『テンシンシエン!』第36話
◆「ツマカラノレンラク?」
明日は、”NEKST”のカジュアル面談、明後日は、”パーソナ”か・・・ずいぶんと忙しくなってきた。このタイミングで浮かれていてはいけない。まだ就職が決まった訳ではないのだ。
ようやく予選を通過しただけのこと。
自分に言い聞かせるようにして心の中でつぶやく。
”テトタト テトテト テトタト、テトタト テトテト テトタト・・・”
突然スマホが鳴る。珍しく妻からの電話。そう言えば、この一か月、ほとんど連絡をしてなかった。
「もしもし、パパだけど。」
「元気?就活うまくいってる?」
「あぁ・・・まぁまぁかな。」
「そんなこと言って、本当は苦労して、泣きそうになってんじゃないの?」
なんか読まれてる・・・
「えっ!そんなことないよ・・・決まってから連絡しようと思ってたけど・・・実は、すでに5社、書類選考通過してるよ。」
「あら、さすがね。で、どんなところ?」
「えっと・・・コンサル系が3社。フューチャーコンサルティングってところと・・・えっと、NEKSTっていうところと・・・あとはパーソナ。」
「フューチャーコンサルティングって知ってるわ。YouTubeとかで広告出してるところでしょ?へぇ・・・すごいね。で、NEKST?ってとこは知らないけど・・・パーソナ?それ知ってるけど、そこって人材派遣会社じゃないの?」
「なんかパーソナでも、グループ会社のパーソナプロセス&テクノロジーって会社。そこでメディカル領域のDXサービスソリューション?のコンサルタントを募集しているみたい。だから人材派遣ではないみたい。」
「ふーん。そうなんだ。でコンサル関係の年収は?」
「うん。年収はかなり良いかな。前と同等かそれ以上になるかも。」
「へぇー、いいね。じゃその中で決めちゃったら?」
「うーん・・・ただねぇ・・・コンサルって・・・なんか競争とか厳しそうだし・・なんか胡散臭い。」
「そうなんだ。で他には?」
「メーカー系で2社。明治電工と山崎重工。」
「どっちも知ってる。大会社じゃん。で年収は?」
また、お金か・・・
「うん。メーカー系は少し低い。どっちも800万円くらい。」
「ふぅーん・・・まぁ、さくらも優ももう働いてるし、以前ほどお金がかかるようなことはないから、実際は、それだけあれな十分だけどね。」
「パパはどっちがイイの?」
「えっ・・・どちらかと言えばメーカー。コンサルはよく話を聞いてからだね。仕事のイメージが・・・ちょっと・・・やったことないからイメージしにくい。」
そうだな・・・メーカーのほうが良い・・・
「そうだね・・・まぁ、どっちでもいいよ。パパの好きなようにしな。」
「うん。そうする。」
「まぁ順調そうだから安心したよ。引き続き頑張りたまえ!」
「うん・・・」
「ほんじゃぁね。」
「うん。ほんじゃ。」
”プツ・・・”
一応心配してたんだな。当たり前か・・・おかげでスッキリした。
この後、少ししてから、妻からラインが来た。
コンサル3社の口コミか・・・リンクを開いてみると、パワハラや、待遇に関する不満が投稿されている。パワハラ関係の投稿が比較的多いが、中には、雇用前の契約条件と雇用後の条件が異なるとか、残業が多すぎるとか・・・以前、聞いたことがある・・・こういった投稿は、何かしらのトラブルを起こして退職に追いやられた人たちが、その腹いせに書いているとか、比較的新しい会社には、この手の話は尽きないとか・・・まぁ、面接でちゃんと聞いてみて、どんな反応をするのか見てみよう。もし本当なら、こんな環境では働きたくはない。
妻の配慮に感謝。