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『テンシンシエン!』第22話

◆「シツギョウテアテ?」

 朝食を済ませて”すなどけい”を後にした。まだまだ常連というにはおこがましいが、ママとはずいぶんと自然な感じで話ができるようになったと思う。それでもまだ、こちらからの情報提供がほとんどで、ママが、自分のことを自ら語るようなことはなかった。

 10分ほど歩くとハローワークに到着する。今日は直接2階の雇用保険給付課へ向かう。そうすると”認定申告10時30分~10時45分の方はこちらへ書類(資格者証、申告書)を提出ください”と、手書きの張り紙がしてある。そこにハローワークでいただいたクリアファイルに”雇用保険受給資格者証”と”失業認定申告書”を挟んで提出する。あとは担当の方から呼ばれるまで待つだけだ。

 10分ほど待っただろうか。
「沢村健さん!沢村健さん!3番の窓口までどうぞ。」
「はい。はいはい。沢村です。」
 担当の方は、ハローワークでは珍しい若い男性。
「こちらにお掛けください。沢村さんですね?はい、確認できました。それではいくつか質問させていただきますね。えっと、認定を受けようとされるこの期間に、お仕事とかされていませんね?」
「はい。」
「なにかお手伝いなどされて収入があったとかはないですね?」
「はい。」
「それでは・・・こちらに記載されています金額を沢村様の口座へ、3日ほどで振り込まれますのでご確認をお願いいたします。えぇっと、次回は6月8日 火曜日、14時30分から14時45分となりますので、必ずお越しくださいね。それでは本日はご苦労様でした。」
「あっ、こ、こちらこそどうもありがとうございました。」
 お金をもらう手続きをしに来て、お金を払う側がこんな低姿勢で、しかも帰りしなに”ご苦労様”なんて言われるのは、少し変な感じがする。私は来ただけでお金がもらえる。

 記載されている金額は125,550円。認定期間は、待機期間満了日の4月25日、翌日の4月26日から昨日 5月10日までの15日。その15日間の失業手当だから、1日 8,300円ちょっとということか。フルでもらえるのは28日分って山泉さんが言ってたな、そうすると・・・だいたい234,000円ぐらいか。何もしてないのに毎月20万円以上、しかも約1年間ももらえるなんて・・・考え方によっては、これはこれで良いかも・・・なんて少し考えてしまった。
 そう言えば再就職手当だっけ?そんな感じの助成金があるって山泉さん言ってたな。早く就職した人には、そのご褒美みたいな制度を作ってやらないと、これはずるずると無職を続けてしまう・・・「なるほどね。」と、一人で納得。

 おじさんの独り暮らし。特にブランド物が好きな訳でもないし、服装はほぼ100%ユニクロ。お酒は飲めないから飲みに行くこともないし、たばこも吸わない。賭け事、例えばパチンコとか競馬?なんて考えたこともない。PCやスマホで動画を見たりするぐらいで、これと言って趣味らしい趣味もない。まぁ要するにお金を使うところがほとんどないのだ。住まいは駅から徒歩5分と言った好立地だが、築45年の古い1DK。そんな事情もあって家賃は浦和でも破格の5万円台。だから、何か特別な出費でも無ければ、一カ月にかかる費用が10万円を超えることなんて滅多にない。

 はぁ、これではお金が増えてしまうな・・・なにか趣味でも作るか・・・なんてことを考えながらも、昼飯は、すなどけいのカレーライスにするか、海鮮三崎港の回転寿司にするか、アレコレとどうでもよいことに頭を使っていた。


■第23話へつづく


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