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本棚:『グロテスク』
山口恵以子さんの『バナナケーキの幸福』の中で、この『グロテスク』がちょこっと出てきて、読みたいと思っていました。さっそく、図書館で探してみると、単行本はそれなりの厚さで、駅のホームや電車の中で読む身としては、「これはちょっと重そうだ…」と諦め、文庫本があった時に借りようと先延ばししていました。途中、忘れていた時期もありますが、年末に図書館で文庫本(しかも上下そろった状態!)を見つけ、「今だ!」と、ほくほくしながら借りました。2025年の初読みは、この『グロテスク』です。
本書は、東電OL殺人事件と呼ばれる実際の事件に取材した作品とのことですが、その事件自体を知らず、読み始める前にググりました。事件は97年なので知っていてもよさそうですが、ワイドショーとか見てないし、興味もなかったのでしょう。今だったら、被害者の当時の年齢と近いので、注目しただろうなと思います。
「努力は必ず報われる。結果が出ないのは、努力が足りないから」ということを信じていたのは、いつ頃までだったかな。今は、向き不向きは誰にでもあるし、向いてない人に「頑張ればできるよ」だなんて、なんて残酷なんだろうと思いますが、その価値観の転換をもたらしたのは本だったのかなぁ。
そして、外見のこと。人を見た目で判断してはいけないとは言うけれど、やっぱり見た目で判断することは大いにあるわけで。でも、容姿のことは、とやかく言わないのがマナー。「この人、大丈夫?」っていう見た目でも、他人なら何も言わないでしょうから、近くに注意してくれる人がいない場合はどうしたらいいんだろう…、実際のところ、私ってどう見られているんだろう、と不安になりました。
主人公の「わたし」の名前は出てきません。自分とは違う名前だったら、他人として読めるのかもしれませんが、名無しだけに「自分にもそういうところがあるかも」と思いやすいかもしれません。