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『テンシンシエン!』第44話

◆「ナイテイゲット?」

 「なんだか、バタバタして、た・・大変申し訳ございませんでした。そ、それでは、面接を始めさせていただきます。えっと沢村健さんですね・・・事前に経歴書を読まさせていただきましたので、自己紹介はスキップしてと・・・えっと・・・希望理由?そっか、では当社を希望された理由・・・スカウトしたのに”希望された”はおかしいか・・・なんだ?えっと・・・あっ、当社に興味を持っていただけた理由をお聞かせ願いますか?」
 スカウトメールを受け取って、面接を受けているにもかかわらず、”当社を希望された理由は?”と質問してくるおバカな面接官が多い中、この木崎と言う男、頼りなさそうだが、意外とやり手なのかも・・・

「はい・・・まず御社についてですが、私自身がもともとシステム系のエンジニアでしたので、御社の社名だけでなく業務内容含めてよく存じておりました。ですので、私の中では御社に対しては、SESがメインの会社と言うイメージでしたが、この度、新規事業開発へ乗り出すということをお聞きして、私自身の経歴が生かせるというか・・・経歴書にも記載させていただきましたが、新規事業企画だけでなく、新部門の立ち上げや、その運営にかかる仕組み作りなどの経験が生かせると思いました。あと・・・今までは比較的、予め制約条件の存在する・・・例えばマーケットが決まっていたり、対象の技術などが決まっている事業企画が多かったのですが、今回のようにほぼゼロベースで・・・しかも転職が伴うということを考えてみますと、私にとって、まさに右も左も分からない環境での業務となります。それをリスクと考えればリスクとなるのですが、私にとってこれは”挑戦”であり、そんな環境で、自分自身がどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか試してみたい・・・少し不謹慎なのかもしれませんが・・・そんな気持ちです。」
「なるほど・・・た、頼もしいで、です。沢村さんのようなご経歴があったうえでの、そのお言葉ですと、迫力すら感じますし、私も少し気が楽に、ちがうか・・・気持ちが軽く、そう軽くなります。じ、実際に当社で試してみたい企画・・・お、お話しできる範囲で良いので、なにかございますか?」
「えぇ・・・今、少し考えているのは、これから想定される労働力の不足・・・これに対しての解決案になるかもしれないと考えているものです。昨今、様々な”E-X”が提唱されていますが、私が今考えているのは、まさに”E-WORKING”ともいえるプラットフォームを構想しています・・・


 思いのほか、この木崎と言う男との面談は盛り上がった。気がつけば2時間近く新規事業の構造で議論をしていた。エリートコネクションの黒澤さんは、眠っているのか?と思うほど静かに聞いていた。時折、うんうんと相槌を打つ様が、カメラ越しに見えるので、眠っている訳ではないようだが。


「えっと・・沢村さん、とても楽しい時間が過ごせ・・・ちがうな・・有意義な時間、そうだな、これだな・・・有意義な時間が過ごせました。実は、弊社人事本部の山下から、私がこの人だと思うのであれば、今日、この場所で結論を出しても良いと言われていまして・・・。」
「はい・・・?」
「えっ?ちょっ・・・木崎さん、私聞いていませんよ。えっ?」
「あっ、エ、エリートコネクションさんには、お話ししてなかったのですか・・・そ、それはダメだなぁ、ははは、まぁでも、遅かれ早かれ決めなければならないことなので、ね。き・・決めても良いですよね?」
「まぁ、ダメと言う規則にはなっておりませんので・・・そこはクライアントさんにお任せしておりますが、できれば事前に連絡いただきたかったですけど・・・。」
「はは・・そ、それは申し訳ございませんでした。で、沢村さん、私はあなたのような方を待っていました。ぜひ一緒に働いてください・・・ダメですか?」
「えっと、この場で入社の意思を答えないと?」
「いいえ、とりあえず”二次面接合格”と受け取ってください。後日改めてエリートコネクションより、労働条件の詳細などを、入社の意思確認を含めて連絡差し上げます・・・で良いですね?木崎さんっ!
「は・・はい・・でも、沢村さんには入社いただきたいのは本当で・・・」

「木崎さん、とても光栄なお話です。ただ、正直にお話しさせていただくと、もう一社二次面接を控えていますので、とても勝手な話ですが、少しだけお時間ください。私も本日はとても楽しい時間が過ごせました。ありがとうございました。」
「あ、こちらこそ、あ、ありがとうございました。」
「それでは、NEKSTの二次面接を終了させていただきたいと思います。繰り返しになりますが、後日改めてエリートコネクションより、労働条件の詳細などを、入社の意思確認を含めて連絡差し上げますので、よろしくおねがいいたします。それでは沢村様、本日はありがとうございました。」

よし!内定ゲット!!


■第45話へつづく


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