『テンシンシエン!』第26話
◆「レスポンス?」
各書類の修正から数日経った頃、”支援VIP”から応募していたいくつかの企業からぱらぱらと反応があった。トマト運輸、明治電工、後田建設、山崎重工の4社から、エージェントの中舘を通じ、同じような内容の質問がメールで届いていた。
とりあえず、書類の修正は効果があったようで、私に対しなんらかの興味を示してくれる企業が出てきた。
トマト運輸は現有インフラとデジタルを融合した新事業開発、明治電工は新素材開発用のMI(Materials Informatics)開発、後田建設は新設した技術研究所「ICI総合センター ICIラボ」のデジタルファシリテーター、山崎重工はドローン開発、特にドローン運用の新システムの開発。いずれもとても興味深いもので、私のエンジニアとしてのキャリアを十分に生かすことができる仕事。
いつも届く無機質な不合格通知のメールに比べると、どこか人間味のあるメール。どうやらこの”中舘博”という男は実在するようだ。
しかし、どうしたものか・・・
支援VIPでの希望年収は800万円以上と登録してあるが、企業からの求人票には上限は890万円。ここは800万円と返すべきか、890万円と返すべきか・・・返信期限は24日、月曜日の10時か・・・明治電工も同じく24日の月曜日だが時間は14時、後田建設は26日、水曜日の11時、山崎重工は27日の木曜日10時、いずれも来週か・・・
ぼんやりとOutlookのカレンダーに目を落とす。
今週末の金曜日は、2週間に一度の就職支援センターでのカウンセリングの日か・・・いつものようにただ雑談をするのではなく、たまには山泉さんにまともな相談をしてみよう。それに応募した企業からレスポンスがあったことも報告したいし・・・そう思いながらもう一つの就職支援サイト”キャリフロ”を開くと、ポップアップでメッセージが表示された。
沢村健さんに1件のメッセージが届いています。
Davisという外資系転職支援会社からのスカウトメールだった。キャリフロでは、変なヘッドハンターに絡まれる以外、今までまともな反応は全く無かった訳だが、書類を修正した途端にスカウトメールが届くなんて・・・ここまで効果があるものなのかと少し笑ってしまった。
私自身は何も変わっていないのにおかしな話だ。
まぁでも、これも山泉さんに自慢ができるな・・・