眼科勤務歴10年が考える、老眼との付き合い方
こんにちは。
10月10日は【目の愛護デー】
ということで、
少し遅いですが目に関連した話題をひとつ。
わたしもアラフォーということで、最近手元が見にくいと感じることが増えました。
特に最近ハマっているビーズ刺繍や、夕方など薄暗い場所で感じることが多いです。
正直、ついにきたか…
という気持ち。
でも、実は少し楽しみでもあるんです。
なぜなら、いままで散々合わせてきた微妙なお年頃(40〜50代前後の初期老眼)での眼鏡やコンタクトの見え方を体感できるからです!
若い時に遠近両用のコンタクトを試しても、結局自分で調節してしまいます。
老眼に関しては「理論的に度数を調整していく」という感じで、あとは話を聞きながら合わせるしかなかったんですよね。
そして、「微妙なお年頃」と書いたように、この年代の方々の度数調整は難しい…。
まだ調節力が残っているので体調や時間帯によって近方の見え方に波があること、老眼を受け入れたくない気持ち、いろんな葛藤や試行錯誤のなかで妥協点を見つけていく人が多かったように思います。
そんな経験を経て、ついに自分もその年代になりました。
そこで、この記事では以下について簡単にまとめたいと思います。
(この記事ではわかりやすいように「近視」ベースで話します)
実際の度数調整は眼科や眼鏡店でしっかりと視力を測定しながら行うことになるでしょうが、豆知識として興味ある方やどんなことを考えて度数を調整しているか知りたい方はぜひ読んでみてください。
【老眼とは】
簡単に言えば「調節力の低下」です。
若い頃は、目のなかの「水晶体」というレンズがカメラのオートフォーカスのように自動的にピントを合わせてくれます。
しかし、実は調節力は20代から低下しており、40代頃でついに手元を見るために必要な調節力が足りなくなり、「老眼」として認識されます。
ちなみに、近視の人は眼鏡やコンタクトを外せば手元にピントが合っています。
よく、「近視の人は老眼にならない、なるのが遅い」みたいな話がありますが、これは眼鏡を外せば手元にピントが合っているからです。
視力を矯正し、遠方がよく見える状態にすれば手元は見えにくくなるはずです。
逆を言うと、視力を矯正した状態で手元を見ようと思えば、これだけの調節力が必要になると言うことです。
そして、年齢別のおおよその調節力はこんな感じです。
40代ではまだギリギリ残っていそうな感じですが、「ギリギリ」ということは「すごく頑張っている」ということでもあります。
つまり、「疲れやすい」ということです。
個人的にはここで老眼を否定して無理に頑張るよりも、より健康で快適な生活のために積極的に度数を調整していくことは悪いことではないと考えています。
「必要な時に必要なサポートを」
考えてみれば当たり前のことですよね。
ちなみに、実際に眼鏡やコンタクトを合わせる時には、その人が見たい距離(読書では約30cm、PCでは約75cmなど)や年齢と残っている調節力を考慮し、どれくらい度数を調整すればいいかを考えているわけです。
割り算や足し算や引き算など、
簡単なものですが、実は老眼の度数調整では計算することが多いのが特徴です。
【度数の調整方法】
ここでは実際に眼科で提案していた遠近両用レンズや、度数の調整方法を簡単に説明します。
①遠近両用レンズ
老眼といえば、最初に思いつくのはこれではないでしょうか。
その名のとおり、1つのレンズに「遠方」と「近方」が見えるような2種類の度数が組み込まれています。
そして、遠近両用を使えば遠くも手元も若い頃のようにはっきり見えると思っている方も多いのではないでしょうか。
先にお伝えします。
若い頃のようにどちらも「ハッキリ」「鮮明に」は難しいです。
眼鏡であればレンズの上部と下部で遠方と近方を使い分けないといけないですし、2つの度数の移行部分には多かれ少なかれ歪みが発生します。
