ面談。日時は5月26日水曜日の10時から。パーソナも同様に三者によるウェブ面談で5月27日13時からで決定した。それぞれ面談日が近づいたら面談用のアドレスを送るとも連絡があった。来週は面談三連ちゃんか・・・忙しくなる。

 就職活動をするようになってから気がついたのだが、昨今の人々の行動は、まるでなにか暗黙のルールがあるかようにその言動、例えばメールの内容や行動が一致している。このことには、なにか得体のしれない恐怖を感じるものの、きっと私自身も、そのシステムの一環にすでに取り込まれていて、知らず知らずのうちに同じ行動をとっているのだろう。


■第32話へつづく


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