コンタクトレンズの場合、視界のクリアさは単焦点の通常レンズよりは劣ります。また、夜間は光がボヤけたり滲んで見える可能性もあります。眼科勤務時によくお伝えしていたのは、「遠方も近方もある程度見える」ということです。
仕事で眼鏡ができない方や料理などの日常生活で見えればいい、という人にはお勧めしますが、長時間近方作業を行う人には不向きです。
では、「遠近両用」は使わなくてもいいのか、というとそれも違います。
実は遠近両用を使いこなすためには「慣れ」が必要なんです。
よくあるのが、60歳以降で初めて遠近両用の眼鏡を作ってみたけれど、慣れなくて諦めるパターン。
上記でもお話ししたように、遠近両用の眼鏡ではレンズの上下で遠近を使い分けないといけないですし、周辺部には多少の歪みが生じます。
これに慣れるには、40代〜50代の比較的若いうちに身体や脳に覚えさせることが重要です。
また、老眼の初期であれば、まだ遠方と近方の度数の差も小さく、比較的小さな違和感で済むため「慣れやすい」ということもあります。
上記のようなデメリットもありますが、
やはり一つのアイテムで遠方も近方も見ることができるのは大きなメリットです。
特に外出時には近方用の眼鏡など余分な荷物も不要になります。
老眼が始まった際には、ぜひ使いこなしたいアイテムの一つです。
②中近両用レンズ
こちらは遠近両用レンズよりも、室内や近方の見え方を重視したレンズです。
主に室内でのオフィスワークやPC作業に向いています。
遠方が少し見えにくくなる分、少し近方が見えやすくなっている、というイメージです。
こちらも遠近両用と同じようなデメリットや「慣れ」の問題もありますが、特に近方の見え方を重視したい人には満足度が高かった印象です。
どちらかと言えば、老眼初期よりも50代以降で下記の方法では対処が難しい人向けです。
ちなみに、運転やゴルフなど遠方重視の方にはおすすめしません。
③度数を弱くする
これはコンタクトレンズをしている方では、割とスタンダードな方法です。
最初にお話ししたように、近視の人はもともと近方に焦点があっています。
それをコンタクトで矯正して遠方が見えるようにしているわけです。
しかし、老眼では「遠方」から「近方」にピントを合わせる(調節する)力が足りない。
それならば、調節する力が少なくていいよう、少し度数を下げてあげればいいのです。
もちろん、度数を下げれば遠方の視力は下がります。
しかし、運転をしない人なら片目で(1.5)の視力がなくても、例えば片目で(1.2)、両目で(1.5)の視力があれば日常生活は問題がないことが多いはずです。
度数を下げた直後は多少見えにくくても、一週間も試してみれば慣れる人が多かったです。
ちなみに、わたしはコンタクトは遠方重視で合わせていますが、家で使うことが多い眼鏡は少し度数を下げて片目で(1.0)程度で合わせています。
家では室内や近方(本やスマホ)を見ることが多いため、疲れにくいですし、見え方も特に不便はありません。
(もしもの時の運転用に遠方重視の眼鏡も持っています)
デメリットとして、
初期の老眼には有効ですが、調節できる度数には限界があります。
その人の生活スタイルにもよりますが、どこかで別の方法への変更が必要です。
④モノビジョン
こちらは上記の③の方法と少し似ています。
近方を見やすくするように度数を弱くするのですが、
ポイントは「片目だけ」という点です。
左右の目で「遠方」と「近方」の度数を分けます。
よくあるのが、効き目を遠方重視、反対眼を近方重視の度数で合わせるやり方です。
ちなみにこの方法を実践していた人のお話では、
近方を見る時には自分のなかで「切り替えている」感覚があるそうです。
(長期的には選ばないけれど、一度経験してみたい方法です)
⑤遠方重視(正視orコンタクト)+近用眼鏡
こちらも結構スタンダードな方法。
コンタクトで矯正している人であれば遠方重視で度数は変更せず、
近くを見る時に近用眼鏡を使用する、という方法です。
いわゆる、「老眼鏡」ですね。
(響きがよくないので眼科では「近用眼鏡」と呼んでいました)
この方法のメリットやデメリットはこんな感じ。
正直、見え方だけでいえばこれが一番おすすめです。
やはり、上記のやり方では1つのレンズに2つの度数を組み込んだり、
片目、もしくは両目の度数を近方重視で調整しています。
そのため、どうしても視界の「クリア」さに影響が出てきます。
一方でこちらのやり方は、
遠方も近方も「両目」でしっかりと焦点を合わせています。
例えば、運転もするし、仕事で細かい検品作業をしたり、家で裁縫をする人にはこの方法がおすすめです。
逆にPCと遠方で視線が行き来したり、歩き回りながら手元の資料を見ることには向いていません。
【自分ならどんな方法を選ぶか】
以上が、よくある老眼での度数の合わせ方です。
どの方法にも一長一短ありますし、
若い頃のようにあれもこれもは厳しくなってくるのが現状です。
実は自動でピントを合わせてくれる(調節してくれる)って
すごく高度で繊細な働きだったわけです。
「失って初めて気付く…」
みたいなやつですね笑
そんなありがたみを感じつつ、老眼の症状が出はじめたいま。
自分ならどういう方法を試すのか?
いまのところ、二通りの方法を考えているので紹介します。
【パターン①】遠方重視のコンタクト+近用眼鏡
上記で説明した、⑤の方法です。
こちらを選んだ理由は、
正直、③に関してはコンタクトを外して裸眼で見た方が見やすいと思いますが。
まだ外出する予定があってコンタクトは外したくない、
というときに使えるような近用眼鏡の購入を考えています。
【パターン②】平日と休日で度数の違うコンタクトを使い分ける
わたしは平日は仕事でPC作業が多く、運転はしません。
一方で休日は買い物など運転をする機会が多いです。
そのため、以下のようなコンタクトの使い分けを考えています。
休日は運転さえしなければ平日と同じコンタクトでもいいですし、外出自体しないならば眼鏡でいいと考えています。
また、いままでも旅行用に時々1dayコンタクトを購入して使い分けていたので、少し度数を調整するだけで手間もあまりありません。
【これ以外の方法について】
遠近などこれ以外の方法は試さないのか?
というと、そういうわけではありません。
40代になる頃には遠近両用(眼鏡もコンタクトも)を試したいし、
見たい距離やシチュエーションがあれば、それに応じて色々試行錯誤したいと考えています。
【まとめ】
以上、眼科勤務歴10年が考える老眼との付き合い方でした。
「老眼」と一括りに呼ばれていますが、
その人の元々の視力や現在使っている眼鏡やコンタクトの度数、見たい距離やシチュエーションによって解決策はさまざまです。
若い頃は視力が悪くても、たいていの場合は眼鏡が一つあれば解決できたはずです。
しかし、老眼では「一つ」で全てを解決するのはなかなか難しいことです。
幸いなことに技術の進歩は凄まじく、同じ遠近両用のレンズでも昔と今ではだいぶ見え方は改善されてきたようではありますが、現状では若い頃の自分の目と同じレベルとはまだ言えません。
なので、これから老眼と付き合っていく方、
すでに付き合いが始まっている方にお伝えしたい。
ある種の妥協と諦めをもって、楽しみながら自分の変化と向き合いましょう!
一つの道具で全てをカバーするのは無理でも、
状況に応じて使い分ければいいだけです。
最近は眼鏡も安いものもあれば、デザイン性が高いものもあり、
複数の所持して使い分けるのも楽しいものです。
誰にでも起こる生理現象ですから、
嫌いすぎずに「受け入れてあげる」というのも一つの方法ではないかと思います。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました😊
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